ユニセフ（国連児童基金）が9月14日に発表した新しい報告書『方程式を解く：数学を学ぶ子供たちのために(原題：Solving the equation: Helping girls and boys learn mathematics)』によると、世界中で女の子は男の子に比べて数学で遅れをとっており、その根本的な原因は性差別とジェンダーに対する固定観念であると指摘している。
教室の後ろで算数の授業を受ける10歳のフレシュタさん。(アフガニスタン、2022年6月撮影) © UNICEF_UN0666832_Bidel
本報告書では、100以上の国や地域を対象とした新しいデータ分析が紹介されている。
報告書によると、男の子が数学のスキルを身につける確率は、女の子の最大1.3倍であることが判明。
女の子は生まれつき数学を理解できないという、教師や親による、そして同世代の仲間の間でもしばしば持たれる否定的なジェンダー規範や固定観念が、この格差の一因であり、このことは女の子の自信を失わせ、失敗を招くと報告書は指摘している。
ユニセフ事務局長のキャサリン・ラッセルは、「女の子は男の子と同じように数学を学ぶ能力を持っています。彼女たちに欠けているのは、これらの重要なスキルを習得する平等な機会なのです」と述べる。「私たちは、女の子の足を引っ張るジェンダーの固定観念や規範を払拭し、すべての子供が学校生活や人生で成功するために必要な基礎的スキルを学べるよう、もっと努力する必要があります」。
数学のスキルを学ぶことは、結果として記憶力、理解力、分析力を強化し、子供たちの創造力を向上させると、報告書は指摘。来週開催される国連の教育変革サミットを前に、ユニセフは、数学などの基礎学習を習得していない子供たちは、問題解決や論理的推論といった重要なタスクの遂行に苦労する可能性があると警鐘を鳴らしている。
東部アマンのユニセフが支援するマカニセンターで、マズーン・メレハンユニセフ親善大使から算数を教える10歳のシャヘドさん。(ヨルダン、2022年8月31日撮影) © UNICEF_UN0696284_Matas
この報告書の対象となっている34の低・中所得国のデータを分析したところ、女の子が男の子に遅れをとっている一方で、小学4年生の4分の3が基礎的な計算能力を身につけていないことも明らかになった。中・高所得国79カ国のデータでは、15歳の生徒の3分の1以上が、数学の最低限の習熟度に達していないことも示されている。
世帯の豊かさもまた、決定要因となっている。報告書は、最も裕福な家庭の子供たちは、最も貧しい家庭の子供たちに比べて、4年生になるまでに数的能力を身につける確率が1.8倍であると記している。また、就学前教育や保育プログラムに参加している子供たちは、そうでない子供たちに比べて、15歳までに数学の最低限の習熟度に達する確率が最大で2.8倍にもなる。
また、新型コロナウイルス感染症パンデミックの影響が、子供たちの数学の能力をさらに悪化させている可能性が高いことも指摘している。さらに、これらの分析は、現在学校に通っている女の子と男の子に焦点を当てており、女の子が男の子よりも学校に通えない可能性が高い国々では、数学の習熟度における全体的な格差はさらに広がっていると見られる。
ユニセフは各国政府に対して、すべての子供たちに質の高い教育を提供することを約束するよう求めている。 すべての子供たちが学校に再入学して通い続けられるようにし、補習の機会を増やし、教師を支援して必要なツールを提供し、そしてすべての子供たちが学ぶ準備ができるよう学校が安全で協力的な環境を提供するために、新たな努力と投資を求めている。
「子供たちの世代全体の学習が危機に瀕している今、口先だけの約束をしている場合ではありません。すべての子供のための教育変革に取り組むために、私たちは今すぐ行動を起こす必要があります」(ラッセル)
