栃木県那須町と認定NPO法人みんなのコードは教育課程特例校の仕組みを活用した特色ある教科づくりを後押しできるよう、「NAiSUタイム」での取組や授業事例をわかりやすくまとめた2021年度報告書「特色ある教科づくりとプログラミング教育」を公表した。
■コンピュータ関連の取組を行っている教育課程特例校は70件
教育課程特例校制度は、文部科学大臣が学校教育法施行規則第55条の2等に基づき指定する学校において、学校又は地域の実態に照らし、より効果的な教育を実施するための特別な教育課程を編成することを認める制度。文部科学省が公表している「教育課程特例校一覧」(2022年4月時点)によると、教育課程特例校に指定されている学校は1823件。そのうちプログラミングやコンピュータ関連の取組を行っている学校は70件となっている。
■「NAiSU(ナイス)タイム」を全町立小中学校に設置
那須町では2019年度より、将来の地域の発展を担う人材の確保を目指す一環として、文部科学省「教育課程特例校」の指定のもと、プログラミング・人間関係・防災教育を学ぶ、全国でもユニークな教科「NAiSU(ナイス)タイム」を全町立小中学校に設置し、プログラミング教育にも積極的に取り組んできた。
■プログラミングを含むテクノロジー教育の取組を紹介
報告書で紹介されているプロジェクトは、那須町とみんなのコードが協働し、那須町ならではの地域の課題を題材に、プログラミングを含むテクノロジー教育に各学校が取り組めるよう、2か年にわたり推進連携事業を実施するものとなる。
■プログラミング教育推進校の2校を重点的に支援
2021年度はプログラミング教育推進校の指定を受けた東陽小学校と那須中学校を重点的に支援。前期は教員向け研修会を実施し、後期から授業支援に携わった。
<東陽小学校での支援>
4年生と5年生の授業では、学年を横断した実践を行った。5年生はスクラッチを使ってタイピングゲームを作成。4年生は5年生が作ったタイピングゲームをもとに問題を見つけ、機能を追加する作業を行った。このように連携することで、下級生が抵抗感なくプログラミングに取り組めるよう工夫して授業を展開した。
<那須中学校での支援>
生徒たちは教員から教わるだけではなく、教室内を自由に移動し、クラスメイトと教え合いながら学習を進めた。また、苦手意識を持っている生徒を集め、講義形式の指導も同時に行い、それぞれにあったプログラミングの授業を展開。授業後には生徒を対象にアンケートを実施した。コンピュータの大切さについては95.1パーセント、楽しさに関しては90.2パーセントの生徒が肯定的な考えを持っていた。一方、コンピュータを使って身の回りの問題を課題解決ができると認識している生徒は41.5パーセントだった。このことから今年度は基礎的な内容だけではなく、アプリケーションの作成にも挑戦し、テクノロジーを使って、生徒たちが身近な問題を解決できる授業を実践する。
<2022年度の展開>
【那須町全体を通して】
町全体へ取組を広げられるように実践事例の周知と年間指導計画に沿って計画的な指導を行っていきたいと考えている。また、NAiSUタイムの他の柱である防災プログラム、人間関係プログラムや地域学習とも関連づけた課題を扱い、探求的な学習をサポートしていく。
【小学校】
教員が小さな課題解決学習の過程を体験し、自らの授業に取り入れていけるような研修を進めていく。さらに、授業準備を効率的に行えるよう、これまで実践した授業の構成をクラウド上でテンプレート化し、簡単にアレンジして実践できる環境を整えていく。
【中学校】
重点校である那須中学校での取組を継続しつつ、外部からのサポートなしでも教員が授業を進められるようにサポートしていく。加えて、近隣中学校でも同様の実践ができるように支援していく。
<栃木県那須町 平久井好一教育長 コメント>
本プロジェクトは、みんなのコードとセールスフォース・ジャパンに、那須町が教育課程特例校「NAiSUタイム」で取り組んできた「特色ある教科づくりとプログラミング教育」を支援いただくことができ、大変嬉しく思っている。地方においては、プログラミングやIT教育に恵まれないことが多く、町を上げて力を入れていかないといけないという課題意識を持っています。「先行き不透明なこれからの時代にあたり、主体的でたくましく生きていける人材を育てたい」という那須町が掲げているビジョンをもとに、本プロジェクトを通じて、子供たちがテクノロジーでより豊かな那須町を作る、未来の担い手になることを期待しています。