内田洋行は、PKSHA Technologyのグループ会社であるアルゴノートと連携し、こども家庭庁が実施する「こどもデータ連携実証事業」に採択された埼玉県戸田市において、AIを用いて不登校を予測するモデルの実証研究を開始した。11月より戸田市内のパイロット校での試行をスタートし、12月より全18校の小中学校へ展開している。
近年、児童虐待、いじめ、不登校、ヤングケアラー等、子供を取り巻く問題が深刻化している。相談窓口等の設置だけでは解決できないケースも多く、また、子供自身がSOSを発信することが難しい実情があることから、プッシュ型支援の実現が喫緊の課題となっている。その一つの解決策として、AIを活用した予兆検知モデルは、プッシュ型の支援の一助になるのではないかと注目されている。
戸田市教育委員会は、GIGAスクール構想以前の早い段階から学習者用端末の導入を進めるなど、学校のICT環境整備に力を入れてきた。また、約100の企業やNPO、大学、研究機関と連携し、プログラミング教育やデジタルシティズンシップ教育の推進、不登校支援、インクルーシブ教育の充実など先進的な教育改革に取り組んでいる。
こどもデータ連携に関しては、デジタル庁「こどもに関する各種データの連携による支援実証事業」に採択されている。学校や教育委員会、そして各地方自治体が部署ごとに保有する教育・保育・福祉・医療などのデータを、個人情報の保護や倫理面での配慮を行いつつ分野横断的に連携し、可視化することで真に支援が必要な子供の発見、プッシュ型の支援を目指した教育総合データベースの整備を進めており、「誰一人取り残されない教育の実現」というビジョンを掲げている。
今回、2023年7月から教育の分野で豊富な実績を持つ内田洋行が連携事業者として参画し、データ分析全体のプロジェクト管理を行い、日本トップクラスのAI開発力を持つPKSHAグループと協力して教育現場の状況を踏まえた精度の高いデータ分析に取り組む。
教育データの分析フェーズでは、近い将来に不登校になりうる可能性を予測してリスクスコアとして表示することを想定している。
実際の予測モデルの構築には、教育の有識者からヒアリングをして意見を取り入れながら校務支援システムに登録されている「出欠・遅刻・早退などの状況」「保健室利用状況」などのデータのほか、「埼玉県学力・学習状況調査(学力調査・質問紙調査)」「学校生活に係るアンケート」「教育相談の利用の有無」「学校健診結果」等のその他のデータを用いる。
このシステムの開発では、PKSHAと連携してAIのアルゴリズムの設計と構築をすすめる。リスクスコアとその根拠となるデータ項目を表示することで、教職員による具体的な支援活動に結びつけていくことを検討している。
戸田市が保持している子供に関する様々なデータを、個人情報保護法令に基づき連携するほか、戸田市が2022年12月に独自に策定した「教育データの利活用に関するガイドライン」を遵守した上で取組み、児童生徒や保護者に対する丁寧な説明を行いながらデータベースを活用するなど、個人の安心を担保できる形に整備した上でデータ活用を行う。
今後、長期的に予測を継続して行う事で、複数年データの利用や、データ項目拡張、日次のアンケートなど鮮度の高いデータの利用などに取り組み、不登校の予兆検知モデルの精度改善を行う。今後、いじめなどのSOSの検知に取り組むことを検討している。
また、今回の実証研究を通して、AIを教育現場の支援に活用することで、教職員が子供たち一人ひとりの見守りを行える環境づくりへ繋げ、全国の自治体が活用できるモデルの実現を目指すという。