ベネッセ教育総合研究所は、横浜市の教職員を対象に実施した「教職員の『働き方の改善』と『学びの充実』を両立できる学校づくり調査」の結果を公表した。本調査は、同研究所が帝京大学町支研究室、横浜市教育委員会とともに行っている共同研究プロジェクトの一環として実施した。
調査結果から、「働き方の改善」と「学びの充実」を両立している教員は、同じ仕事でも「仕事のとらえ直し」をすることを通じて時間を減らしたり、新しいことにチャレンジしたり、管理職との日常の対話を「学びの充実」につなげていることがわかった。そして、その両立している教員を支えるのは、助け合いがありながらも、「一人ひとりの考えを生かし、任せる学校運営」であることも明らかとなった。
「働き方の改善」と「学びの充実」を、“両立している”教員は、①仕事のやり方を変えたり、よりやりがいのある仕事に意味づけたりすることなど仕事を工夫している。さらに②働き方改革の先にある「よりよい教育」にむけて、新しいチャレンジをしているという特徴がある。
そしてその“両立している教員”を支える組織の特徴は、まず①働き方の改善が推奨されていること。そして、②個人の想いが反映された目標であり、そのもとで一人ひとりが判断を任されてチャレンジできるように支援されていること。さらに、③助け合い心理的安全性のある職場がそのチャレンジを支え、④日常の対話が学びの場になっていることと言える。
これらの結果をふまえ同研究所は、両立する個人と組織の在り方について次の4つのポイントがあると分析している。
1.「よりよい教育」のための働き方改善
現在「働き方改革」というと、得てして労働時間を短くすることが目的になりがち。もちろん、現状の長時間労働の状況をふまえると、それ自体は実現すべき。しかし両立している教員は、単純に「時間短縮」を目的にやることを減らすことに注力するのではなく、目的を「より良い教育を実現するため」と捉えている。
2.「仕事のとらえ直し」とチャレンジ
その目的のもとで、前例踏襲とはせずに、自分なりの目標を持ったりそれぞれの活動の意味を問い直したりしながら、より効率的で効果的な別の方法を探ったり、新たなやり方を取り入れたり、チャレンジしたりしている。
3.一人ひとりの考えを生かし、任せる学校運営
その改善を支えているのは、①組織の目標が共有されているだけでなく、その策定に全員が参加し、個々の思いが反映されたものになっていること、②その目標に向かうプロセスは組織によって統制されているのではなく、個別のやり方や判断は、教員一人ひとりに任されていることの2点。つまり「自分の考えが反映され、任されている」と教員自身が感じられる学校運営になっていることが大切であるといえる。
4.心理的安全性のある「日常の対話」が学びの場
一人ひとりの考えを生かし任せる組織のもとで、各教員は仕事の意味を問い直しながら、柔軟に新たなチャレンジをしている。これらが同時に学びにつながるのは、心理的安全性のもとで忌憚のない意見を本音で言い合うことができ、その対話から有益なフィードバックが得られるから。結果として、管理職や同僚との日常の対話の中で学べていると考えられる。
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