公立小中学校施設については、概ね耐震化を完了(99.7%:2022年4月1日現在)しているものの、築40年以上の建物で、かつ改修を要する面積が全体の約39%となっている。
そこで文科省では学校施設の老朽化への対応は日本全国において直面している最重要課題とし、5月23日、学校施設の教育環境向上を図る改修等に関する課題解決事例集を公表した。
2022年3月に公表した報告書「新しい時代の学びを実現する学校施設の在り方について」に基づき、教育委員会等において、地域の実情に応じ、改修等により新しい時代の学びを実現する教育環境の確保が進むよう、課題を抽出・整理し、対応策を分かりやすく解説したもので、「既存学校施設改修等の技術的課題検討会」が検討してきた。
1人1台端末環境のもとで、個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実により、一つの空間で一斉に黒板を向いて授業を受けるスタイルだけでなく、クラウド等を活用し、教師と子供、子供同士がつながり、タブレットを片手に教室内外で学習を行う、多目的スペースを活用してグループ学習を行う、校内外の他者との協働により創造的な探求学習を行う、などの学びのスタイルの実現を想定している。
「学習空間の改善」については、アンケート結果でも「現在実施している長寿命化改修では実現できていないが、今後新しい時代の学びを実現していく上で改善が必要な整備内容」で87%ととなっている。
また、公立小中学校等施設のバリアフリー化の状況は、バリアフリートイレが70.4%、エレベーターが29.0%(いずれも校舎、2022年9月1日現在)などとなっており、既存施設を含め、学校施設のバリアフリー化の一層の推進が必要としている。
新学校施設ビジョンとして次の5つの姿の方向性を示している。
方向性を示す基礎編、既存学校施設の特性や構造・法令上のポイントを紹介し回収整備事例や回収時の構造・法令上の具体的対応例を解説した事例編、技術的に参考となる情報を紹介した資料編の3部構成。
事例編では「主体的・対話的で深い学び」を促す環境づくりを行った柏市立土小学校(千葉県)、多様な学びを実現する教育環境の高機能・多機能化を図った川崎市立菅生小学校(神奈川県)、多様なつながりを創る新しい学び舎への再生を図った京都市立朱雀第四小学校(京都府)について豊富な写真や計画書、検討プロセスなど詳細。
具体的には、1階中央のオープンスペース設置、地域と連携・協働する「共創空間」の実現、教室間の壁を撤去し、多様な活動を行うことができる広いスペースの確保、バリアフリー化への対応のため既存校舎に接続したエレベーター棟の増築、図書室とパソコン室の一体的な空間化、壁の一部を撤去し、学級間で連携できる教室空間の実現、可動のスライド式壁(ホワイドボード付きシェルフ)を設置して、教室と教室前廊下の空間を一体的に活用するなど特徴的な取組を紹介している。