国立情報学研究所(NII)は、オープンサイエンスの実現に向け、大学の研究データを適切に管理しつつ利活用を加速するため、秘密計算を用いた安全なデータ分析基盤に関する研究を進めている。
1月23日、日本電信電話株式会社(NTT)と共同で、データを暗号化したまま一度も元に戻さずに、世界初のAI 4大カテゴリの主要なアルゴリズムによる学習・推論が可能な秘密計算AIソフトウェアを利用できるトライアルを提供すると発表した。
本トライアルは、NIIとNTTの共同研究の一環として、NIIの計算機上で秘密計算AIソフトウェアを実験的に利用する大学等のパートナーを募集するもの。両者は、本取り組みを通じて安全にデータを共有できる基盤技術を確立し、誰もが安心してデータを利活用できる社会の実現を目指す。
昨今、第四のパラダイムとも呼ばれるデータ駆動型科学の普及にともない、研究データを原則公開し多分野での利活用を図るオープンサイエンスの機運が高まっている。しかし、個人のプライバシーに関わるデータや営業秘密に関わるデータなどは、情報漏洩や不正利用の懸念もあり利活用が進んでいない現状だ。その解決策として注目されているのが、データを暗号化したまま一度も元に戻さず処理ができる秘密計算技術である。
国内唯一の情報学の総合研究所であるNIIは、大学や研究機関における研究活動を支える次世代学術研究プラットフォーム「NII Research Data Cloud)(NII RDC)の構築に2017年から取り組み、2021年から本格的なサービスの運用を開始した。この基盤上で研究データ利活用の可能性をさらに広げるため、秘匿解析機能を含む7つの高度化機能を開発中であり、その要素技術として秘密計算技術の研究を進めている。
NTTは世界に先駆けて秘密計算技術の研究開発に取り組んでおり、秘密計算による統計処理に加え、秘密計算で深層学習を行う技術を世界で初めて実現している。ここから更に研究開発を進め、機械学習の基本である回帰・分類・クラスタリング・データ次元圧縮の代表的なアルゴリズムを秘密計算で実現し、世界初の秘密計算AIソフトウェアを開発した。
今回、NIIとNTTは秘密計算を用いた安全なデータ分析基盤に関する共同研究の中で、NIIが所有する計算機上にNTTの秘密計算AIソフトウェア環境を構築し、研究者が試用できる機会を設けた。本トライアルにより研究者からのフィードバックを得て、実際の研究における秘密計算技術の有用性を評価するとともに、次世代NII RDCの秘匿解析機能の開発を見据えた技術検証を行い、世界最先端の学術基盤の構築をめざすとしている。
利用対象者 国内の大学・研究機関に所属する教職員・研究者
提供期間 2023年1月末〜2024年3月末(予定)
利用料金 無料
利用目的 実験目的(非商用目的)に限る
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