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「2023年度 子どもの読書活動推進フォーラム」~4月23日の「子ども読書の日」を記念  事例紹介も

2023年5月2日

子供の読書活動について関心と理解を深めるとともに、子供が積極的に読書活動を行う意欲を高めることを目的に「2023年度 子どもの読書活動推進フォーラム」(主催:文部科学省、国立青少年教育振興機構)が、東京・渋谷区の国立オリンピック記念青少年総合センターで「子ども読書の日」である4月23日に開催された。

 


■優れた読書活動を行っている学校・図書館・団体(個人)を表彰

子どもの読書活動推進フォーラムでは「子供の読書活動優秀実践校・図書館・団体(個人)文部科学大臣表彰」として、子供が積極的に読書活動を行う意欲を高める活動を推進するため、特色ある優れた実践を行っている学校などを表彰。

優秀実践校として小学校67校・中学校26校、高等学校27校・特別支援6校・義務教育学校等4校の合計130校、優秀実践図書館として46館、優秀実践団体(個人)として46団体・個人4名の合計50団体()が表彰された。


<特別対談 子どもが自ら本を読み始めるとき>


■古代中国の甲骨文字の謎を解き明かす

「子どもが自ら本を読み始めるとき」をテーマに、NHK100de名著」プロデューサーの秋満吉彦氏と、能楽師の安田登氏をゲストに迎えて特別対談が行われた。能楽師の安田氏は多くの本を手掛けており、最近ではファンタジー児童小説「魔法のほね」(亜紀書房)を出版。「魔法のほね」では、主人公である小学校5年生のたつきが古代中国「殷」の甲骨文字を読み解いていく。甲骨文字の謎を解き明かす中で、たつきの性格も次第に変わっていき、殷の時代に生け贄にされそうになっている人を助けることになる。

 


■読むことで謎を解き明かす読書は冒険

「魔法のほね」のように与えられた謎が次第に分かっていくことは読書体験にも似ている。そのため「読書は冒険だと教えてくれる」と秋満氏は語る。この本の中で主人公を助けてくれる老人は亀甲文字を読み解くことを強制せずに謎を提示する。それに例えて「読書は強制するものではなく、読むことの楽しさを提示するものだと教えてくれる」という。

 


■本に書かれていることで様々なことが実現できる

安田氏は高校生の時に日本自作航空機協会に入っていたが、自分でハンググライダーを作ろうと思い、アメリカから設計図を取り寄せた。「数枚の設計図に書かれていることに従って、必要なものを取り寄せて作るだけで空を飛ぶことができた」ことが貴重な読書体験だったと語る。教えてくれる人がいなくても、そこに書かれている通りにすれば自分の夢が実現することに感動した。

 


■1日5分の読書を決めて取り組む

秋満氏は小学校6年の時、クラスメイトが読書感想文コンクールで金賞を受賞したのに感動し、その日のうちに父親から借りて読んだのがカフカの「変身」だった。最初は意味も分からなかったが「1日のうち5分だけでも読み進めよう」と心に決めて取り組んだ。「読んでいて疑問に思うことがあったら、問いを書き出していった」とし、その答えが見つかったのは社会人になってからだった。

 


■書かれていることを自分ごととして捉える

また、「読書を人ごとではなく、書かれていることを自分ごととして捉える」ことが重要と秋満氏は語る。秋満氏は大学生の時にフランクルの「夜と霧」を読んだ時、作者が直接自分に語り掛けているように感じたという。この本は自分に向けて書かれたものかもしれないと考えることが自分ごととして読むことにつながっていく。

 


■子供に本を勧める際も自分ごととして捉えるように

子供たちに本を勧める際、やってはいけないことは「名作だから読んだ方がいい」など第3者として勧めることと安田氏は語る。紫式部の「源氏物語」もモーツアルトの「ドン・ジョバンニ」も女性にだらしない男の物語だが名作として知られている。この2つの作品の共通点を見つけることで自分ごととして作品が捉えられるようになるという。

 


<事例発表と対談 子どもの読書への意欲を高めるために>

文部科学大臣表彰の受賞者の中から、優秀実践校として宮城県岩出山高等学校 学校司書の石田美慧氏、優秀実践図書館として清水町立図書館(静岡県)元館長の渡邉浩伸氏、優秀実践団体として朗読ボランティア「ひばりの会」(栃木県)の大塚照子氏から活動事例が報告された。コーディネータはこども家庭庁 成育局 成育基盤企画課 教育・保育専門官の馬場耕一郎氏。


【優秀実践校 宮城県岩出山高等学校】

宮城県岩出山高等学校の図書館の蔵書数は約2万冊、2022年度の貸出冊数は生徒1人あたり12.3冊、年間の図書費の予算は約66万円。特色ある取組として、全校生徒が毎月、短歌を詠む試みが行われている。年度末には作品集「岩高短歌~ワタシタチノウタ」を発行している。

生徒の読書を推進する活動としては、読書が苦手という生徒を減らすため「朝の読書活動」を全校で実施。今年で22年目を迎え、月曜から金曜の朝830分から40分は、各自が好きな本を読む時間となる。「朝の読書」の時間には学校司書が各教室を巡回し、読む本がない生徒には、その場で本を手渡している。

図書館による授業支援としては、3年・国語科ではお気に入りの本のビブリオバトルを実施。さらに、その本のPOPを作成するなど連続性のある授業が行われた。また、3年・家庭科の授業では図書館と学校司書の支援のもと、隣接する岩手山小学校の児童に絵本の読み聞かせ活動を行った。2021年度からは学校図書館の地域開放にも取り組んでいる。また、地域の公共図書館や公民館図書室と連携して資料の借り受けや相互に案内を掲示するなどの活動が行われている。

 


【優秀実践図書館 静岡県 清水町立図書館】

清水町立図書館の蔵書数は94613冊、子供(12歳以下)1人あたりの貸出冊数は11.1冊。1階がこども図書館、2階が一般図書館になっており、こども図書館の中央には地元出身の宮西達也氏の絵本コーナーが設けられている。

地域の読書活動の推進に向けて、町内の4書店と202011月に連携協定を締結。書店売上ランキングや書店員のおすすめ本を紹介しているほか、2022年には小中高を対象にブックフェアを開催した。また、幼少期からの読書活動が大事と考え、6か月児童健康相談を機に「ブックスタート」を実施。その他、月2回のおはなし会やボランティアによる幼稚園や保育所などへの読み聞かせも行っている。

夏休みには子供たちに郷土の歴史に興味を持ってもらうため、調べ学習に活用できる「郷土の歴史」のコーナーや、清水町にある三大清流「柿田川」についての特設コーナーを設置。さらに、静岡県の絵本作家えがらしみちこ氏の原画展などを開催し、子供たちに本物の作品に接する機会を設けた。

 


【優秀実践団体 朗読ボランティア「ひばりの会」】

「ひばりの会」は19825月、視覚障害者の翻訳ボランティアとして設立。2021年度は市立図書館や二宮図書館、大内西小学校などで読み聞かせを行った。主な活動内容としては図書などの音訳と読み聞かせ会がある。文字や図表などの情報の音声化に取り組んでおり、視覚障害者から依頼された図書のほか、真岡市の広報誌や市議会だよりなどの音訳を行っている。

読み聞かせ会(おはなし会)は市内2か所にある市立図書館で毎月実施。また、コロナ禍で中止しているが芳賀赤十字病院や子ども発達支援センター、児童養護施設などでも読み聞かせを行ってきた。芳賀赤十字病院では小児科病棟での読み聞かせ活動を19988月より開始。プレイルームや病室を訪問し、入院中の子供たちに絵本や童話、紙芝居、パネルシアターなどの読み聞かせを行っている。

子ども発達支援センターでは20062月から読み聞かせを開始。就学前の児童と保護者を対象に指人形などを使ってエプロンシアターやパネルシアター、紙芝居などを行っている。子供たちからはお礼として歌のプレゼントが贈られるなど楽しい交流会となっている。現在、「ひばりの会」の高齢化が進んでいるため若い世代の入会に向けてPR活動などを積極的に展開していく。

 

令和5年度「子供の読書活動優秀実践校・図書館・団体(個人)文部科学大臣表彰」

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