新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う、学校の臨時休業により、学校給食が休止になった影響で、大量の食材が廃棄されることとなり、キャンセルができなかったものについては、学校設置者が引き取り廃棄するなどの対応が取られたことが、文部科学省が実施した「安定的な学校給食提供体制の構築に関する調査研究」から明らかとなった。
■学校給食の休止によりキャンセルに関する取り決めがないことが課題に
新型コロナウイルスの感染拡大による、学校給食の休止に伴って、キャンセルとなった食材の取扱いや、あらかじめキャンセルに関する取り決めがされていないなど、学校給食用食材に関する課題などが生じた例が見受けられた。
■ヒアリング調査の結果をまとめた報告書を作成
こうした状況を踏まえ、文部科学省は「安定的な学校給食提供体制の構築に関する調査研究」として、2021年9月下旬から11月上旬にかけてヒアリング調査を実施。その結果を踏まえ、取引における課題と解決策などを示すとともに、不要となった学校給食用食材の活用を紹介した報告書を作成した。
<一斉臨時休業時の学校設置者および事業者の対応状況>
2020年3月から多くの小中学校が臨時休業となり、それに伴い学校給食が休止となった。それに伴い学校設置者や事業者は休業決定後すぐに食材の納入ストップやそれに係る調整などの対応に追われることになった。
【ヒアリング結果より】
(事業者)
・一斉臨時休業が急な決定だったので、自治体も物資の調整やストップをかけられる
ものかどうかを一番に対応していた。学校設置者によって学校給食が止まる日が
異なっており、自治体から色々な問い合わせがきたので、それに向けた対応を
しなければならなかった。
・一斉臨時休業となり、まだ配送していない、また配送途中の自治体はストップして
倉庫で保管したが、配送済の分は学校の給食センターなどに保管してもらわなければ
ならなかった。
(学校設置者)
・日持ちするものはどこまで休業か見えていなかったので3月分は4~5月で使うよう
に調整していた。
・目の前にあるキャンセルが難しい食材を、献立入れ替え、作り直して食材をスライド
して使うかを考える必要が出てきた。4~5月分の食材もできるだけ6月の学校給食に
使用し、食品ロスや廃棄が少なく済むように努めた。
<一斉時休業により発生した問題>
今回のような全国一斉の急で長期間の休止は今までに経験のない状況であったため、大きく以下のような事態が発生した。1つ目として、休業要請から休止までの期間が非常に短かったため3月上旬に使用予定の消費期限が近い食材や加工済み食材などが行き場を失い廃棄になるという事例が発生した。2つ目として、学校給食の休止が長期間に渡ったため、主に事業者側に、①発注を受けて見込んでいた1か月の売上が急になくなった、②加工などですでに労務が発生していたが、その分の費用が得られなかった、などの事態が発生した。
<臨時休業により廃棄となった食材の状況>
一斉臨時休業による課題として、大量の食材の廃棄が発生したいことがあげられる。学校が再開するまで保管できない食材、つまり消費期限が近い食材、加工済の食材などキャンセルができなかったものについては学校設置者が引き取り廃棄することとなった。廃棄の費用は学校設置者が負担し、3月分は学校臨時休業対策補助金、4月分は賄材料費や地方創生臨時交付金で対応しているという。
【ヒアリング結果より】
(学校設置者)
・賞味期限が近くて学校が再開するまで取っておけない食材は自治体負担で廃棄。
・食材は発注済なので次の献立で使う方向で調整をした。しかし、生もののように
差し迫ってすぐに使わないといけない食材は廃棄となった。
・市で費用負担し事業者に処分してもらったり、市が引き取って処分したケースも
ある。3月分の廃棄費用は補助金を活用。それ以降、期限が切れた物資の処分費用
については、補正予算を計上し、地方創生臨時交付金を活用。
・廃棄費用については学校設置者が負担し、3月は学校給食費と補助金で支出。
4~5月は学校給食食材費として予算が組まれていた賄財料費から支出。
<学校臨時休業対策補助金について>
文部科学省では学校給食休止による救済措置として「学校臨時休業対策補助金」を策定。学校設置者によっては補助金申請に消極的なところもあったが、文部科学省のできる限り申請を促すとの意向により、都道府県給食会は学校設置者の理解を得るために相当なエネルギーを費やした。しかしながら、すべての学校設置者からの申請には至らず、結果的に違約金やキャンセル料を受け取れない事業者も存在したと考えられる。
【ヒアリング結果より】
(事業者)※補助金申請に消極的な理由
・学校設置者にとっては契約違反がなく、数量変更が契約書などでルール化されて
おり、それ以外の分についてはキャンセル料などを支払う必要はない。
・休業期間中についてもやむを得ず登校しなければならない児童などを対象に、独自
施設として昼食を公費で提供したことから、施策として十分である、業者のために
キャンセル料などを支払う必要はない。
・基本的に「事業者と学校設置者で話をして、双方が了承したら払う」というもの
だったが、なかなか双方の了承に至らなかった。「そもそも契約書に違約金の言葉が
ないから払えない」と断られたり、中には契約書すらないところもあったようだ。
<学校給食費について>
ヒアリングを実施した学校設置者については、一斉臨時給業の際の学校給食の対応については、減額、返金、または保護者への負担などといった対応が見られた。
【ヒアリング結果より】
(学校設置者)
・昨年の一斉臨時休業では学校給食費を全面的に徴収していない。従来は学校から市、
または市学校給食会へ前日の午前10時までに報告があれば、学校給食費を請求しない
ルールとなっている。
・休業時の学校給食費については徴収しないと市の規則で規定。それに基づき一斉臨時
休業時には学校給食費の減額を行い、過納の場合には、その金額を保護者へ還付。
・従前から台風などによる学校休業の際には、その当日の学校給食費は保護者に負担を
求めず市で補填することになっている。一斉臨時休業についても保護者負担はなし。
現在はコロナによる休業の場合は市の負担、学級・学年閉鎖の場合は保護者負担。
<学校給食用食材の取引における主な課題に対する解決策>
これらの課題に対して有識者ヒアリングなどを踏まえて以下のような解決策を
検討する。
①契約書がないケースがある
→契約書を作成する
②契約書では発注行為の記載がされていないケースが多い
→発注日を記載する
③契約書があったとしてもキャンセル条項について記載がないケースが多い
・長期的な一斉休業で事業者への補償がされない事態が多く発生
→長期的な一斉休業などに対する対応を明記
・学校関係者に新型コロナウイルス感染者が出た場合の学級閉鎖・臨時休業などによる
学校給食の休止に対しても補償がされないケースがある。
→キャンセル日数なども明記
<ヒアリング実施概要>
実施時期:2021年9月下旬~11月上旬
実施方法:オンラインヒアリング(Zoom)、または電話・書面ヒアリング
ヒアリング件数:10件(学校設置者7件、事業者3件)
ヒアリング内容:
①取引などにおける支障事例などについて
②臨時休業などにより不要となった学校給食用食材の活用法について