NPO法人日本語検定委員会は、第14回「日本語大賞」の入賞作品を発表した。今回は『私が大事にしている言葉』をテーマに児童から大人まで広く作品を募集。2022年6月1日から9月16日までエッセイ・作文を募集したところ、全国から小学生の部2066点、中学生の部931点、高校生の部1597点、一般の部168点の計4762点もの作品が寄せられた。厳正なる審査の結果、小学生の部、中学生の部、高校生の部、一般の部ごとに文部科学大臣賞をはじめとする各賞が決定した。
■日本語の美しさや言葉のもつ力を見つめ直すために
日本語検定委員会は「日本語の大切さを社会全体に呼びかけること」を目的に設立。日本語の美しさや言葉のもつ力を見つめ直したいという願いから「日本語大賞」を設け、年1回実施している。第14回「日本語大賞」は第一次審査、第二次審査を経て、11名の審査委員による最終審査が行われ、部門ごとに優れた作品が選ばれた。
■「大好き」という言葉を大切なものに伝えていく
小学生の部の文部科学省は、敬愛小学校4年生の安田彩乃さん「『大好き』のま法をかけて」。大切なものに触れるたび「大好きだよ」という言葉を心の中で唱える安田さん。そんな言葉の持つ力に気づかせてくれたのは入院している母親とのテレビ電話でのやり取りで、自分の言葉が母を元気にしてくれると言われたことだった。これからも「大好き」という言葉を大切なものに伝えていきたいという安田さんの思いが綴られている。
■認知症の祖母が口にした感謝と謝罪の言葉を胸に抱えて
中学生の部の文部科学大臣賞は、さいたま市立大谷場中学校1年生の本山みいさん「言葉を受け取って」。本山さんは、いつもはあまり喋らない認知症の祖母から「ご飯もってきてくれてありがとうね、辛い思い、いっぱいさせてごめんね」と声をかけられた。次の日の夜に祖母は亡くなったが、祖母がどんな思いで感謝と謝罪の言葉を口にしたかを考えたという。本山さんは、祖母の言葉の真意を受け止めて、心の底から想う感謝を伝えていきたいとする。
■亡くなった母の言葉が残された交換日記を見つけて
高校生の部の文部科学大臣賞は、和洋国府台女子高等学校2年生の和佐間芽弥さん「貴方の言葉は八年越しに、」。母方の祖母と2人で暮らしている和佐間さん。両親は離婚し、母親と祖母の3人暮らしだったが、小学校3年生の時に母親がくも膜下出血で亡くなった。ある日、母との交換日記を見つけ、そこには「メミはママにとっての大切な宝物です。いつもありがとう。大好きだよ」という言葉が残されていることに気が付いた。8年前に亡くなった母の言葉が今でも自分を支えてくれているという。
■夫とともに過ごした時間と思い出に感謝の言葉を贈る
一般の部の文部科学大臣賞は、石川県の豊恵子さん「感謝の気持ちを言葉に」。5年前にガンにかかった豊さんは夫と二人暮らしで、夫が会社に出かける際は「今日もよろしくお願いします」、眠る前には「今日もありがとうございました。明日もよろしくお願いします」と声をかけ、握手とハグ、背中のタップを行っていた。しかし、新型コロナウイルスで夫は「ありがとう」と感謝の言葉を述べて帰らぬ人となった。豊さんは夫とともに過ごした時間や思い出に感謝して、「ありがとう」をありがとうという言葉を贈る。
<文部科学大臣賞>
【小学生の部】山口県 敬愛小学校4年生 安田彩乃さん
「『大好き』のま法をかけて」
『作品本文』
私には大切なものがたくさんある。おたん生日に買ってもらったシロクマのぬいぐるみ。いつも遊んでくれる、おとなりのお姉ちゃん。食いしんぼうの父が買って来てくれる、新発売のおやつ。ケンカをした後の、兄との仲直り。私はいつもこれらの「大切」にふれるたび、心の中でじゅ文を唱える。それは、「大好きだよ。」の言葉だ。この言葉を使うと、私の気分はそれまでの何倍もうんと明るくなる。このま法のような言葉の力に、一番最初に気づかせてくれたのは、母だった。
母は今、入院している。でも、私はさびしくない。(続きはWeb)
https://www.nihongokentei.jp/grandprize/pdf/14rd/sho_01.pdf
【中学生の部】埼玉県 さいたま市立大谷場中学校1年生 本山みいさん
「言葉を受け取って」
『作品本文』
私は小学校四年生くらいまで、介護が必要な認知症の祖母と暮らしていた。正直、もう小学校に進学しているのに「みい、幼稚園は楽しかったかい?」と何回も聞かれたり、だんだん介護が大変になり精神的にも肉体的にも追い詰められていく母を見たりしては、祖母のことが嫌いになっていった。兄と祖母の愚痴を言い合うことや、「おばあちゃん、もうちょっと頑張ってよ」と祖母に直接キツい言葉を投げかけたりすることもあった。その時の私たちは限界だったのだと思う。
その日はいつもより涼しくて、過ごしやすい日だった。家に帰ってきて、ベッドで横たわっている祖母にただいまを言う。いつも通りの日課。(続きはWeb)
https://www.nihongokentei.jp/grandprize/pdf/14rd/chu_01.pdf
【高校生の部】千葉県 和洋国府台女子高等学校2年生 和佐間芽弥さん
「貴方の言葉は八年越しに、」
『作品本文』
「人生山あり 谷あり」なんて言ったもんだが今の所私の人生は「人生谷あり 壁あり まぁたまには福もある」なんてものである。まだ十六歳の若もんが何を言っているんだと、大人たちは思うだろう。まだ高校生の子どもが人生語るなんざ一〇〇年早いと思っているが今からお話する私の、和佐間芽弥の今までの人生十六年の中の思い出話の一つをちょっと聴いて行って欲しい。
私は現在関東のとある一軒家で母方の祖母と私の二人で暮らしている。決して裕福とは言えぬ暮らしだけれども、他の誰よりも楽しく穏やかで幸せな日々を送っている。記憶すらまともに残っていないが、私が二歳だった頃までは父、母そして私の三人家族で暮らしていたそうだ。だが私が幼稚園に入園する三歳の頃両親は離婚し、私と母は祖母の家にて三人で暮らすこととなった。三人で暮らした日々はもうそれはそれは本当に幸せであった。(続きはWeb)
https://www.nihongokentei.jp/grandprize/pdf/14rd/koko_01.pdf
【一般の部】石川県 豊恵子さん
「感謝の気持ちを言葉に」
『作品本文』
五年前、私はガンになった。長期入院や抗ガン剤治療を経て、命はつながり今に至る。
夫婦二人暮らし。夫はもともと優しい人だったが、退院後は私の体調を心配して、より優しく接してくれた。ガン再発の可能性を考え自分の命の心配もあったが、優しい夫との生活は幸せだった。
わが家の朝は、キッチンで夫と二人並んで調理するのがいつもの光景だった。専業主婦に限らず主婦が家族みんなの朝食準備を行うのが一般的だが、私たち夫婦は互いの朝食を準備した。夫は私のために、私は夫のために調理した。
夫はガンに効果があるらしい自家製野菜ジュースを毎朝かかさず私のために作ってくれた。人参をはじめとした複数の野菜や果物を切ってジューサーにセットする。野菜ジュースを絞ったあとの搾りかすや洗い物や片付けも全部きちんと最後までやってくれた。その間に私は珈琲を淹れながら、夫のための朝食作り。それに加え夫が会社へ持っていくお弁当を作る。大柄な夫とせせこましく広くもないキッチンで二人まな板を並べる朝は慌ただしくも愉しい日常だった。(続きはWeb)
https://www.nihongokentei.jp/grandprize/pdf/14rd/ippan_01.pdf
<日本語大賞 概要>
【主催・協賛・後援】
主催:NPO法人日本語検定委員会
協賛:読売新聞社/東京書籍/時事通信社/日本教育新聞社/教育新聞社/教育家庭新聞社/全私学新聞/語研株式会社/湘南ゼミナール/ブロッサム横浜/リーブルテック/学習調査エデュフロント/東京物流企画
後援:文部科学省/日本商工会議所/経団連事業サービス/海外子女教育振興財団/全国高等学校国語教育研究連合会/全国高等学校 PTA 連合会/スコーレ家庭教育振興協会/日本キャリア教育学会/手紙文化振興協会
【表彰】
小学生の部:文部科学大臣賞1点、優秀賞2点、佳作6点
中学生の部:文部科学大臣賞1点、優秀賞4点、佳作4点
高校生の部:文部科学大臣賞1点、優秀賞3点、佳作5点
一般の部:文部科学大臣賞1点、優秀賞2点、佳作6点
【審査委員】
審査委員長
梶田叡一(桃山学院教育大学学長・聖ウルスラ学院理事長)
審査委員
東武雄(読売新聞東京本社教育ネットワーク事務局長)
梶原しげる(フリーアナウンサー・東京成徳大学経営学部客員教授)
蕪木豊(彩の国総合教育研究所評議員・元埼玉県教育局指導部長)
境克彦(株式会社時事通信社代表取締役社長)
佐々木文彦(明海大学大学院応用言語学研究科・明海大学外国語学部日本語学科教授)
佐藤和彦(全国高等学校国語教育研究連合会会長・東京都立松原高等学校校長)
城重幸(豊岡短期大学教授)
山内純子(元全日本空輸株式会社取締役執行役員客室本部長)
吉元由美(作詞家・作家・淑徳大学人文学部客員教授・洗足学園音楽大学客員教授)
渡辺能理夫(東京書籍株式会社代表取締役社長)