日本でTOEIC Programを実施・運営する国際ビジネスコミュニケーション協会(IIBC)は、日本の英語学習者の多くが中学・高校の英語教科書で学んだ経験があることから、教科書で身に付く英語力を構成する概念の一つとして語彙に注目し、筑波大学 卯城祐司教授、筑波大学大学院 小室竜也氏に分析協力を依頼した。
本研究では、TOEIC Listening & Reading Test(以下、TOEIC L&R)とTOEIC Bridge Listening & Reading Tests(以下、TOEIC Bridge L&R)で使用されている語彙が、新課程の中高英語教科書や共通テストで使用されている語彙とどの程度対応しているのかなどについて調査した。
<調査目的>
新課程の中高英語教科書で使用されている単語が、TOEIC L&R、TOEIC Bridge L&R、共通テストで出題される単語をどの程度カバーしているかを明らかにする。
TOEIC L&RおよびTOEIC Bridge L&R に特徴的な語彙を明らかにする。
<調査対象>
①2022年度の新学習指導要領に基づく検定教科書(中学4社、高校2社)。高2高3は旧学習指導要領に基づく
②公式TOEIC L&R問題集1~8
③TOEIC Bridge L&R各種公式問題集
④令和3年~5年の共通テスト
以上①~④に掲載されている語彙をデータベース化し、分析に使用
今回の研究により、中高英語教科書で学習する語彙が初中級者向けのTOEIC Bridge L&Rで使用されている語彙の約91%をカバーしていることが判明した。また、同様の基準で、TOEIC L&Rで使用されている語彙においては約71%のカバー率ということも明らかになった。
各学年、学年累積でのカバー率、共通テストとの比較等については報告書に詳細が記されている。また、中高校生が複数の教科書を用いて英語を学習する状況が現実的ではないことを踏まえ、1社のみを対象とした平均値を用いたカバー率も報告書に記載している。
今回の調査により、TOEIC L&R、 TOEIC Bridge L&R、共通テストのいずれの受験においても、教科書に登場する基本語彙の習熟が重要であることが示されました。
「TOEIC」と聞くと、「ビジネスパーソン向けのテスト」というイメージが先行し、ビジネス特有の語彙が多いのではと思う方もいるかもしれません。しかし、今回の調査で頻出する語彙の傾向を見た結果、一般的な会話などで用いられる語彙がTOEIC L&R、 TOEIC Bridge L&Rにも多く含まれていることが明らかになりました。またTOEIC L&R、 TOEIC Bridge L&Rのどちらも多くの連語や定型表現が用いられているテストであるということも判明しました。
以上のことから、TOEIC L&R、 TOEIC Bridge L&Rの受験に向けて学習することは、基本語彙に遭遇する頻度を高められるうえに、日常で使われる定型表現に触れる機会を増やすこともできるため、ビジネス向けのみならず英語力向上に役立つと考えられます。
今回の調査で使用した中高英語教科書は、各教科書の間で共通した語彙を使用しているわけではありません。教科書によって扱われているトピックがバラバラであるにもかかわらず、英語初中級者を対象にしているTOEIC Bridge L&Rの語彙カバー率は非常に高い値でした。このことから、TOEIC Bridge L&Rは、ビジネスパーソンだけでなく、中高生を含めた幅広い層を受験対象にしていると言えます。今後、新学習指導要領に基づいて高校2年、高校3年の教科書が改訂されることにより、カバー率は更に高くなる可能性があると推測されます。
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