立命館大学はスポーツ・健康・ウェルフェア(福祉)分野の総合研究拠点として、びわ湖・くさつキャンパスに「スポーツ健康科学総合研究所」を2022年4月1日に新設。スポーツ・健康・ウェルフェア分野における現代社会の課題を紐解きながら、スポーツ健康科学総合研究所と具体的な実践研究事例について解説するオンラインプレスセミナーが4月20日(水)に行われた。
■少子高齢化社会では健康寿命の延伸が重要な課題に
はじめに、立命館大学副学長でスポーツ健康科学部の伊坂忠夫教授からスポーツ健康科学総合研究所の概要が説明された。少子高齢化の時代において、高い生産性と活力ある社会を実現することが求められるが、そのためには健康寿命を延ばすことが重要な課題となる。
■20年にわたる健康科学の成果をスポーツ健康科学総合研究所に引き継ぎ
そこで立命館大学は2002年にスポーツ産業健康研究センターを立ち上げ、そこで10年間にわたり健康科学について研究。2012年からはスポーツ健康科学研究センターにバージョンアップを図る形で研究内容を引き継いだ。そこから、さらに10年にわたり研究を重ね、今回のスポーツ健康科学総合研究所の新設にいたった。
■自治体や研究機関と連携を図りながら健康・ウェルフェア分野にチャレンジ
スポーツ健康科学総合研究所では大学だけでは実現が難しいことを周りと連携し、新たな科学的洞察と実践的な社会的利益の両方を生み出していく。滋賀県や草津市などの地域や自治体、国立長寿医療研究センターや生理学研究所などの研究機関、龍谷大学や東京藝術大学などの大学と包括的な連携を図りながら、健康・ウェルフェア分野にチャレンジする。
■3つの柱を掲げて循環的に研究を進める
スポーツ健康科学総合研究所は「健康・長寿の実現」「スポーツを通じたQOLの向上」「まち・社会の健康の実現」という3つの柱を掲げている。この3点を研究所と産官学地の連携で進めていく。研究の進め方は基礎研究→開発→実証→社会実装と進め、社会実装から課題が提起され、基礎研究に循環する形となる。
■社会実装まで見通した研究を推進
研究は基礎研究から社会実装まで一気通貫で推進するが、フェーズとしては「基礎研究フェーズ」「開発・実証フェーズ」「社会実装フェーズ」の3段階に分けられる。従来、研究所では基礎研究がメインで、社会実装までは到達しないことが多かったが、スポーツ健康科学総合研究所では社会実装まで見通して研究が進められる。
<健康・長寿の実現に向けて>
3本柱の一つである「健康・長寿の実現」に向けた研究について、スポーツ健康科学部の家光素行教授が紹介した。「健康しが」Well-being共同研究プログラミング事業では滋賀県ならびに龍谷大学、滋賀医科大学、草津市、大津市、さらには企業による産官学地の共同により、Well-beingを実感できる見える化で活力ある県が目指される。カラダの見える化については、動脈硬化度など血管の見える化や筋量の見える化などを行い、それを社会実装することで2050年の滋賀県民のアクティブシニアの実現を図る。
<スポーツを通じたQOLの向上に向けて>
同じく3本柱の「スポーツを通じてQOLの向上」については理工学部の岡田志麻教授が紹介。非接触ココロ技術はリアル空間やSNSでココロの見える化を実現する技術となる。具体的にはカメラに映し出される人の顔色などから血管の状態を計測し、緊張状態を測る。また、着用するだけで24時間にわたって心電図を計測できるウェアラブルから生態のリズムが分かる実験を実施。就寝時の心電図を計測することで、その人が最もコンディションが良い状態の時間を推測することができる。
<まち・社会の健康の実現に向けて>
「まち・社会の健康の実現」に向けた研究については、スポーツ健康科学部の伊坂忠夫教授が説明。この研究では滋賀県草津市のスポーツ施設や公園などの点在する地域資源を見える化することで、町のデザインに落とし込む。そこから運動へと誘導する地域コミュニティをデザインし、モビリティ・プラットフォームを構築する。