豊橋市教育委員会(愛知県)は8月、市内の小学生を対象に、英語を使ってさまざまな教科を学ぶイマージョン体験授業「スーパー・イングリッシュ・チャレンジ」を初実施した。体験授業の視察と、市内の小中学校教員を対象とした講話、豊橋市立八町小学校教員との意見交換を行ったワールド・ファミリー バイリンガル サイエンス研究所(以下、IBS)が、視察の概要や考察についてのレポートをWebに公開した。
豊橋市立八町小学校は、2020年度より、国語と道徳以外の教科を、主に英語を使って学ぶ「イマージョン学級」を開設した。公立小学校によるイマージョン教育(※)の導入は、国内初の取り組みであり、開始から今年で3年目を迎える。
IBSは、イマージョン教育の研究を行う原田哲男教授(早稲田大学教育・総合科学学術院/IBS学術アドバイザー)とともに、研究活動および社会貢献活動の一環として、2021年度から計3回の授業視察や意見交換を実施してきた。
今回、市内の小学生を対象としたイマージョン体験授業「スーパー・イングリッシュ・チャレンジ」は、豊橋市教育委員会および豊橋市小中学校英語企画委員会が主催。八町小学校の取り組みを地域に還元することを目的とした、初めての試み。
授業は、八町小学校の日本人教員とNET(ネイティブ・イングリッシュ・ティーチャー)が担当し、市内の小学5〜6年生を対象に参加希望者を募り、2日間にわたって延べ114人の児童が参加した。約20名ずつのグループに分かれ、教室ごとに2教科を体験した。
(※)イマージョン教育:バイリンガル教育の一つの形態。学校の教科を二つの言語(母語ともう一つの言語)で指導し、両方の言語を読み書きレベルまで育て、さらに二つの社会文化を受容できることを目的とする。
参加児童のほとんどに共通しているのは、英語を使ってほかの教科を学んだことはないという点。参加後のふりかえりカードを見ると、ほぼ全員が「楽しかった」と感じていたことがわかった。
英語で授業を受けた感想に登場した最も特徴的な形容詞は「楽しい」でした。次いで「難しい」、「わかりやすい」、「おもしろい」。「難しかったけど、楽しかった/おもしろかった」というコメントは多く、英語を使って教科を学ぶことは難しく感じたにもかかわらず、最終的に理解できたことでポジティブな感想を持っていることがうかがえる。
「英語を使った」という実感を持った児童や、「英語への興味が湧いた」という児童もいたことがわかった。
体験授業終了後は参観した教員を対象に、イマージョン教育は「特別」ではなく、英語教育のあるべき姿であること、新学習指導要領の趣旨を十分に満たしていることなどについて、原田教授が講話を行った。
八町小教員との振り返りでは、「八町小学校の子どもたちの発言や態度に影響されて、1時間の授業で子どもたちが大きく成長した様子が見られた」「参加した児童は今後、良い学習者モデルになると思われる」など活発に意見交換が行われた。
最後に、原田教授が今後の課題として「英語力の異なる児童が混在する中で、どのように授業を行うか」「どのように指導法や教具、教材を引き継ぐか」を挙げ、海外の実践例などを紹介した。
イマージョン教育は、新学習指導要領とかけ離れた教育アプローチではなく、むしろ教育全体の質を上げるために重要とされる考え方に沿っており、八町小学校のイマージョン教育は、地域のあらゆる子どもたちのための、地域のあらゆる学校が実践できる教育である可能性が示された。
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