文部科学大臣は「令和の日本型学校教育」を担う質の高い教師の確保のための環境整備に関する総合的な方策について中教審に諮問した。具体的には下記の項目について検討を依頼。審議の状況に応じ、施策を迅速かつ着実に実施する。
【具体的な検討事項】
①さらなる学校における働き方改革の在り方について
・学校における働き方改革答申において示された「学校・教師が担う業務に係る3分類」について、これまでの取組状況や勤務実態調査の結果などを踏まえ、さらなる役割分担・適正化を推進する観点からの学校・教師が担う業務の在り方
・教員の業務量の適切な管理、その他、教育委員会が教員の健康及び福祉の確保を図るために講ずべき措置に関する指針の内容に関し、教員の健康および福祉の確保のために服務監督権者・校長などが講ずべき措置について、実効性を高めることができる仕組みの在り方
・教育委員会間、学校間における働き方改革に係る取組状況に差異があることが指摘される中、各教育委員会における学校の働き方改革や業務改善に係る計画の策定や公表、その取組状況等を「見える化」するための枠組みの在り方
・「休日のまとめ取り」のための1年単位の変形労働時間制の一層の活用が図られるようにするための導入後の状況を踏まえた運用の見直しの在り方
・国家公務員や地方公務員に係る制度も踏まえた、公立学校の教師の健康および福祉の確保の観点からの、長時間の時間外勤務を抑制するための仕組みの在り方
・教員不足への対応や新たな学びの創出のための多様な人材の教育活動への活用が求められる中、教員集団の流動性や多様性を高めることに資する仕組みの在り方
②教員の処遇改善の在り方について
・教員の職務と勤務態様の特殊性を踏まえて、勤務時間の内外を問わず教員の職務を包括的に評価し、一律給料月額の4%を支給することとしている教職調整額および超勤4項目の在り方
・教育が教員の自発性や創造性に基づく勤務に期待する面が大きいことなどの教師の職務の特殊性に対する考え方
・現在の学校現場の状況や県費負担教職員制度などを踏まえた時間外勤務手当の支給に対する考え方
・職務や勤務の実態を踏まえた教員の意欲や能力の向上に資する給与制度や各教員の職務や勤務の状況に応じた給与のメリハリの在り方
・教員の給与などに関する特別措置法をはじめとする公立学校に固有の仕組みの前提となる公立学校が担う役割と、公立学校が担う役割を踏まえた地方公務員である公立学校の教員の職務の在り方
③学校の指導・運営体制の充実の在り方について
・地域や学校の実情を踏まえつつ、持続可能な教職員指導体制を構築することができるよう、義務教育9年間を見通すことにも留意した、より柔軟な学級編制や教職員配置の在り方
・「令和の日本型学校教育」の実現に向けた、各学校における新たな学びの取組の展開や教員の業務の質の向上に資する、子供や学校、地域の実態に応じた柔軟な教育活動の実施の在り方
・35人学級等についての小学校における多面的な効果検証などを踏まえた、中学校を含めた学校の望ましい教育環境や指導体制の構築の在り方
・教育の質の向上と教員の負担軽減のための小学校高学年における教科担任制の在り方
・組織的・機動的なマネジメント体制を構築するための主幹教諭や指導教諭、事務職員の配置の在り方
・多様化・複雑化する健康や食に関する課題に対応するための養護教諭や栄養教諭の配置の在り方
・不登校や特別な支援を必要とする児童生徒数の増加に対応できる指導体制の在り方
・教育の質を向上させるとともに、教員でなければできない業務に集中できるようにするための教員業務支援員やスクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、学習指導員、部活動指導員等の支援スタッフの配置の在り方
・2015年12月に中央教育審議会から答申された「チームとしての学校の在り方と今後の改善方策について」において示された「チーム学校」の考え方の浸透や支援スタッフの配置などの取組状況も踏まえた、次世代型の「チーム学校」の在り方
【「令和の日本型学校教育」の実装を直接担う教員を取り巻く環境】
2022年度に実施した教員の勤務実態調査の速報値を、2016年度に実施した前回勤務実態調査と比較すると、教員の時間外在校等時間の状況は一定程度改善されている一方、依然として長時間勤務の教員が多いという勤務実態も明らかとなった。
加えて大量退職や大量採用などの状況の中で全国的に教員不足が指摘されている憂慮すべき状況にある。
未来を切り拓く人材を育成していくためには、日本の学校教育の中核であり、その成否を左右する教員に質の高い人材を確保することが必須であり、抜本的に教職の魅力を向上させることが喫緊の課題となっている。
そこで、教員に係る勤務制度を含めた一層実効性のある働き方改革を推進し、教員の給与に関する制度の枠組みの見直しを含めた処遇の改善を進めるとともに、学校の指導・運営体制も充実させるなど、これらを一体的・総合的に進めることが不可欠となる。