一財・日本気象協会が推進する「熱中症ゼロへ」プロジェクトは6月15日、本格的な暑さを迎える前から体を暑さに慣れさせること(暑熱順化:しょねつじゅんか)の大切さについて広く知ってもらうことを目的に、各地域で暑熱順化が必要なタイミングの目安となる「熱中症ゼロヘ 暑熱順化前線」を公開した。
熱中症にかかる人を減らし、亡くなる人をゼロにすることを目指して、日本気象協会が推進するプロジェクト。2013年の発足以来、熱中症の発生に大きな影響を与える気象情報の発信を核に、熱中症に関する正しい知識と社会のニーズをとらえた予防啓発活動を展開している。
同プロジェクトでは、2021年から公式サイトにて「暑熱順化」のコンテンツを公開。暑熱順化の詳しい内容や、自分の暑熱順化がどの程度進んでいるかを確認できる「暑熱順化チェック」、印刷して暑熱順化の知識を深めることができる「暑熱順化ポイントマニュアル」も掲載している。
沖縄地方の「熱中症ゼロへ 暑熱順化前線」は6月中旬。九州地方は6月中旬~6月下旬、四国、近畿、北陸地方では6月下旬となっている。中国、東海、関東、東北地方では6月下旬~7月上旬、北海道地方では7月上旬となりそうだ。この時期を目安に、暑さに体を慣れさせることを意識した動きや生活を行うとよい。
体を暑さに慣れさせることを「暑熱順化」という。暑熱順化には個人差もありますが、数日から2週間程度かかるといわれている。しかし一度暑熱順化ができていても、数日暑さから離れると暑熱順化の効果は薄れてしまう。梅雨で雨が降り気温が下がると、それまでに暑熱順化した体も元に戻ってしまう可能性があるという。
熱中症対策には無理のない範囲で暑熱順化をするための動きや生活を続けることが大切だ。また体の調子を整えるだけでなく、エアコンの点検や試運転、暑さ対策に必要な持ち物の確認など、本格的な夏に備えた対応も一緒に始めたい。
「熱中症ゼロへ 暑熱順化前線」は、軽い運動や湯船につかる入浴で意識して汗をかくなど、体を暑さに慣れさせる暑熱順化を始めるタイミングの目安を示している。暑熱順化ができていないと、体の熱をうまく外に逃がすことができず、熱中症になる危険性が高まる。
梅雨の晴れ間や梅雨明け後など、体が暑さに慣れていない状態で急な暑さを迎えるタイミングでは熱中症に特に注意が必要。昨年は7月中旬から下旬にかけて各地で梅雨明けし、梅雨明け後の救急搬送者数は、前週の約1.6倍に増加した。
また今年の5月1日~6月4日の救急搬送者数(速報値)は昨年を上回っており、真夏に向けてますます注意が必要になってくる時期だ。
暑くなる前からできる熱中症の対策には、暑さに強い体づくりがある。暑さに強い体を作るためには、バランスの良い食事や十分な睡眠以外に、「暑熱順化」をすることも大切だ。
日常生活の中では、運動や入浴以外でも、帰り道に1駅分歩いたり、少し遠くまで徒歩や自転車で買い物に行ったり、普段はエスカレーターやエレベーターを使うところを階段で上り下りしたり、身近な方法で軽く汗をかくことができる。個人の体質や体調に合わせて、無理のない範囲で取り入れてみるとよい。
日本気象協会所属 気象予報士/防災士/熱中症予防指導員 久保智子
7月中旬頃にかけて、気温は平年より高い所が多いでしょう。その後、8月にかけて、気温は東日本や西日本で平年並みか高く、沖縄・奄美は平年より高い見込みです。
梅雨の時期は、曇りや雨でも湿度が高く、蒸し暑い日が多くなりそうです。体の中に熱がこもらないように、衣服は綿や麻など通気性の良い素材を選ぶと良いでしょう。
また、梅雨明け後は、厳しい暑さとなり、猛暑日(最高気温が35℃以上の日)の頻度も多くなる見込みです。屋外での運動や長時間の作業は、日陰など涼しい場所で適度に休憩をとり、たくさん汗をかいたら、水分だけでなく塩分も適切に補給するなど、万全の熱中症対策が必要です。本格的に暑くなる前から、暑熱順化のための運動や活動を行い、暑さに備えることが大切です。