埼玉県戸田市教育委員会と認定NPO法人カタリバは、オンラインを活用して不登校・長期欠席の子供たちの学びの充実を目指す連携協定を7月26日(火)に締結した。この連携を通して学びの選択肢の充実化・多様化を図ることで、より包括的に、子供たち一人ひとりのニーズに合った学びを実現していくことが目指される。
■不登校の児童生徒は過去最多の約29万人に
2020年度、文部科学省による調査で日本の小中学校において、不登校の児童生徒をふくむ「長期欠席者」の数が、過去最多の約29万人に上ることが明らかになった。このような子供たちをサポートするために自治体では「不登校特例校」や 「教育支援センター」の設置が努力義務とされている。
■公的支援の不足が課題
しかし、その設置率はまだ6割程度にとどまっている。また、不登校の児童生徒のうち実際に相談や指導につながることができていない子供が3割以上にのぼるなど、公的支援が不足しているという課題も見えてきている。
■自治体と連携してオンラインを活用して支援
カタリバでは、2015年より不登校の児童生徒への支援事業を開始。2021年度からは学校に通わない/通えない子供たちへも学びの機会や居場所を届けられるよう、自治体と連携してオンラインを活用した支援プログラムを実施した。
■オンラインを通して一人ひとりに合わせた学びや居場所を届ける
オンラインの学び場(room-K)や不登校の子供を持つ保護者が悩みをオンラインで相談できる窓口などを立ち上げ、自治体と連携して、オンラインを通して一人ひとりに合わせた学びや居場所を届ける仕組みを模索している。
■オンラインならば活動に参加できる子供も
カタリバが利用者に対して行ったアンケートからは、1年以上学校に行くことができていなかった子供の約8割が、オンラインならば週1回以上、活動に参加できていることがわかった。また、「オンライン学習の場で新しい興味関心をみつけ将来の夢を語るようになった」など前向きな声も届き始めている。
■戸田型オルタナティブ・プラン」を策定
また、埼玉県戸田市では不登校支援の指針となる「戸田型オルタナティブ・プラン」を策定。「戸田型校内サポートルームの設置」「不登校対策ラボラトリーの設立」「社会に開かれたネットワークの構築」を3つの柱として、学校内のサポートや相談窓口の設置だけでなく、社会全体で子供の学びを支える包括的な支援のかたちを模索している。
■オンライン不登校児童生徒支援の仕組みを構築
今回の連携では、これまでのリアルな場を中心とした支援の枠組みの中では、つながることが難しかった”家から出ることのできない子どもたち”へのアプローチを強化。戸田市教育委員会とカタリバが連携してオンライン不登校児童生徒支援の仕組みを構築することで、より包括的な支援体制の実現を目指す。
<具体的な取組内容>
①個別の学習相談(アセスメント等)を踏まえた個別サポート計画の作成
②メンターの派遣等による学習等支援
③デジタルツールを活用した学びプログラムの提供
④効果的な支援方法等の研究開発を目的としたデータ分析
※その他、取組を円滑に実施するため、実施時期、実施方法、その他の具体的な事項については双方が協議して定める。
【戸田市教育委員会 戸ヶ﨑勤教育⻑ コメント】
戸田市では、これまでも生徒指導を科学することなどを通して、児童生徒一人ひとりの多様なニーズに応じた教育の充実に努めてきました。今回の連携により不登校児童生徒をはじめ、これまで支援が届きにくかった児童生徒にとって、新たな学びの場、新たな居場所となることを期待しています。戸田市では、この連携を大きな推進力にして引き続き、誰一人取り残されない教育の実現に努めてまいります。
【認定NPO法人カタリバ代表理事 今村久美氏 コメント】
長期的な視点でいち早く教育改革に取り組まれている戸田市教育委員会と、新しい学びの在り方を模索していけることを心から嬉しく思います。不登校の子供たちが抱える事情は本当に十人十色ですが、カタリバが開発してきたオンライン不登校支援の知見を活かして、ひとりでも多くの子供たちへ新しい学びの選択肢を提供し、一人ひとりが自分らしく学び将来を切り開いていける社会を目指します。