奈良県立奈良高等学校の生徒と京都大学理学部の学生により構成された「高校生-大学生混成チーム」が挑んできた「煤(すす)の形成プロセス追究」の研究成果の一部をまとめた英語論文が海外学術出版大手「Springer Nature」の査読付き学術誌「Analytical Sciences」に掲載された。
■誰も追究したことのない挑戦的なテーマを掲げ
奈良高等学校の生徒は「誰も追究したことのない挑戦的なテーマ」を中心に研究テーマを据え、大学やその他研究機関、地域企業とも連携しながら取りくんできた。「煤形成プロセス追究」においても京都大学理学部と連携して進めてきた。
■奈良墨を未来へ継承していくために
奈良墨は奈良の伝統的工芸品の一つであるが生産量は減少の一途をたどっており、産業・技能伝承の面で存続が危惧されている。奈良墨の主原料は「煤」であり、煤の品質が墨の良し悪しを決めるが、煤の形成は数百年来、経験則に依存しており、煤の形成についての先行文献も乏しく、概念的なモデル提示しかないという現状だった。
■煤が炎の中でどのように形成されるかが判明
今回、実際の奈良墨製造現場と連携し、「煤の形成プロセス」の追究を進めた。その結果、煤が炎の中のどこでどのように形成されていくかという一端が物理的・科学的解析から判明した。
■煤形成には方向性が重要という結論に
それによると、煤は炎の下部でサイズや形態など形成されており、炎の下部でも煤の酸化が起こっていることが分かった。従来から言われてきた「炎の上部へ行くほど」という方向性ではなく、「炎内部から外部へ行くほど」という方向性が煤形成には重要であることが解き明かされた。
■「煤(すす)の形成プロセス追究」の研究成果はオンラインで先行掲載
今回の研究成果はオンライン版の「Analytical Sciences」に先行掲載されており、追って冊子版でも掲載される予定。
学術誌「Analytical Sciences」Analysis of soot formation in a rapeseed oil-fueled(英文)