バイテク情報普及会が高校生に「植物バイオテクノロジー」と「持続可能な農業」について、より深く学び考えるきっかけとしてもらうことを目的に開催する「高校生科学教育大賞」。第6回目となる今回、その最優秀賞には京都府立桂高等学校が選ばれ、活動費用として100万円が贈られた。
■バイオテクノロジーの重要性を理解してもらうため様々な活動を展開
バイテク情報普及会は、持続可能な農業の実現や食料の安定供給への貢献を念頭に、バイオテクノロジーの重要性を理解してもらうため、様々な活動を行っている。その一環として2017年に「高校生科学教育大賞」を創設した。
■厳正な審査の結果、受賞校が決定
第6回となる今年は、全国各地の高等学校から合計13件の応募が寄せられた。小泉望氏(大阪公立大学大学院 農学研究科 教授)、小島正美氏(食生活ジャーナリストの会・前代表)、高島賢氏(農林水産省 消費・安全局 農産安全管理課 審査官)の外部委員及びバイテク情報普及会の会員企業から成る選考委員会による、厳正な審査の結果、その活動を支援する授賞校が決定した。
■活動資金として100万円を給付
最優秀賞には、京都府立桂高等学校の「懸崖菊優良品種の茎頂培養による保全と重イオンビームによる新品種の育成」が選ばれ、バイテク情報普及会より活動支援金として100万円が給付される。
■生産農家が1軒だけになった懸崖菊をバイテクで救う
京都府向日市の特産品である懸崖菊(けんがいぎく)の生産農家が1軒だけになった状況をバイオテクノロジー技術で救おうとする着想が注目された。持続可能な農業と植物バイオテクノロジーの両方に関連する充実したテーマで、かつ地域への貢献が期待できる点が高く評価され、最優秀賞に輝いた。
■優秀賞の3校には10万円を給付
また、優秀賞には兵庫県立伊川谷北高等学校の「ゲノム編集トマトを用いた分子生物学実験の教材開発とその実践」、広島県立西条農業高等学校の「農業女子が昆虫を育てて食べる!~広島の特産物残渣を餌にした食用昆虫,宇宙へ~」、お茶の水女子大学附属高等学校の「メタンガス排出量を減少させる効果のある紅藻カギケノリによる地球温暖化対策の促進」の3校が選ばれ、各校に支援金として10万円が給付される。
<第6回高校生科学教育大賞 授賞校一覧>
◇最優秀賞(申請金額の全額となる100万円を支援)
京都府立桂高等学校(京都府京都市)
懸崖菊優良品種の茎頂培養による保全と重イオンビームによる新品種の育成
選考理由:京都府向日市の特産品である懸崖菊(けんがいぎく)の生産農家が1軒だけになった状況をバイオテクノロジー技術で救おうとする着想が非常に優れている。持続可能な農業と植物バイオテクノロジーの両方に関連する充実したテーマで、かつ地域への貢献度が高い。すでに理化学研究所や京都府立大学に協力を依頼し、重イオンビーム照射の段取りをつけているなど、活動計画が実現的である点も評価された。
◇優秀賞(申請金額の一部として10万円を支援)※順不同
兵庫庫県立伊川谷北高等学校(兵庫県神戸市)
ゲノム編集トマトを用いた分子生物学実験の教材開発とその実践
選考理由:今注目を浴びているゲノム編集トマトの栽培を教材にするアイデアがすばらしい。実験だけではなくゲノム編集についてのディスカッションも計画されており、高校生がゲノム編集や遺伝子組み換え作物を理解するための教材のモデルになることが期待される。
広島県立西条農業高等学校(広島県東広島市)
農業女子が昆虫を育てて食べる!~広島の特産物残渣を餌にした食用昆虫,宇宙へ~
選考理由:食品残渣を用いた飼料を使い食用コオロギを育てるという、食品リサイクルと世界規模のタンパク質不足という2つの課題を解決しようという着目点が秀逸である。育てたコオロギを宇宙食として提案するなど、発想もユニークである。
お茶の水女子大学附属高等学校(東京都文京区)
メタンガス排出量を減少させる効果のある紅藻カギケノリによる地球温暖化対策の促進
選考理由:CO2より温室効果が高いとされるメタンガスを減少させることに注目した、環境保護の観点からも評価できる研究。カギケノリの認知度アップを応援したい。
◇審査員特別賞(図書カード2万円分を進呈)※順不同
広島県立西条農業高等学校
畜産現場における竹粉の利用に関する研究~敷料での利用から堆肥としての利用まで~
北海道中標津農業高等学校
微生物の力で生産性向上!~光合成細菌を用いた地場産野菜の生産~
山形県立村山産業高等学校
“高校の山・田畑・牧草地”に眠る微生物資源を活用して環境負荷低減型農業を実現する!