調理師や栄養士の育成に努める、東京・代々木の服部栄養専門学校(服部幸應校長)は、将来の実需者(調理師・栄養士)である学生に向けて、鹿児島県の農産物の魅力を伝える「かごしまの『食』体験授業」を12月に実施した。
■鹿児島の農作物を学生に紹介し、現地の生産者と交流
「かごしまの『食』体験授業」は、鹿児島県の農作物の紹介や鹿児島県産食材を活用した調理実習や試食を実施するもので、12月13日(月)、16日(木)、17日(金)には栄養士科1年生に対して行われた。服部栄養専門学校が「かごしまの『食』体験授業」を行うのは今年で3年目。2020年からはコロナ禍の影響もあり、現地の生産者とオンラインで交流する試みが行われている。
■農業産出額全国2位の鹿児島の魅力
はじめに鹿児島県の農作物の魅力を知ってもらうため、鹿児島県東京事務所 流通情報課の前原隆史氏が講師となり、鹿児島の農産物などが紹介された。鹿児島といえば桜島が有名だが、多い年は年間996回もの噴火があり、ひどい時には火山灰が農作物に影響を及ばすことがある。鹿児島県の農業産出額は北海道に続き、全国2位となる。
■温暖な気候を生かして冬から春に農産物を生産
鹿児島は畜産に優れており、肉用牛の飼養頭数は全国2位、豚の飼養頭数は全国1位、ブロイラーの飼養羽数は全国2位を誇り、特に牛は黒毛和牛に限れば全国1位となっている。また、鹿児島県は気候が温暖であるため冬から春に農産物を生産できる。例えば、じゃがいもは1月から5月にかけて、鹿児島本土と奄美地区でリレー出荷を行うことで、継続的に掘り立ての新じゃがを収穫して、消費地に届けることができる。
■豆が苦手な子供でも食べられる「まめこぞう」を生産
続いて前原氏からは、この日の授業で使用する、実えんどうの品種である「まめこぞう」が紹介された。鹿児島県はグリーンピースの生産量も全国2位となるが、グリーンピースが嫌いという子供が多く、給食でも残されることが多い。そこで甘くて豆くさくない品種を作ろうと「まめこぞう」は誕生。地元の農業高校生が名づけ親となっている。
■おいしい料理を作るため、良い食材を選んで
2001年から品種の作成に取り掛かり、完成したのが2016年。甘みが強く、収穫期は11月から5月と、ほかの品種よりも早い時期に収穫できる。また、さやと実は大きく、色味が薄いのが特長となる。前原氏は「おいしい料理を作るには、良い食材選びと調理技術が大事。皆さんには良い食材を選ぶという視点から、鹿児島に注目してほしい」と語った。
■まめこぞうとグリーピースの食べ比べを実施
鹿児島県の話を通じて知識を深めたところで、「まめこぞう」とグリーンピースを食べ比べて味の比較を行った。学生はコロナ対策として感染にも十分に注意を払いながら、「まめこぞう」をさやから取り出して鍋で茹でていき、同様に実の状態になったグリーンピースと食べ比べた。
■ジャムの状態でも味を比較
またジャムになった「まめこぞう」とグリーンピースも学生に配られ、クラッカーにつけて試食。それぞれ食べ比べた後、学生からは「グリーンピースは苦手だけれど、まめこぞうは美味しい」と感想が出るなど好評だった。
■生産農家とオンラインでつなぎ意見交換
その後、指宿市で「まめこぞう」を栽培する生産農家の西山さんとオンラインでつないで意見交換が行われた。当初は畑に実った収穫前の「まめこぞう」を視察する予定だったが、鹿児島県が雨だったため屋内からの交流となった。指宿市では11月頃から「まめこぞう」の出荷が始まる。今年は2週間ほど出荷が遅れたが、実がしっかり詰まった味としては期待できるものになったという。
<学生から生産農家に質問>
Q「まめこぞうは収穫後に、どのような状態で保存され、どれぐらい持つのか」
A「収穫後、まめこぞうは冷凍で保存しておけば1年ぐらいは美味しく食べられる」
Q「これまで、まめこぞうを栽培してきて苦労したことや、良かったことは」
A「豆は台風や豪雨などの自然災害を受けやすく、収穫するまでは安心できない。それでも収穫を迎えた時は、本当にうれしく、誰よりも早く採れた豆を使って家族が作ってくれた料理をおししくいただいている」
Q「まめこぞうは、どれぐらいの高さまで成長するのか。また、収穫量はどれぐらいか」
A「高さは人間の伸長よりも高くなり、2㍍ぐらいまで成長する。収穫量は10㌃あたり約2500kgの豆が採れる」
Q「西山さんのおすすめの、まめこぞうの食べ方は」
A「お気に入りは、まめごはんで、おにぎりにして食べている。また、イカとの相性が良く、一緒に炒めると、白と緑の色合いも良い料理が出来上がる」
■「まめこぞう」を使った料理を学生から提案
生産農家の西山さんから学生に向けては、「まめこぞうを使った料理で思いついたものはありますか」という質問が寄せられた。それに対して学生からは「ずんだ餅のように餅と合わせるとおいしいかも」「食感が良かったのでピラフやチャーハンに合うと思った」といったアイデアが提案された。
■美味しい食材を多くの人に広めてほしい
最後に西山さんからは「まめこぞうは鹿児島でしか作られておらず、まだ認知度は低いかもしれない。しかし、日本全国には、まだ知られていない美味しい食材があるので、食のプロを目指す皆さんには、こうした野菜があることを多くの人に広めていってもらいたい」とメッセージが送られた。
■かごしまの「食」発表会を2月に開催予定
今後、服部栄養専門学校では、調理師本科の学生を対象に、かごしまの「食」体験授業を1月18日に実施。鹿児島産の食材を用いた調理実習が行われる、また、2月1日には、かごしまの「食」発表会として、体験授業を受講した学生による発表が行われるほか、服部栄養専門学校が考案した鹿児島産の食材を活用した新規メニューが発表される。