第一印象で自分に似ている顔ほど信頼できると評価することが、大阪大学大学院生命機能研究科 中野珠実准教授らの研究グループにより発表された。
■自分と他者を合成した顔には高い信頼性となる
人は見知らぬ顔を短時間見ただけで様々な印象評価をする。これまで自分と他者を合成した顔に対して信頼性を高く評価することが知られていた。しかし、大勢の顔の類似度を客観的に評価することが難しいため、実際の社会で見知らぬ人の顔の印象評価をするときに、自分に似ている顔かどうかが信頼性の評価に影響を与えるかは不明だった。
■人工知能を用いて顔の類似度を客観的に算出
今回、中野准教授らは最先端の顔認識の人工知能を用いて大勢の人々の顔の類似度を客観的な数値で算出。信頼性評価のスコアとの関係を調べることで、同性同士の第一印象評価では、自分に似た顔ほど信頼する傾向があることを実証した。これにより、P2Pレンディングなどインターネット上での初対面同士の円滑なマッチング促進への応用が期待される。
■大学230名で顔の類似度の信頼性に関する第一印象を調査
中野准教授らの研究グループでは、高い顔認識性能を持つ最先端の深層ニューラルネットワークを活用することで、日本人大学生230名(男性115名、女性115名)の顔の類似度を客観的な数値で算出し、信頼性に関する第一印象のスコアとの関係性を調べた。
■自分に似ているかが信頼性を判断する重要なファクターとなる
その結果、同性の顔の印象を評価するときは、自分に似ている顔ほど信頼性を高く評価する傾向があることがわかった(図:赤線)。一方、異性の顔の印象を評価するときには、自分に似ているかどうかは、信頼性の評価に影響を与えなかった(図:青線)。この研究結果は実生活における社会的判断において、「自分に似ているか」が重要なファクターになっていることを実証するものとなる。
■人がどのような社会的判断戦略を用いているかを解明することに貢献
この研究成果により、信頼性の第一印象が重要となるP2Pレンディングの相手探しやSNSのメンバーマッチングにおいて、顔の類似度に基づいたパーソナル提案の技術への応用が期待される。また、実社会において人がどのような社会的判断戦略を用いているかを解明することに貢献する。
【中野珠実准教授 コメント】
顔が似ているか」という判断は実はとても難しい。目や口などのパーツが似ているのか、位置関係が似ているのかなど、どこに注目するかで変化してしまう。一方、顔認識のニューラルネットワークはバーコードを作成するかのように、顔写真を入力すると、その顔の特徴を数値ベクトルで表現できる。それを従来の心理評価と組み合わせることで、今まで実証が難しかったことが検証できるようになった。
【特記事項】
本研究成果は2022年7月2日に英国科学誌『Humanities and Social Sciences Communications』(オンライン)に掲載された。
タイトル:You trust a face like yours.
著者名:Tamami Nakano, Takuto Yamamoto
DOI: https://doi.org/10.1057/s41599-022-01248-8