2022年4月、学習指導要領の改訂により、49年ぶりに高等学校の地理が必修化されたが、奈良大学は地理授業へのGIS(地理情報システム)の導入を支援し、令和4年度 奈良大学学校教員研修支援オープン講座「GIS講座」を8月下旬に動画で配信する。なお、「GIS講座」は対面での開催を予定していたが、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、動画配信に変更となった。
■専門でない教員が地理を教えることに
必修となった「地理総合」では高校生全員が実践的な社会的スキルとしてのGISを学び、実際に利用することが求められている。しかし地理歴史科教員のうち地理が専門の教員は2割ほどしかおらず、専門でない9割の教員も地理を教えることになった。
■GISを教えることが教員の負担に
新たに始まった「地理総合」ではGISを活用することが学習の柱のひとつとなっている。日本では阪神・淡路大震災を契機にGISに関する本格的な取組が始まり、今やGPS等の位置情報と合わせて社会基盤のひとつとなっている。しかし、地理を専門としない地歴科教員がGISを教えることで、多忙な教員の負担増と戸惑いにつながっている。
■平成28年からGIS講座を開講
奈良大学地理学科では、夏季休暇中の教員の自主研修の充実と教材研究の支援を目的に、平成28年より「GIS講座」を開講してきた。講義は地理学科の教授が担当。学生が補助に入り、操作に不慣れな受講者へもきめ細かいサポートを行っている。
■前半は地理院地図の基本的な使用方法を指導
今年は地理総合の教科書に沿ってGISの導入・活用方法を実例を交えて紹介。前半は木村圭司教授が、地理院地図の基本的な使用方法を教え、各地の地形の特徴を概観、さらに防災情報などを地図と重ね合わせて表示することや3Dや地形の断面図などの作成の仕方を伝える。
■後半は無料ソフトMANDARAを使用して主題地図を作成
後半は、酒井高正教授が無料ソフトMANDARAを使用して、地域統計データから国、都道府県、市区町村単位の主題地図を作成。さらに地域調査に役立つ諸データから地図を作成する方法も紹介する。
■半数の高校が来年に先送りにしたGISの授業への導入
今年度、必修となった地理総合だが、実際にGISの授業への導入は全国の高校で約半分、奈良県の県立高校では37校中8校にとどまり、次年度に先送りされているもよう。こうした現状を受け、GIS研究・教育を続けてきた地理学科では、高校教育の現場を支援したいと考えている。
<奈良大学学校教員研修支援オープン講座 開催概要>
開催日時:8月下旬
開催形態:動画配信
受講料:無料
主催:奈良大学
後援:奈良県教育委員会
<プログラム>
講座1.地理院地図の使用方法について
主に地理院地図を使用。まず地理院地図の基本的な使用方法を学ぶ。そして、地図の表示を行い、各地の地形の特徴を概観する。さらに、防災情報など各種情報を地図と重ね合わせて表示することや、3D(山などの立体表示)、地形の断面図などを作成する。また、スマホなどで簡便にみられる地図も紹介する。
講師:奈良大学 文学部 地理学科 木村圭司教授
(専門分野)気候学、地理情報システム、環境問題
講座2.主題図の作成方法について
GIS既導入校で利用実績の多い無料ソフトMANDARAを主に使用。まず、Excelで用意した地域統計データから国、都道府県、市区町村単位の主題地図を作成する。さらに、町丁目・字等の統計データや、各種施設をはじめとする地点データなど、地域調査に役立つ諸データから地図を作成する方法も紹介する。
講師:奈良大学 文学部 地理学科 酒井高正教授
(専門分野)人口地理学、地理情報システム、地域統計