小学生のスポーツ活動は母親の負担が大きいことが、笹川スポーツ財団が小学生の子供を持つ母親を対象に実施した「小学生のスポーツ活動における保護者の関与・負担感に関する調査」から明かになった。有効回答数は2400人。
■負担感では送迎、食事・飲み物の用意、観戦場所の確保が上位に
笹川スポーツ財団は、2017年2月に実施した第1回調査に引き続き、2021年9月に小学校1年生~6年生の第1子をもつ母親を対象に調査を実施。子供のスポーツ活動への母親の負担感に関する調査では「指導者や保護者の送迎をする」(66.7%)、「練習や大会等で、指導者・保護者の食事や飲み物を用意する」(64.4%)、「大会等で保護者や関係者が観戦する場所を確保する」(62.0%)が上位3つを占める。
■弁当作りや練習の補助が前回調査より増加
母親の負担感に関する調査で前回調査より5ポイント以上変化した項目を見てみると、増えた項目は「弁当を作る」(6.4ポイント増)、「クラブの練習の補助をする」(8.9ポイント増)、「活動場所の手配や予約をする」(5.2ポイント増)となっている。逆に減った項目は「スポーツ用具を購入する」(5.2ポイント減)、「クラブの練習の指導をする」(7.5ポイント減)となった。
■母親・父親ともに送迎への関与は増加、大会や試合の応援などは減少に
子供のスポーツ活動への母親・父親の関与の経年変化をみると、母親・父親ともに「子供の送迎をする」が増加し、「大会や試合に付き添う・応援をする」が減少するという共通の傾向が見られた。コロナ禍で長時間の活動や大会・イベントなどが難しくなり、大会や試合を応援したりする機会は減少したと考えられる。
■母親中心に子供のスポーツ活動に関与
一方、母親の関与が父親を上回った項目は「ユニフォームや練習着の洗濯をする」では約60ポイント、「子供のスポーツ用具を購入する」では約40ポイント、「子供の送迎をする」「クラブの練習の付き添い・見学をする」では約30ポイントも上回っており、全体的に母親中心に子供のスポーツ活動に関与している様子が伺える。
■自主練習につきあうなどコロナ禍でのスポーツ活動継続に努力
母親ではほかに、「クラブの練習以外の自主練習につきあう」などが増加しており、コロナ禍で団体の活動が思うようにできない中で、個々の保護者が子供のスポーツ活動継続のために努力していることが分かる。
■祖父母の世代からスポーツの指導以外は母親が関与
母親自身に子供の頃を振り返ってもらい、本人や兄弟がスポーツ活動をしていた場合の保護者の関与について聞いたところ、「保護者がコーチをする活動があった」は14.6%、「保護者が係や当番をする活動があった」は31.6%であった。「保護者がコーチをする活動」では父親のほうが多く、「保護者が係や当番をする活動」では母親のほうが多く、現代の子供たちの祖父母世代から、指導以外の関与は母親が中心という構造になっている。
<笹川スポーツ財団 スポーツ政策研究所 シニア政策オフィサー 宮本幸子氏>
2020年以降、コロナ禍で子供のスポーツ機会そのものが危機にさらされ、活動内容も変化した。しかし、子供のスポーツにおける保護者の関与という観点では、今回の調査結果は予想以上に「変化がない」ことが分かった。家庭内でのサポート、団体内でのサポート、いずれも母親中心の関与が続き、それらは祖父母世代から続いている可能性が示唆された。
子供のスポーツを母親が中心となって支え、負担感が生じる事態は、社会全体のジェンダー構造を反映した問題でもあり、特効薬のような解決策は見出しがたい。ただし、当番制や活動時間・試合への参加方法を見直すなど、スポーツ活動のあり方で解決できる部分もある。一つ一つの積み重ねによって、子供も保護者もスポーツを楽しむことのできる社会につながることを望みたい。
<調査概要>
【調査名】
小学生のスポーツ活動における保護者の関与・負担感に関する調査研究2021
【調査対象】
小学1年生~8年生の第1子をもつ母親。複数の子供がいる場合は第1子について回答
【有効回答数】
2400人(対象となる子供の学年・性別が均等になるよう割付。全学年男女各200名)
【調査期間】
2021年9月
【研究担当者】
公益財団法人 笹川スポーツ財団
シニア政策オフィサー 宮本幸子氏
政策オフィサー 清水恵美氏