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サウナ繰り返し入浴時のヒートショック予防に向けて研究~ 八戸高専2年の石橋輝さんと古川琢磨助教の研究グループ

2022年7月27日

5月18日から20日まで長良川国際会議場で開催された「第59回日本伝熱シンポジウム」において、八戸工業高等専門学校 機械システムデザインコース工学専攻2年の石橋輝さんと古川琢磨助教の研究グループは、サウナ入浴時の人体周囲の伝熱量を定量的に明らかにしたことを発表。また従来広く使用されている生体温熱モデルに改善の余地があることを示したことにより、日本伝熱学会優秀プレゼンテーション賞を受賞した。


■サウナで繰り返し入浴した際のヒートショック予防に向けて研究

石橋さんと古川助教の研究グループはサウナに繰り返し入浴した際のヒートショック予防の科学的提言に向けて研究を行ってきた.具体的には地元銭湯のサウナ室でのフィールドワークやコンピュータシミュレーションによるサウナ室内部、人体周辺の伝熱現象の解析を行い、サウナ入浴時の人体深部温度の上昇量を評価した。

 


■従来の生態温熱モデルでは人体深部温度を正確に評価できない

その結果、従来提案されてきた生体温熱モデルではサウナのような極限的高温環境の人体深部温度を精度良く評価できず、モデルパラメータの調整やモデルの高度化が必要性であることを明らかにした。

 


■リラックス効果が高いとされてきた温度差が高い繰り返し入浴

近年、サウナ入浴、水風呂、休憩の動作を繰り返し行う、サウナ繰り返し入浴による高いリラックス効果が注目されている。一般的にはサウナ入浴と水風呂での温度差が高いほど、休憩時のリラックス効果が高くなることが示唆されており、近年のサウナブームでは100℃以上を超えるサウナや、10℃以下の水風呂も散見される。

 


■急激な温度の変化はヒートショックの危険も

しかし、こうした水風呂とサウナの熱環境は人体の皮膚・深部温度に急激な温度差を生成させることになり、高齢者やサウナ入浴初心者のヒートショック事故の危険性が非常に高いと考えられる。


■適した入浴方法の提案に向けて求められた高精度なモデルの開発

これまでヒートショック予防を考慮した、繰り返し入浴方法は具体的には提案されてこなかったが、こうした入浴方法を提案するためにも、サウナ繰り返し入浴のような急激な温度変化をもたらす熱環境での人体内外の温度分布の正確な予測のため高精度なモデルの開発が求められた。

 


■従来からのモデルの適用可能性を評価した上で新たなモデルの必要性を確認

石橋さんと古川助教らの研究グループでは従来広く使用されている生体温熱モデルのサウナ入浴時に対する適用可能性について評価した上で、シミュレーションを行い、新たなモデルの必要性を確認した。

 


■サウナ室のふく射平衡温度を測定

石橋さんは本研究プロジェクトに2020年から参加。サウナ室内部のふく射伝熱量を評価するためにサウナ室のふく射平衡温度を測定。サウナ室内部がふく射環境的に56℃程度冷却されていることを示唆した。これまでサウナ室内部のふく射平衡温度は測定された報告例はなく、初めての測定例となった。

 


■赤外線ヒーターを用いたサウナ室内部の熱バランスを改善する必要が

また、人体を模擬した解析メッシュを使用してシミュレーションを行い、人体周辺におけるふく射伝熱量の定量的な算出を行った。シミュレーションの結果、赤外線ヒーターといった指向性のあるヒーターでは人体周辺でふく射起因の局所温度は1020℃程度も人体部位によって変動することが明らかとなった。この結果から赤外線ヒーターを用いたサウナ室内部の熱バランスを改善する必要性があることが明らかとなった。


■正確な予測にはモデルの改良が必要

さらに、共同研究者の西館来夢さんとシミュレーションで導出されたふく射伝熱量を使用して、人体内部の深部温度の時間変化予測を行った。予測には生体温熱モデルのモデルパラメータを調節することにより、実験結果をある程度再現可能であることが明らかとなった。しかし定量的には一致しておらず、モデルの改良が必要であることが示された。


<今後の展望>

サウナ繰り返し入浴中での人体深部温度、皮膚温度の実験および数値解析の比較から従来の生体温熱モデルプログラムでは休憩時の深部温度の遅延を予測することは困難であることが明らかとなった。従来の生体温熱モデルは、人体を皮膚と深部の二層しか模擬していないため深部温度変化の遅延を再現するには、筋肉や深部層などの中間層をモデル化する必要性があると考えられる。

今後は多層モデルを考慮した温熱プログラムを使用して、繰り返し入浴中の深部温度変化量をより定量的に評価する予定。これらモデルを構築、応用することにより、性別、体重、年齢、身長等に応じた個人差も考慮した深部温度予測手法の開発を目指す。そして、万人に対応可能なヒートショック予防法の科学的提言を行っていく予定。

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