VR(仮想現実)を用いた外国語学習が効果的である要因は「社会性」「動機づけ」「多感覚刺激と身体動作」の3つであることが、ワールド・ファミリー バイリンガルサイエンス研究所(以下IBS)が公式サイトで公開した、IBS研究員によるVRなどの仮想環境を用いた外国語学習に関する海外先行研究を要約したレビュー論文に記されている。
■小学生を対象にした最新の海外研究から考察
公開された論文では、現時点で報告されている先行研究の結果を概説したうえで、特に小学生を対象とした研究を取り上げ、仮想環境での外国語学習が効果的になるための要素について考察している。
■VRなどを活用することで外国語学習に対する態度が大きく向上
外国語学習は、確かな教授法や理論的な枠組みと組み合わせれば、VRなどの没入型技術を使って強化することができる。ほとんどの研究で、外国語学習に対する態度が大きく向上するとともに、良い学習成果につながったことが報告された。
■外国語学習を成功させるための基盤となる3つのカテゴリー
そして、「社会性」「動機づけ」「多感覚と動作」の3つのカテゴリーが、VRなどの参加型または交流型ゲームを使った外国語学習を成功させるための基盤となりうることが明らかになった。
■小学校の授業にVRを用いることで大きな可能性が
小学校の授業にVRなどの没入型技術を取り入れることは、特に日本のような国では大きな可能性を秘めている。メタバースのように仮想世界で人と人がつながれるようにする技術やオンライン・ネットワークが開発されて実現するなか、今後は教育におけるこれらの可能性を探る研究が爆発的に増えることが予想される。
<小学生にとってVRなどを活用した外国語学習が効果的になるための3要素>
①社会性
VRは学習していることばが実際に使われる環境に生徒を置くことで、空港で道を尋ねるなどオーセンティックな文脈をつくり出すことができる。そして、ほかの人やPCが操作するプレイヤーとのやりとりを通じて、意味のあるやりとりを体験させることができる。VRゲームは学習者がすぐにフィードバックを得られるように、そして学習者の自律性や自発的な発見、反復学習、リフレクション(振り返り)を促せるように設定できる。
②動機づけ
VRを用いたゲームは生徒の意欲や興味・関心を引き出すうえで重要な役割を果たす。児童たちは仮想世界のゲームで成功体験を得たあと、英語でコミュニケーションをとる意欲が高まっていた。スコアやランキングを見られる機能により、VRゲームでもっと学習したいという気持ちになった。また、ヒントカードや学習カード、スキップ機能などが取り入れられていたことで、タスクを完了しやすくなり、学習に対する不安が軽減されたことも報告されている。
③他感覚刺激と身体動作
VRは複数の感覚(見る、聞く、動く、話すなど)を使いながら学ぶことで、情報が短期記憶から長期記憶に移りやすくなり、この長期記憶は学習した言語を使えるようになるために重要である。VRなどの世界ではPCのタッチパッドを使ったり、自分の身体を実際に動かすことでアバターを操作したりして、仮想環境に存在する物体を手に取って操ることができる。