文字・活字文化推進機構ならびに学校図書館整備推進会議は「学校図書館等の整備・拡充を求める各界連絡会」を12月8日(水)に開催。10月5日に開かれた第1回各界連絡会に続き、第2回目となる今回は「学校図書館等の整備・拡充について」の報告などが行われた。
<学校図書館等の整備・拡充について>
■図書館標準達成率、新聞配備率、学校司書の配置率は増加
「学校図書館等の整備・拡充を求める各界連絡会」では、文部科学省総合教育政策局の藤原章夫局長から「学校図書館等の整備・拡充について」の現状と課題が報告された。5年ごとに整備されてきた「学校図書館整備等5か年計画」の第5次は今年度で終了となるが、図書館標準達成率、新聞配備率および学校司書の配置率など、いずれも増加した。
■決算額と計画上の措置額と乖離が生じていることが課題に
これらの整備は交付税措置で推進しているが、2019年度の決算額は約345億円に対して、計画上の措置額は約470億円となるなど決算額と措置額では約125億円の乖離が生じていることが課題としてあげられる。
■学校司書の配置率が高い都道府県は図書標準達成率などが高い
2020年度「学校図書館の現状に関する調査」を分析したところ、図書購入冊数が多い都道府県は図書の選定基準・廃棄基準の策定率が高い傾向にある。また、学校司書の配置率が高い都道府県は図書標準達成率、図書の選定基準・廃棄基準の策定率、新聞配備率はいずれも高く、図書購入冊数も多い傾向にあることが分かる。
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■新事業として「読書活動総合推進事業」を実施
これらのことから教育委員会と学校が一体的に学校図書館の計画的整備を進めることが重要となる。そうした中で、学校司書の配置や図書の選定基準・廃棄基準を見直すことが求められる。文部科学省では2022年度概算要求で新事業「読書活動総合推進事業」の実施に向けて予算を盛り込んでいく。
■活用計画を策定して図書購入を促進する
「読書活動総合推進事業」では9000万円の予算を計上し、以下のような取組を推進する。①図書購入を促進するための先進的な取組の横展開に向けて、学校図書館の活用計画を策定。②自治体の図書標準達成率と都道府県や全国の平均を比較した各種データを示すことで図書の購入などを促進。③市町村に設置されている学校図書館支援センターを最大限に活用して、各学校の図書館の整備を進める。
<第66回学校読書調査に見る読書推進の現状と方策について>
■前年より平均読書冊数は増加
全国学校図書館協議会が実施した「第66回学校読書調査」から見た読書推進の現状と方策について、同会・調査部長の磯部延之氏から報告が行われた。2021年の平均読書冊数は小学生(4~6年)12.7冊、中学生5.3冊、高校生1.6冊となる。全ての校種において前年より平均読書冊数は増えている。
■2001年から小中学生の平均読書冊数は増加傾向に
過去30年の平均読書冊数を見てみると、1991年から2001年は、全校種ほぼ横ばいだったが、2001年以降は小学生と中学生は増加傾向にある。ただし、高校生は2001年以降も、ほぼ横ばいの状態が続いている。
■2001年から2004年にかけて、まったく本を読まない人が激減
過去30年間で、まったく本を読まない(不読者)の推移を見てみると、2001年から2004年の間に全校種において不読者は激減。2004年以降は小中学生の不読者は減少傾向にあり、高校生はほぼ横ばいとなっている。
■国の施策により読書量は向上
2001年から2004年に不読者が激減した背景には、2000年「子ども読書年」、2001年「子どもの読書活動の推進に関する法律」の制定、2002年「子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画」など、国の施策が立て続けに実施されたことがあげられる。また、この時期に全国に広まった「全校一斉読書」も読書量の増加に関与している。しかし、読書の量は増加したが、読書の質は向上したかという疑問が残される。
■名作・古典や伝記を読む割合が減少
そこで質としての読書傾向を見てみると、小学生の読書傾向は、1994年の上位作品は名作・古典12冊、伝記6冊が入っていたが、2021年は名作・古典9冊、伝記1冊に減少。同じく中学生の読書傾向を見ると、1994年は名作・古典12冊、伝記1冊だったのが、2021年には名作・古典2冊、伝記0冊と著しく減少している。
■「第6次学校図書館整備等5か年計画」で主体的・対話的で深い学びを支える読書を
小中学生の読書量は国の施策を背景に向上しているが、名作・古典など豊かな読書が求められる。今後、「第6次学校図書館整備等5か年計画」では、学校図書館への新聞の配備や学校司書配置の促進を進めることで、主体的・対話的で深い学びを支える読書の実現が目指される。
<学校図書館図書更新の現状について>
■図書館を訪問し、図書の更新状況を調査
学校図書館図書更新の現状について、文字・活字文化推進機構の松木修一専務理事から報告された。今回、調査のために訪れた市は、地方交付税措置を受けており、図書標準達成割合が小学校60.0%、中学校68.6%に達する。年1回は司書教諭の研修を実施し、地元の書店と連携して選書展示会も行われている。
■破損した本が更新されずに並ぶ学校図書館
今回、写真を撮影したのは図書標準達成割合が約95%の小学校。司書教諭も頑張っており、図書委員も協力的で図書も整理されている。しかし、蔵書を見てみると破損が進んでいる書籍が目立ち、書名が見えなくなってしまったため書名を印刷して貼っている本もある。
■傷んだ本を新しく買い替える更新は後回しになりがち
今日の学校図書館は学校図書活動だけでなく、学習センター・情報センターとして大きな役割を果たす。そのため教員と相談して、授業で活用する本を購入していく。続いて、教科書に出てくるような本を揃えていく。さらに、新刊を買いそろえるため、傷んだ本の買い替えとなる更新は後回しとなってしまう。
■更新にも予算をかけるよう働きかけを
「学校図書館整備等5か年計画」では、増加冊数分と更新冊数分は別々に予算付けされている。しかし、更新が遅れがちな現状が見えてくる。「学校図書館整備等5か年計画」により子供たちの読書率などは高まったが、このように行き届いていない部分もあると指摘し、更新にも予算を使えるように働きかけを行う必要があるとする。