ベネッセ教育総合研究所と東京大学社会科学研究所は11月8日、全国の小学4年~高校3年生の計9,182人を対象に実施した「子どものICT利用に関する調査2023」の結果を発表した。
両者は同一の親子モニター(小1〜高3、約21,000組)を対象に、2015年以降9年間にわたり複数の調査を実施し、12学年の親子の意識・行動の変化を明らかにするプロジェクトに取り組んでいる。今回の調査もその一環で、プロジェクトモニターのうち小4〜高3を対象に、ICT機器利用に関する意識や実態をとらえ、より良いICT利用のあり方について考えることを目的に実施した。
調査結果からは、学校におけるICT機器の利用について、約8割の子供が「ICT機器を使う授業は楽しい」と肯定的に捉えている様子や、用途で多いのが「調べ学習」「協働学習」で、よく利用している子供ほどその効果を実感していることなどが明らかになった。また、教員からICT利用に関する指導を受けている子供ほどICT機器利用の効果を強く実感しており、学びを充実させるうえでは教員のかかわりが大切であることもわかった。
「学校では、勉強に使う目的でICT機器をどれくらい使っていますか」という設問に、約3割が「週5日(ほぼ毎日)」、約2割が「週3~4日」と回答している。小4~6生の利用頻度が高く、高校生の利用頻度が低い。
<図1>学校でICT機器を使う頻度(全体/学校段階別)(%)
学校でICT機器を使うことについて、約8割が「ICT機器を使う授業は楽しい」、約6割が「ICT機器を使う授業を増やしてほしい」と回答(とてもそう+まあそう)。その割合には、子供の成績による差がない一方で、利用頻度による差がみられる。
<図2-1>ICT機器の利用に対する意識(全体/学校段階別/成績別)(%)
<図2-2>ICT機器の利用に対する意識(利用頻度別)(%)
利用方法で多いのは「調べ学習」(87.1%)。「考えをまとめて発表」「友だちと考えを共有」などの協働学習も6割を超える。「練習問題を解く」は小学生に多く、「暗記する」は高校生に多いなど、学校段階による使い方の違いもみられる。
<図3>ICT機器の利用方法(全体/学校段階別)(%)
学校でICT機器を使うことの効果をどう感じているか聞いたところ、「学習内容について調べやすい」「学習内容がわかりやすい」「効率的に学習できる」「グループでの学習がしやすい」は7割超が実感。利用頻度が高い子供ほど、ICT機器を使う効果を感じている。
<図4>ICT機器の利用の効果実感(全体/利用頻度別)(%)
学校でICT機器を使うことの課題については、半数以上が「目が疲れる」「インターネットにつながらなくて困ることがある」「ICT機器を壊してしまわないか不安」と回答。「使い方がわからないことがある」「文字の入力が面倒」は、利用頻度が低い子供ほど感じている。
<図5>ICT機器の利用の課題認識(全体/利用頻度別)(%)
「ICT機器の使い方」「情報の集め方・調べ方」「ルールやマナー」といった指導を受けている子供は、効果実感を強く感じる傾向がある。
<図6>教員による指導の影響(全体/教員指導別)
授業中の取り組みで「パソコンやタブレットを使う」比率は、2020年56.9%から21年は81.4%に急増。22年も86.4%とさらに増加。 ※「子どもの生活と学びに関する親子調査」の結果
<参考データ>授業で「パソコンやタブレットを使う」(経年変化・全体/学校段階別)(%)