日本科学未来館は障害者の社会参加を支えるアクセシビリティ技術の研究開発を外部の研究機関と共同で進めるコンソーシアム「日本科学未来館アクセシビリティラボ」を発足。浅川智恵子館長が提唱する、障害や年齢、国籍といった違いに左右されることのないインクルーシブな未来社会の実現が目指される。
未来館が導入したAIスーツケースを前に館長の浅川智恵子氏(中央右)と副館長兼研究推進室長の高木啓伸氏(中央左)
■今夏頃、本格的な活動をスタート
「日本科学未来館アクセシビリティラボ」の初期メンバーには日本IBMが参画。館内に設置した研究室を中心に、視覚障害者のためのナビゲーションロボット「AIスーツケース」を今年の夏頃より館内での体験会に活用するなど本格的な活動をスタートさせる。来館者には展示だけでなく、実際の研究開発の最前線にも触れてもらうことで未来を体験できるミュージアムを目指す。
■Miraikanビジョン2030 を掲げて先端科学技術を実証
浅川館長は日本IBMの研究者として音声ウェブブラウザ「IBMホームページリーダー」の開発など視覚障害者の課題解決に取り組んできた。2021年4月の館長就任にあたり、「あなたとともに『未来』をつくるプラットフォーム」というMiraikanビジョン2030 を掲げ、様々な先端科学技術の実証の場とすることを目指している。
■日本IBMとJSTが共同研究契約を締結
そうした方針に賛同する外部の研究機関を今年2月から募集。テクノロジーをより良い未来づくりに活かす「Good Tech」を展開する日本IBMから応募があり、未来館を運営する国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)と共同研究契約を結んだ。
■視覚障害者が街を自由に移動できる技術の研究開発を推進
今後、さらに先進的なAIやロボティクスの技術を持った企業などの参加を募り、視覚障害者が街を自由に移動し、街にあふれる情報を認識し、街で自立して生活するための技術の研究開発を共同で推進する。
■日本科学未来館が初の研究室設置へ
未来館が直接、研究室を設けるのは初めてのケースとなる。「日本科学未来館アクセシビリティラボ」には高木啓伸副館長兼研究推進室長や複数名の研究員・エンジニアが所属する。研究室のほかに3Dプリンターなどを設置したワークスペースを備えているほか、展示フロアも実証実験の場として活用する。
【浅川智恵子館長 コメント】
日本科学未来館を実験場に、障害者の生活の質を向上する新たな支援技術の研究開発と社会実装の橋渡しとなるように努力していきます。そのために企業などの研究機関をはじめ、さらに多くの皆さまにコンソーシアムに参加いただき、社会実装に向けて協力していただくことを期待しています。