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子供を守るため施設職員にセキュリティ対策を研修で提供 「社会的養護職員のためのITセキュリティ/リテラシー研修」事業報告会を開催 NPO法人ライツオン・チルドレン

2022年12月28日

NPO法人ライツオン・チルドレンは「社会的養護職員のためのITセキュリティ/リテラシー研修」事業報告会を12月15日に実施した。子供がネットに触れる機会が増える中、児童養護施設の職員らに向けて、どのような研修を実施してきたかが報告された。

事業報告会の様子


■IT化への対応が迫られる児童養護施設

NPO法人ライツオン・チルドレンは2014年の設立から8年以上にわたり、児童養護施設の子供とITに関する活動を行ってきた。従来、児童養護施設はデジタルやネットとの距離をとる傾向にあったが、GIGAスクール構想やコロナ禍による学校のIT化の影響を受け、Wi-Fiの整備を進める施設も増えてきた。

 


■「ITセキュリティ/リテラシー研修」を370人以上の職員が受講

NPO法人ライツオン・チルドレンは施設のデジタル対応をサポートするため、東京を中心とする児童養護施設など87か所に約340台のPCやタブレットを寄贈してきた。次の課題として、子供を危険から守りつつ学べるように「ITセキュリティ/リテラシー研修」事業を施設の職員などを対象に2020年度から実施。これまで約20か所の施設で、のべ370人以上が受講した。

 


■児童養護施設ならではのネットに関する悩みも

20208月に都内の社会的養護施設46か所に「最も求めているICT支援は何か」を聞いたところ38か所から「施設の職員向け研修」という答えが返ってきた。また、「子供のネット利用で施設が心配すること」では「ゲームやネットへの依存」「高額な課金や買い物」という回答が上位にあがるとともに「親とネットでつながることで生じるトラブル」という回答もあった。これは親と離れて施設で暮らす子供に対して、ネットを通じて親が金銭を要求するケースや居場所を特定されて連れ戻されるケースなどが考えられる。

 


■職員がセキュリティやITリテラシーを身につけて子供に伝えるために

ライツオン・チルドレンが「ITセキュリティ/リテラシー研修」事業を立ち上げた目的として、子供が施設にいる間にネットに触れる中で、安全な環境やネットリテラシーを確保したいという思いがあった。そのためには子供にとって身近な存在である職員がセキュリティやITリテラシーを身につけた上で、子供のIT利用に関するルールなどを改めて確認することが求められる。さらに、職員から子供にITリテラシーを伝えてほしいとの思いがあった。最終的なゴールとしては子供と大人とICT3者が手を取り合い、良い関係を築いていくことが目指される。

 


<ITセキュリティ/リテラシー研修について>

ITセキュリティ/リテラシー研修」で提供されるのは、一般家庭レベルのセキュリティ対策やノウハウ+αを学ぶ、職員全般を対象とした「ユーザーの安心・安全」編(90)、組織としてのセキュリティ対策やノウハウ+αを学ぶ、IT担当者やリーダー層向けの「組織の情報セキュリティ」編(90)2コースとなる。


◆研修は打ち合わせを含めて、すべてオンラインで実施

研修はすべてオンラインで行われ、受講料は助成金により賄われるので無料となる。対象は東京の児童養護施設、母子生活支援施設、自立援助ホーム。「ユーザーの安心・安全」編は相模女子大学 学芸学部 子ども教育学科の中島健一朗准教授、「組織の情報セキュリティ」編は元外資系ベンダーSEの石田剛氏が講師を担当する。

 


◆小さなトラブルの体験が子供の成長につながる

「ユーザーの安心・安全」編では、セキュリティとは何かから始まり、ICT機器との付き合い方、ゲームとの付き合い方、ネット社会との付き合い方などを学ぶ。ネットやゲームを完全に禁じるのではなく、子供自身がネットやゲームとの距離感をつかむことが大事と伝えている。ネットトラブルでも大きな事件につながるものは防ぐ必要があるが、小さなトラブルやつまずきを体験することで子供の成長につながっていく。

 


◆子供を守るため親との連絡もルール化する必要が

また、社会的養護施設ならではの問題として親と繋がることのリスクがある。親による金の無心や暴行・性的虐待などのケースが考えられるので、「ユーザーの安心・安全」編では親子でも「情報」は当人のものという意識を職員は持って、連絡先のやり取りなどをルール化する必要があると研修では解説している。

 


◆施設から個人情報が洩れることを防ぐために

「組織の情報セキュリティ」編は施設業務にITを取り入れたいと考えている人に向けた研修となる。社会的養護施設が組織をあげて取り組むべき対策として、個人情報の流出があげられる。その際、万全な対策を取っているつもりでも1か所でも対策が取れていないところがあると、そこに脆弱性が生まれて情報が洩れていくと教えている。

 


◆対策として基本8項目を守るべき点として紹介

また、「組織の情報セキュリティ」編では守るべき点として、内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)が作成した以下の基本8項目を紹介している。①OSやソフトウェアは常に最新の状態にする、②ウイルス対策ソフトを導入する、③パスワードを強化する、④共有設定を見直す、⑤脅威や攻撃の手口を知る、⑥常にバックアップをとる、⑦人間にもセキュリティホールがあることを知る、⑧困ったら各種窓口にすぐ相談する。

 


◆予算面などの問題の解消が求められる

研修を実施することでITセキュリティ/リテラシーに関する施設職員の理解度を底上げするとともに、施設が標準的に対応すべき最低限の事項について「たたき台」を示すことにつながった。ただし、研修内容は理解できても予算面などから実際の対応は困難という声もあり、国や自治体のさらなる支援が求められる。

 


【ライツオン・チルドレン 設立者・理事長 立神由美子氏】

2010年代の児童養護施設は、子供たちの日々の活動記録は手書きで行われ、HPやメールアドレスを持たない施設も多く、子供たちがインターネットにアクセスする環境も少なかった。2020年度からは学校との連絡もメールやLINEに移行するなど施設のICT化は一気に加速した。また、GIGAスクール構想で子供が学校からPCやタブレットを持ち帰るようになると、施設内でも子供が利用できる台数が増加するなど、インターネットの開設が急速に進んだ。

ライツオン・チルドレンでは社会的養護施設の子供たちが情報格差に陥らないよう、ICT利用を促進する活動を行ってきた。社会的養護施設の社会からの認知の低さを感じ、社会から取り残されないためにもデジタルへの対応を進めていく。

 

NPO法人ライツオン・チルドレン

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