すららネットは3月11日、「【臨床心理士が解説】<春休み直前企画>心理学から紐解く ゲーム依存予防・対策/自発的に勉強する子の育て方講座」をオンラインで開催した。セミナーには、同社サービスを利用中の子供の保護者321人が参加。同社「子どもの発達支援室」の臨床心理士の道地真喜氏が、ゲーム依存や家庭学習に関する困り事への対策法を解説した。
ゲーム依存について、世界保健機構(WHO)が2019年に、ゲームのやりすぎで日常生活が困難になる「ゲーム障害」として正式に国際疾病に認定している。セミナーでは、最初に健康への被害も心配されるゲーム依存の初期症状やなりやすい子どもの特性の解説、保護者の子育てスタイルについて解説した。
◎ゲーム中毒の初期症状
◎ネット依存やゲーム障害になりやすい子どもの特性
子どもが持つ性格や環境の変化等は、ネット依存やゲーム障害に大きくかかわってくる可能性が高いと言われている。
<性格と精神面>
実年齢より幼い/気分の浮き沈みが激しい/アイデンティティの拡散(自分が分からない)/自己評価が低い/優柔不断/自制心がない/欲求不満/耐久性が低い/好奇心が旺盛/社交性が欠如している/極度の人見知り
<環境面>
家族間での争いが多い/親子間で話す機会が少ない/愛情表現されてない/学校での成績が低迷している/モチベーションが低い
<生物学的な面>
神経伝達物質が欠如している(ADHD、ASDなど)
◎保護者の子育てスタイル
保護者の子どもに対する対応が子どものゲーム依存には影響すると道地氏。そこでの同氏の臨床経験から保護者の子育てスタイルを4つに分類。その中で、理想は子どもの気持ちを考慮して話し合いの場を持つ「民主的スタイル」で、避けて欲しいのがしつけを避け欲しいものは何でも与える「消極的スタイル」であると解説した。
上記を踏まえて、ゲーム依存の予防法として、親子関係が良好であることを前提としたルールの徹底と守らなかった時の決まり事を説明。「子どもはルール、役割分担が明確に決まっているとよりスムーズに行動することができます」と道地氏はアドバイスした。
【ルール/守らなかった時の決まり事の例】
臨床心理士の道地真喜氏
子どものゲームとの付き合い方に関する保護者からの悩みに対して、子どもの様子をよく観察し、年齢や特性に合わせた対応が重要とであるとし、具体的な対策法をアドバイスした。
【お悩み】放置していたら無制限にゲームがしたい様子です。ご褒美としてゲームをやらせてあげたとしても、もっとゲームがしたいとなりますが、できればやらせたくありません
【回答】ゲームをやらせないことではなく、自己コントロールを学ばせる
その際に役立つ考え方として「行動のABC」を紹介。行動のABCとは、A先行条件(~の時に)、B行動(~したら)、C結果(~だった)の枠組みで考える行動の分析方法。Bの行動によって起きたCの結果によって、Bの行動が強まったりなくなったりすることがわかっている。
「これは、子どもにゲームをする時のルールを伝えて、子どもがルールを守ったため、C「結果」で子どもを褒めてあげたという行動の流れ。この場合、子どもは「ルールを守ったら褒めてもらえた、またゲームをさせてもらえる」と感じ、B「行動」のルールを守ることが強化される。
「これにあてはめてみた場合、Aルールを伝えた、Bルールを守ったので、Cルールを守れて偉かったとほめ、次も安心してゲームができると伝えると、Bのルールを守ることが強化されるというのが理想的だ。
しかし、問題はBのルールを守らなかった時。Bの好ましくない行動を起こした時は、Cでゲームの特権を無くすと、子どもの好きなものを取り除くこと。こうすることによりBの行動を減らすことが期待できる。併せて、「この方法で効果があるのは、普段いい行動をしている時にほめている関係性ができていること」と注意を促し、好ましくない行動を正すには、日ごろから子どもの良い行動を親がほめる習慣をつけておくことが重要と解説した。
セミナーの後半では、「自発的に勉強する子の育て方」をテーマにして、子どもの特性にあった勉強方法や褒めることの重要性などを解説。「子どもの特性や成長に合わせたサポート」については、子どもの特性によって勉強方法を変えることをアドバイスした。
子どもの特性を知るために、子どもの発達支援室では、「KABC-Ⅱ」という知能検査を提供している。知能検査では唯一、基礎学力を計る学習習得度の評価も取り入れており、学習支援を目的として「認知尺度(認知処理力)」と「学習尺度(基礎学力)」を測定する。検査結果から得意・不得意を発見し、どのような勉強方法が子供に合っているのか学習支援の方法や教材のアドバイス、「すらら」利用者にはその子に合った学習プログラムにアレンジするなど結果を踏まえた家庭学習支援を提案する。
認知特性には「継次処理」と「同時処理」の2つがある。「継次処理」は順に1つずつ情報を処理する力で、「同時処理」は複数の情報を全体的(空間的)に処理してから、部分的な処理をする力。「継次処理」が優位な子どもは、順を追って説明をすると理解がしやすいので、学校の授業のような教え方が向いている。
反対に「同時処理」が優位な場合、全体的な形を捉えて情報を処理するため、図や表で説明をすると理解が早く進みます。例えば、間違い探しフラッシュカードなどで、どこが間違っているか細部まで見る力を鍛えたりすると効果的。
「子どものよい行動を促進する効果的な声がけ」については、努力や過程を褒めることが重要と解説。能力や結果を褒めてしまうと、失敗した時に「自分に能力が足りないからだ」と思ってしまったり、集中力が続かなかったり勉強を嫌がってしまう可能性があると説明した。
【お悩み①】少し間違えただけでへそを曲げてしまい勉強できなくなってしまいます
【回答】「すごい」「賢い」はNG。努力や過程を褒めて、失敗することへの恐怖感をなくしていく
失敗することを極度に嫌がる子どもには、「賢い」「すごい」「やればできる」など能力や結果を褒めることは避ける。努力や過程を褒めることが大切。
【お悩み②】子どもへの声がけは具体的に何をしたらいいのでしょうか
【回答】子どもを観察して増やしたい(好ましい)行動は何かを見つける
まずは日常生活で出来ていることに着目し、褒める時は具体的に何を頑張ったかについて補足することが大切。
【お悩み③】計算でパニック、漢字の間違い指摘で癇癪を起してしまいます
【回答】わざと間違えた答えを保護者が提示し、子どもが間違いを指摘できる環境をつくる
指摘されるのは子どもにとって効果的ではない。わざと間違えた答えや問題を出して子どもが指摘できる環境をつくることがおすすめ。また不安に感じた時にどのような行動をとるかを観察し、対策を考えていくことも大切。