国立高等専門学校機構(以下、高専機構)は、産業界や大学等の教育機関、政府、地方自治体と連携し、九州・沖縄地区の9高専を中心とする「半導体人材育成事業」に取り組んでいく。「半導体人材育成事業」の推進により、日本における半導体人材の育成への貢献(ボリュームゾーン人材とトップ人材の輩出)と高専教育の高度化を目指す。
■国立高専生が半導体に関する知識・技術を習得
「半導体人材育成事業」では、全国すべての学科の国立高専生が半導体に関する様々な知識・技術を習得できる体制を構築。半導体の製造から企画・応用利用までをカバーする半導体関連教育の実践に向けて取り組む。
■オール高専で半導体関連産業の「川上から川下まで」をカバー
半導体関連教育では、半導体関連産業を材料サプライチェーンから半導体製造・品質管理、半導体設計までを「川上~川中」、AI活用・サービス提供などの新たな応用の創出や利用範囲の拡大(新たな付加価値等)などを「川下」にたとえ、オール高専で半導体関連産業の「川上から川下まで」の幅広い分野をカバーする。
■拠点校や実践校を中心にオンライン授業も活用
拠点校(熊本高専・佐世保高専)及び実践校(九州・沖縄地区の高専)を中心に、オンライン授業も活用。半導体教育に取り組んでいる高専それぞれの強みとリソースを生かした高専連携による半導体教育を先行実施した後、新たな半導体教育の実施とともに、全国の高専に順次展開する。
■「九州半導体人材育成等コンソーシアム」に高専機構も参加
併せて、九州経済産業局が我が国の半導体産業基盤の強化を図ることを目的に設立した「九州半導体人材育成等コンソーシアム」に高専機構も参加し、九州地区の産学官の関係機関との連携強化を進めていく。
■半導体人材ニーズに即した教育内容の充実を図る
産業界における半導体人材ニーズ・スキルの集約・明確化とともに、相互の教育研究設備の共同利用・利用提供や人的交流(実務家教員派遣、出前授業実施など)等を通じて、ニーズに即した教育内容の充実・強化を図っていく。
■SIIQによる出前授業「半導体工学概論」を開始
「半導体人材育成事業」とも関連して、産業界との連携による取組の一つとしてSIIQ(九州半導体・エレクトロニクスイノベーション協議会)による出前授業「半導体工学概論」を開始。この授業では、熊本高専と佐世保高専の学生を対象に、SIIQ会員企業から派遣される講師による最先端の半導体関連産業の現状や実用例、製造技術等について教わり、学生が習得した技術を社会で生かしていくことを目指す。
<高専が育成する「半導体人材」>
・研究開発志向人材
半導体関連技術の最新動向を踏まえて、半導体製造の全体を俯瞰し、 最先端技術(新材料や新機能デバイス、新たな製造技術など)の研究開発に参画できる知識と研究基礎力を備えた人材
・実践的人材
半導体に関連する電気・電子工学の知識と技術を習得し、半導体関連の材料、デバイス、電気・電子回路、集積回路に関わる、製作/分析/評価の一部の工程の実務に携わることができる人材
機械系、材料系、情報系等のそれぞれの専門分野の技術に加えて、半導体製造に関する基礎知識を習得し、自身の専攻分野の知識と技術を半導体製造に応用できる人材
【国立高等専門学校機構 谷口功理事長 コメント】
半導体は、今日、社会の基盤的なデバイスとして身の回りの製品はじめ社会のあらゆるところに浸透している。この状況を鑑みて、15歳からの5年一貫教育で「現場力」を持ち、「実践的」かつ「創造的」な若い俊英を社会の高度人財として輩出してきた高等専門学校では、学術の基礎から応用を基盤として、さらに社会実装へと繋げる力量を持つ人財育成を進めている。高専では4月から半導体関連の教育内容を「見える化」しながら、半導体に関連した幅広い分野に対応できる人財育成を始めている。全国的な展開をも見据えた中で、まずは九州・沖縄地域の高専が一丸となって、長期的な視野に立って、かつスピ―ド感を持って幅広い半導体関連産業を先導する人材の育成に取り組みます。今後も、産業界との連携はもとより、産学官や地域と一体となって社会の発展を担う人材育成を進めてまいります。