千葉県大多喜町立大多喜小学校はエスペラントシステムの電子図書による読書支援サービス「読書館(どくしょかん)」を国語の授業に導入。これにより児童によるオリジナル図鑑の電子書籍化および掲載、配信などが可能となった。
■自分の作品が読書館に載ることで児童の意欲が高まる
大多喜小学校では国語の授業で3年生の児童全員がオリジナル図鑑を制作。事前に児童には「電子書籍で読書館に載せる」ことを伝えてから取り組んだ。読書館に掲載されている作家の作品と同様に、自分の作品が掲載されることで、意欲が高まる児童が多く見られたという。また、自発的に図鑑執筆や編集時に内容について客観的な視点が持てるようになり、わかりやすさの工夫をするなど創造的な意見や取組が多く見られるようになった。
<大多喜小学校 大竹正人教諭 コメント>
国語の授業で読書館を利用した感想や準備事項、展望などについて、同校の大竹正人教諭は、次のように述べている。
【授業のねらいや工夫について】
オリジナルの図鑑制作は国語の授業の一環として取り組んだ。教科書の「すがたをかえる大豆」(国分牧衛著)では、大豆について調べるというテーマを拡大して、「自分たちで調べた食材について書いていき、みんなで図鑑化して読書館に載せよう」というのがねらいとなった。また、校内の研究において「読書館」を活用した授業を実施した(教育事務所による国語教育の校内研究の一環)。
【導入による様々な効果】
導入の効果としては、児童に以下のような反応が見られた
・図鑑の制作段階から読書館への掲載を前提としているため執筆への活気が見られた
・児童による自発的に客観的な見られ方への工夫が見られた
・クラスを超えた公開範囲への意識付けが行われた
・読書館に掲載されることによる自動の図鑑制作への高揚感が見られた
・読書館に掲載することで児童への図鑑の一斉供給が容易になった
・図鑑を作って終わりではなく、掲載配信されてからできることや気付きがある
・紙書籍に抵抗のある児童でも「電子書籍なら読める」などのケースもあり読書量の増加の効果も見られる
【電子書籍化により教員の負担も削減】
電子書籍化することで完成した図鑑を一斉に供給することが可能となった。紙で行うことと比較すると、教員の負担軽減や資源削減の面から見て大きなメリットのひとつとなる。図鑑を作って終わりではなく、コンテンツを閲覧しながらできることなども電子書籍化の魅力と言える。
【様々な立場からコンテンツ制作に携われる】
読書館は読者側の立場に留まらず、コンテンツ執筆・編集・配信側の立場としてコンテンツ制作に携われることが、児童を能動的な意識に変えている事が今回の事例から新たにわかった。このことから他のクラスや学年、他校にも利用を進めていきたいとする。
【電子書籍化により児童の達成感が高まる】
今回、制作したコンテンツは、オリジナル図鑑「食べ物のひみつ教えます」となる。このコンテンツでは「身近な食品はどのように食材への工夫をしておなじみの食品となるのか」など、意外な原料などの発見を通して食への興味や工夫することの素晴らしさを知ることにつながった。また、電子書籍化にあたり「表紙」や「奥付」を映画のエンドロールのように作ることで、児童が達成感を得られるようになり、盛り上がりにつながった。
【電子書籍化する際はスキャン時に解像度などを調整】
工程としては、紙で制作したオリジナル図鑑をスキャンして電子書籍化したが、スキャン時に解像度などを調整することで最適値を見つけるのがポイント。また、絵は色鉛筆で描き、文章は鉛筆書きしたが、鉛筆書きでは筆圧を上げて清書するのがコツとなる。制作したのは児童1人あたり見開き2ページ相当となるが、読書館ビューアでの見え方を確認しながら進めていった。
【今後の展望】
今後はコンテンツ数を増やして図鑑特集ページの作成やPOPによる飾り付けなど、読まれることへの工夫にも展開してみたいとする。さらに、感想文の機能を活かしたレビュー会のような共有の場を検討したいと語る。次年度、同学年の児童が事前に当該図鑑を閲覧し、感想文レビューなどを通して「同学年でここまでできるんだ」という意識から執筆編集に取り組みはじめてみることにも検討する。
<読書館について>
読書館は子供たちが読書習慣を身につける一助になることを目指して開発された電子書籍による読書支援サービス。学校教育に携わるスタッフが選書した約16,000冊が“いつでも、どこでも、読める”新しい読書環境を提供する。また、本を読むだけに留まらず、地域の書籍や自作コンテンツの読書館への掲載、特集ページ作成、ポップによる装飾、感想文の執筆&掲載なども可能。利用者による“参加型”の電子書籍サービスでもあり、創作意欲の向上も期待できる。
【主な特長】
・約16,000冊が読み放題
・洋書が読める
・自治体・学校別の独自サイト設定
・低コストで常に読書機会を提供
・貸出という概念が無いので本の返却待ちが無い
・閲覧人数に制限がないので、クラス全員が同じ本を読める
・「読む」ボタンを押下するだけで本が読めるので教員負担が少ない
・読むだけではない「参加型サイト」
・地域の書籍を掲載
・特集・POPを設定
・「いいね」ボタン
・教員や児童のオリジナル文集や作品集を掲載
・読書量の分析
・感想の記録
・読書中に本にメモ、マーカーを記載
・新感覚の視覚的本探しUI「ワードサーフィン®」を搭載