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紙の教科書とデジタル教科書のベストミックスを求めて~ 「学校図書館図書等の整備・拡充」と「教科書での紙とデジタルの最適化」を求める各界連絡会

2022年12月9日

「学校図書館図書等の整備・拡充」と「教科書での紙とデジタルの最適化」を求める各界連絡会(主催:文字・活字文化推進機構/学校図書館整備推進会議、共催:学校図書館議員連盟/活字文化議員連盟)が12月7日に開催された。第6次「学校図書館図書整備等5か年計画」の地方財政措置や紙の教科書とデジタル教科書の最適な在り方などについて報告が行われた。

 


【学校図書館図書等の整備・拡充について】


■急速に進む学校図書館への新聞配備

学校図書館等の整備・拡充については文部科学省大臣官房審議官 総合教育政策局担当の里見朋香氏が報告。学校図書館の現状については、学校図書館図書標準達成校は2015年に小学校66.4%、中学校55.3%だったのが、2019年には小学校が71.2%、中学校が61.1%と56%上昇。新聞配備校は2015年が小学校41.1%、中学校37.7%、高等学校91.0%だったのが、2019年には小学校56.9%、中学校56.8%、高等学校95.1と特に中学校での伸びが目立つ。また、学校司書配置校の割合は2016年に小学校58.8%、中学校57.1%だったのが2020年には小学校69.1%、中学校65.9%と8%程度増えている。


■5か年で約2400億円の地方財政措置を計上

6次「学校図書館図書整備等5か年計画」は2022年度から2026年度まで進められ、単年度総額480億円、5か年総額2400億円の地方財政措置が講じられることになっている。地方財政措置は使途を特定しない一般財源となるので各自治体において予算化が図られることで、図書や新聞の購入、学校司書の配置のための費用にあてられる。そのため各自治体での予算化が求められる。


■学校司書は約1.3校に1人の配備拡充を図る

その具体的な内訳は、学校図書館図書の整備については、総額995億円をかけて、学校図書館図書標準達成を目指すため図書の整備が進められる。また、選定基準・廃棄基準を策定し、古くなった本を新しく買い替えることを促進する。新聞配備については様々な情報を取捨選択して、自分なりの意見を持てるように小学校等2紙、中学校等3紙、高等学校等5紙を目標に総額約190億円の予算があてられる。学校司書については、これまで約1.5校に1人だったのが、約1.3校に1人とするため総額約1215億円の予算を講じて配備拡充を図る。

 


■地方交付税算定額の試算方法を紹介

文科省では学校図書館の整備を進めるため周知資料を作成。都道府県教育委員会には学校図書館図書整備等5か年計画を踏まえた上で、学校図書館の整備・充実を働きかけてもらうため、予算措置の参考となる資料を1025日に配布。本来、小中学校で配分される算定額が分かるように、自分の自治体や学校の、図書・新聞・学校司書費が措置されている地方交付税算定額を試算することができる。

6次「学校図書館図書整備等5か年計画」に基づき学校図書館の整備を進めましょう

 


【教科書における紙とデジタルの最適化】

文科省大臣官房学習基盤審議官の寺門成真氏と文科省初等中等教育局教科書課長の安井順一郎氏からは「個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に向けたデジタル教科書等の在り方」について報告が行われた。

 


■デジタル教科書は紙の教科書との併用を前提に導入

紙の教科書とデジタル教科書の関係性については中教審にワーキンググループを設置して話し合いを進めてきた。その結果、202210月にデジタル教科書は紙の教科書との併用を前提とした上で段階的に導入することが示された。今後、紙とデジタルのバランスを生かしながら、児童生徒の学びの充実に向けて、研究成果なども参照しながら取組を進めていく。

 


■音声読み上げなどで特別な支援を要する児童生徒が利用しやすく

デジタル教科書の特性として、文字や写真を拡大したり、ペンやマーカーで簡単に書き込みができることがあげられる。また、音声読み上げや色の変更・反転、ルビなどの機能を使うことで、特別な支援を要する児童生徒や外国人児童生徒が学びを深めることにつながることが予測される。

 


■紙とデジタルの特性を踏まえて使い分けながら活用

デジタル教科書の特性を活かして、ネイティブ・スピーカーの朗読音声を確認して個別最適な学びにつなげたり、児童生徒が書き込んだ内容を電子黒板や大型提示装置に表示してクラス全体で共有するなど協働的な学びにつなげることもできる。こうしたデジタルの特性を踏まえつつ、学校現場では紙の教科書とデジタル教科書を使い分けながら活用している場面も増えている。

 


■紙の教科書と併用しながら英語や算数・数学から段階的に導入

デジタル教科書は2024年度から段階的に導入する方向性が示された、小学校5年生から中学校3年生を対象に「英語」を導入し、次いでニーズの高い「算数・数学」を導入する予定。その際には紙の教科書とデジタル教科書を併用するなど、児童生徒の特性や学習内容などに応じてハイブリッドに活用することが求められる。今後、紙の教科書とデジタル教科書の適性を組み合わせていきながら児童生徒の学習環境を充実させていく。

個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に向けた教科書・教材・ソフトウェアの在り方について

 


【事例報告 神奈川県相模原市 学校図書館予算獲得までの経緯】

相模原市書店協同組合専務理事の中村太郎氏から相模原市の事例が報告された。相模原市書店協同組合は現在11書店からなり、市立図書館への共同受注、市立小中学校への共同販売などを行っている。相模原市の学校図書の予算はピーク時には約8000万円を計上していたが、2021年度は約3200万円、2022年度は当初予算で約2300万円と減少が続いていた。

 


■減少する図書購入費に嘆きの声も

最も予算の少ない学校の場合、9万円弱となり、読書感想文や読書感想画の指定図書を購入すると新しい図書を買う予算はわずかしか残っていない状況となっていた。全国学校図書館協議会が実施したアンケートによると、小中学校1校あたりの図書館購入費は全国の政令市で2番目に低い数字となっていた。

 


■市議会でも減少する学校図書予算について質問があがる

毎年5月に相模原市学校図書館協議会主催で開催される学校図書展示会には少ない予算で工夫して図書を購入するため、過去最高の来場者が集まった。また、橋本ロータリークラブからは橋本地区にある小学校3校・中学校1校に10万円ずつ図書が寄贈された。相模原市議会でも20223月本会議において学校図書予算について計5回にわたり質問があがった。それに対する回答は相模原市立公共図書館が電子図書館サービスを導入するので、それで補っていくということだったが、相模原市内には約5万人の小中学生がいるため、同時にアクセスすると常に閲覧待ちの状態となる。

 


■9月補正予算で9400万円を計上

こうした背景を受け、相模原市教育委員会は20229月の補正予算で約9400万円を計上。これにより市内すべての小・中・義務教育学校が文科省の掲げる図書標準を達成することになる。現在、各学校からの注文に従い、順次納品が行われている。また、20229月の市の定例会議では古い本の更新や継続した予算措置まで言及された。

 


■ボロボロの本が図書標準の冊数としてカウントされる状況に

学校から回収されたボロボロになった本

相模原市書店協同組合では学校が廃棄する図書の回収を行っているが、図書標準を達成している約半数の54校の学校には補正予算がつかなかったため古い廃棄本が出ている状況にあり、平均30年は使用されている本が図書標準の冊数としてカウントされている。厳しい財政状況にあるが、子供たちが活字に親しめるよう、毎年潤沢に図書予算が確保されるべきと中村氏は語る。

 

 

 

 

 


<いま、なぜ「紙」の教科書なのか>

活字の学びを考える懇談会と文字・活字文化推進機構は20229月に『いま、なぜ「紙」の教科書なのか』を発行。デジタル教科書の本格導入に重大な関心を持っている、作家の浅田次郎氏や阿刀田高氏、東北大学教授の川島隆太氏など、作家、学者、新聞・出版関係者、学校図書館関係者、国会議員ら15人が、紙の教科書とデジタル教科書のベストミックスについて意見を述べている。また、2019年度から2022年度までの「学校教育のデジタル化に関するこれまでの動向」も収録。冊子の内容はWebサイトからPDFで閲覧できる。

いま、なぜ「紙」の教科書なのか

 

公益財団法人 文字・活字文化推進機構

学校図書館整備推進会議

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