2016年3月に千葉県南房総市の漁港に打ち上げられ、砂浜に埋めていたコククジラの骨格を掘り起こし、3Dデータ化するためにスキャンする取組が(一社)日本3D教育協会により1月28日・29日に開催され、海洋研究3Dスーパーサイエンスプロジェクトの1期生と2期生の中学生が参加した。
■コククジラの骨格を3Dデータ化することで貴重な標本を残す
同イベントは日本財団「海と日本プロジェクト」の一環として実施。東京海洋大学鯨類学研究室の中村玄助教と日本3D教育協会代表の吉本大輝氏の指導のもとで作業は行われた。今回のプロジェクトは埋めていたコククジラの骨格を掘り起こし、3Dデータ化することで後世に貴重な標本を残すための取組となる。
■3Dデータ化により標本が抱える課題を解消
海洋生物研究の分野において生物標本や骨格標本は、様々な分野から研究を行うためにも重要なものとなる。ただし、標本は維持や管理、保管場所などに多大なコストが必要となるが、3Dスキャナーを使った標本の3Dデータ化により、こうした課題の解消に繋がる。近年では各国の博物館がデジタルアーカイブの一つとして、標本の3Dデータの収集と公開をするようになってきている。
■ラベリングしながら骨格を並べる
掘り起こしたコククジラの骨格は、シートに並べられ、全体の骨格がわかるようにラベリングをしていった。2016年の埋める際にも肋骨、脊椎の骨、胸鰭、頭骨などを掘り出し時に分かるように並べて埋めていたことから掘り出す際にもスムーズに並べることができた。
■スキャンデータをもとに3Dモデルを制作
骨格のスキャンは、海洋研究3Dスーパーサイエンスプロジェクトで学んできたことを最大限に活用して行われた。設置したモニターで確認しながら、データ取り込みの漏れがないよう丁寧にスキャンを実施。2日間で掘り起こした骨格のスキャンデータをもとに、後日プロジェクトチームの3D専門家がレタッチ作業を行い、3Dモデルを制作する。
<参加者からの声>
杉本拓哉さん(中2)
骨が脆く、ぶつけたりしないように、気をつけて砂を取り払う必要がありました。普通は研究関連の人しか参加できない現場に立ち合うことができた上、実際に作業も行うことができ、本当に貴重な経験となりました。出来上がった標本を見に行くのが楽しみです。
岡本結和さん(中2)
小学校6年生の時にコククジラを調べていて、いつかコククジラの掘り起こしをしてみたいと思っていたので、その夢がかなってとても嬉しいです。コククジラは首をあまり使わないので頸椎がくっついていることがあると中村先生に教わりましたが、実際に7個の頸椎のいくつかがくっついていることを自分の目で確認できました。
日本3D教育協会代表 同プロジェクト3D講師 吉本大輝氏
クジラの掘り起こしという前代未聞のイベントを開催でき、生き物好きとしてとても有意義な時間でした。さらに中学生たちと3Dスキャンを行い、骨格標本をデータ化するという、未来につながる取組にワクワクしました。
東京海洋大学鯨類学研究室 助教 同プロジェクト海洋講師 中村玄氏
中学生の研究生たちはグループリーダーの指示に的確に従ってテキパキと作業をこなしていました。今回、掘り出された骨格は、これから100年以上保管され、研究者だけでなく多くの人の目に触れることとなる。全国的にも珍しいコククジラの骨を掘り出す体験を多くの人と共有できたことを心から嬉しく思います。