高等学校で「地理総合」が2022年度から必修化になったことに伴い、奈良大学文学部地理学科の教員を外部講師に迎え、同大の学生がサポートとなり、奈良県立大学附属高等学校の1年生を対象にGIS(地理情報システム)出張授業を6月6日(月)に実施。さらに実際に電子地図を活用して地形や生活環境の関係について考察する授業が6月13日(月)に行われる。
■地理が専門の教員が不足が課題に
必修となった「地理総合」では、高校生全員が実践的な社会的スキルとしてのGISを学び、実際に利用することが求められる。しかし、地理歴史科の教員のうち、地理が専門の教員は約2割程度に過ぎない。高校生全員が「地理総合」を履修するために、残り8割の地理歴史科教員が地理を教えることになる。
■需要が高まるGISに関する技術
GIS は地理的位置を手掛かりに、位置に関する情報をすべて地図上に表示し、高度な分析や迅速な判断を可能にする技術。日本では阪神・淡路大震災を契機にGISに関する本格的な取組が始まり、GPS等の位置情報と合わせて社会基盤のひとつとなっている。
■地歴科教員がGISを教えることが多忙の一端に
しかし現状では、地理を専門としない地歴科教員がGISを教えることで、多忙な教員の負担増と戸惑いにつながっている。奈良大学地理学科の木村圭司教授へも、計画の立て方が分からない、指導するためのPCが用意できないなど、学校現場の声が寄せられている。
■地理の教員を目指す大学生が授業をサポート
こうした背景を受け、奈良大学地理学科では「地理総合」が始まって以来、初めての出張授業を実施。出張授業では木村圭司教授と地理の教員を目指す奈良大生3人が、奈良県立大学附属高等学校の1年生を対象にGIS授業が行われる。
■地理院地図を活用して学校付近の地形の断面図を作成
出張授業当日は、タブレットPCで地理院地図を活用して、学校付近の地形の断面図を作成。断層や崖などの地形、道路の断面図、ハザードマップなどを地図上で重ね合わせ、なぜそういう地形ができたのかを考える。
■高校生に地理学への関心を持ってもらうために
断面図やハザードマップなど様々な地図を重ねることで、地形と生活環境の関係を発見し、地理の魅力に触れる。これを機会に、地理学の重要性に気づき、地理学への関心を持ってもらうことがねらいとなる。
<出張授業概要>
開催日:2022年6月6日(月)・13日(月)
開催場所:奈良県立大学附属高等学校 1年生教室
内容:タブレットPCで地理院地図を活用して、学校付近の地形の断面図を作成し、断層や崖などの地形、道路の断面図、ハザードマップなどを地図上で重ね合わせ、なぜそういう地形ができたのかを考える。
※出張授業は6月6日(月)と6月13日(月)に行われるが、6日は通常講義のみで実技は行わない
講師:奈良大学 文学部地理学科 木村圭司教授、地理学科学生3人(サポート役)
参加者:奈良県立大学附属高等学校 1年生
担当教員:奈良県立大学附属高等学校 植田久美代教諭