国立情報学研究所(NII)は11月1日、「先端モバイル駆動研究センター(Center for Advanced Mobile Driven Research:CAMDR)」(センター長:喜連川 優 NII所長)を新設した。NIIは本センターを拠点として、NTT東日本と共同研究を運営していく。ローカル5Gの高性能なモバイル機能をもとに、DX推進などに役立つ革新的な価値創成プラットフォームの創出を目指す。
NIIとNTT東日本は、11月1日付で共同研究契約を締結し、この共同研究を運営する拠点として、NIIに共同研究部門の研究施設である「先端モバイル駆動研究センター」を設置した。本センターには、両者以外に、センター発足当初に東北大学、東京大学、京都大学、広島大学からも研究者が参加し、今後もより多くの機関の研究者が参加する予定だ。
本センターで実施される共同研究は、超高速・超低遅延・多数同時接続といった特長がある第5世代移動通信システム(モバイル5G)を活用し、新たな価値創成を促進する革新的なプラットフォームを生み出すことを目的としている。
モバイル5Gは、我が国の経済成長に不可欠なSociety 5.0 を支える基幹インフラとして、様々な分野での活用が期待されており、公衆モバイルネットワークに加え、ローカル5Gと呼ばれるプライベートモバイルネットワークが制度化されている。ローカル5Gは、大学や企業、自治体等の様々な運用主体が自らの建物や敷地内でモバイル5Gの電波を占有できる環境を構築できるため、様々な分野における斬新な活用やデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進などが期待されている。
本共同研究では、産業界や大学等の連携により、特にローカル5Gのユースケースの蓄積や高度なアプリの開発・活用を通じ、新たな価値を生み出す革新的な共用プラットフォームの創出を目指す。
NIIでは、世界一の高密度超高速400Gbpsネットワーク「SINETサイネット6」の運用を今年4月より開始。SINET6には、1,000の大学や研究機関等が約1,500回線で接続しており、このうち900回線以上が超高速(10Gbps, 40Gbps, 100Gbps, 400Gbps)の回線となっている。そのため、モバイル5Gの理論上の最高速度である10Gbpsの性能を最大限に活用できるバックボーンへの接続環境がすでに整っている。
2018年12月から開始した「モバイルSINET」(商用モバイル網に学術専用の仮想モバイル環境を作りSINETのL2VPNと結合させた仮想網)において蓄積してきた様々なユースケースを活用して技術の適用範囲を広げるなどにより、ローカル5G研究に得られた知見を有効に利用する予定。
今回の共同研究では、SINET6の高速性やこれまでのモバイルSINETでの経験を最大限に活用しつつ、今後展開が期待されるローカル5Gによる電波の占有、アンテナの動的指向制御、上り方向通信帯域割合変更などを可能とする高性能で高機能なモバイル環境を想定し、数多のユースケースや高度なアプリの開発・活用を進める。これによりローカル5G環境を有効に活用するための次世代の革新的な共用プラットフォームの創出を目指す。