立命館大学は2023年度入試より、AI教材「atama+(アタマプラス)」を使ったAO選抜入学試験を実施した。経済学部(経済専攻)、スポーツ健康科学部、食マネジメント学部の3学部で、学部の学びに重要と思われる指定単元を学習・修得する「UNITE Program」を取り入れた総合型選抜を実施。同入試の実績および分析結果が12月12日に発表された。
■「学習歴を踏まえた新たな入試企画の検討」の具体策として実施
学校法人立命館とatama Plusは2020年12月22日に「新しい高大接続と入試の在り方を考える共同研究会」を設立。研究テーマとして3つの柱を設定したが、そのうちの一つ「学習歴を踏まえた新たな入試企画の検討」の具体施策として学部指定単元AI学習プログラム「UNITE Program」の実施が決定した。
■全国初となる「UNITE Program」とAO入試の組み合わせ
AO入試や推薦入試など学科試験を実施しない入試の場合、高校などでの科目の履修有無や学習成績の状況が選考基準に用いられてきたが、履修したことが修得に結びついていないという問題があったと立命館大学副学長の伊坂忠夫氏は語る。また、各学部で重視する学びを大学入学前に身につけてもらう必要があったことから学部指定単元AI学習プログラム「UNITE Program」とAO入試を組み合わせた新しい形の入試を導入した。
■AI教材で学習して修得認定試験に合格することがAO入試の出願要件に
「UNITE Program」+AO入試では、各学部が入学後の学びに特に重要となる教科の「単元」を指定。受験生はその指定された単元をAI教材で学習する。そして、学習の結果、各単元の修得認定試験に合格してプログラムを修了することがAO入試の出願要件となる。これにより学部が望む単元の内容を修得した者の入学が見込まれる。
■初年度は3つの学部で新AO入試を実施
2023年4月入学の2023年度総合型選抜 AO選抜入学試験から、数学的素養を重視する方式を新設。2023年3月31日までに高等学校などを卒業または卒業見込みの人を対象に、経済学部(経済専攻)、スポーツ健康科学部、食マネジメント学部の3学部で新AO入試が実施された。
■学部での学びでリーダーシップを発揮する人材を望む
新AO入試を導入する3学部は専門の学問分野を学習するため、数学的素養が非常に重要な学部となる。ただし、数学の全範囲ではなく、学部での学びで特に重要な単元が存在する。そこで大学入学後に学びたいことや将来やりたいことを実現するため、学部が求める単元を修得することが重要と入試企画を通じて発信していく。「新AO入試では学部での学びでリーダーシップを発揮する、数学的素養やデータリテラシーを持っている学生に入学してほしい」と伊坂氏は語る。
■AI教材で学部指定の単元を学習した修了者のみがAO入試を出願可能
受験生は2022年5月から8月にAI教材を使って学部が指定する単元を学習。9月までに指定単元の修得認定試験をすべて合格した修了者のみがAO入試を出願。10月の統合型選抜(AO入試)で出願学部が第1次選考から第2次選考を受験し、37人の合格が決定。12月から入学までは入学前教育として合格者を対象に、AI教材を用いて入学後に必要となる単元をさらに学習する。
■AI学習システムの修得認定試験中は顔写真撮影で不正を感知
今回、AI狭隘で事前に学習したのは高等学校の数学全体のうち各学部が指定した5~8単元。atama+のIDを取得し、AI学習システムにログインして学習を進め、AIが単元の合否を判定する。所要時間の目安は1日1時間学習した場合半月から1か月程度となる。AI教材の修得認定試験を受ける際は、ランダムに顔写真撮影が行われて不正を感知する。
■プログラム受講者の62%が修得認定試験を通過
新AO入試の開始当初は受講者100人、修了者50人程度を予想していたが、実際には受講者227人、修了者140人と2倍を上回る結果となった。受講者・修了者ともに北海道か沖縄まで全国各地に分布し、海外(中国)からも4人が受講した。プログラム受講者の半数を上回る67%が全単元合格し、62%が修得認定試験を通過した。
■プログラム修了者は継続的に学習する傾向に
プログラム受講者の AI教材での学習データを分析した結果、未修了者は早期に離脱する人が多かったのに対し、修了者は一定以上の学習を行っている。修了者の 90%は指定単元の修了まで10日以上の継続的な学習を行っていることがわかった。なお、修得認定試験は期間中なら「遡り学習」で学習内容を振り返り、単元合格するまで何度でもチャレンジすることができる。実際に受講者は単元の内容を理解するまで、繰り返し学習をしており、学習意欲の高さが伺える結果となった。
■数学の得手不得手に関わらず誰でもチャレンジできる
新AO入試の合格者に実施したアンケートによると、UNITE Program受講前にatama+を利用したことがあるのは2割程度で8割が未経験者だった。また、28%の合格者が学習指定科目である数学に苦手意識を持っていたという。このことから新AO入試はAI教材の利用経験や数学の得手不得手に関わらず、誰でもチャレンジできることが分かった。
■来年度以降は他学部でも新AO入試の実施を検討
次年度以降は募集枠をさらに拡大し、他学部や立命館アジア太平洋大学(APU)でも、このスキームを使った入試方式の導入を検討する。また、過去の成績や資格の評価だけでなく、受験生が努力すれば平等にチャレンジすることが可能な入試を広げていく。さらに、定量化・可視化された学習情報を活用し、新しい高校と大学の学びの接続を推進するという。