幼い頃から一つの言語のみで育つ場合と、二つの言語に触れるバイリンガル環境で育つのでは、脳やことばの発達にどのような違いが生じるのか。ワールド・ファミリー・バイリンガル サイエンス研究所では、脳を専門とする東京大学の池谷裕二教授にインタビューを実施し、公式サイトに記事を公開した。
■バイリンガルの脳はどのように働いているのか
乳幼児期から二つの言語に触れて育った子供は、自然と両方の言語を身につけているが、バイリンガルの脳は、どのように働いているのかを神経生理学が専門の池谷教授に聞いた様子が公開されている。
■日本語だけを聞いて育つと次第に英語に反応しなくなる
池谷教授によると、生まれたばかりの赤ちゃんは、すべての言語のすべての音韻に対して反応しているが、日本語だけを聞いた子供は生後6か月ぐらいでLとRの違いに反応しなくなり、14か月ぐらいでだいぶ違いが分からなくなってくるという。
■二つの言語の獲得は脳にとって負担ではない
子供が二つの言語を獲得することは脳にとって負担にはならないとする池谷教授。言語に関するテストをすると、バイリンガルは成績が低くなるという結果を出した研究もあるが、それは二言語とも習得が遅れるのではなく、ボキャブラリーの少なさが起因しているという。
■バイリンガルの子供のボキャブラリーの学習の遅れは劣等感を抱くことではない
「ボキャブラリー量が同じくらいのモノリンガルとバイリンガルを比べてみると、まったく差がない」と語る池谷教授。バイリンガルの子供のボキャブラリーの学習の遅れは、バイリンガル特有の発達の過程であり、劣等感を抱くようなことではないとする。
■親の介入は線引きが大事
親が子供に干渉することで、子供が変わることと変わらないことがあり、それをしっかり見極めることが大事とする池谷教授。親の介入により改善できることと、出来ないことの線引きが大事であり、それにより子供が英語嫌いになる可能性が減るのではと語る。