北米教育eスポーツ連盟 日本支部(NASEF JAPAN)は「第2回 eスポーツ国際教育サミット2021」を11月14日(日)にオンラインで開催。高校生が初登壇するなど、eスポーツにチャレンジして成長する姿が伝わる教育の最前線に迫るサミットとなった。
■withコロナにおける、⽶国でのeスポーツと⾼校⽣と活動の在り⽅について
登壇した、北米教育eスポーツ連盟 ⽇本本部 統括ディレクターである内藤裕志氏は、これからの未来を生き抜くための3つのスキルの必要性を伝えながら、NASEF JAPANのビジョンを語った。1つめのスキルは、「OODAループ」で勝敗に関わる意思決定と実⾏のための思考法となる。2つめは“リーダーシップ”や“コミュニケーション能⼒”、最後に3つめが“思考的能⼒、Steam的発想”となる。そして、実際にNASEF本国が⽶国国防省と協⼒して開催したイベント「NASEF FARMCRAFT」を紹介した。「NASEF FARMCRAFT」の参加者は⼩学校3年⽣から⾼校3年⽣まで36か国、約700チームにものぼり、各チーム農場を作る過程でクリエイティブ⼒を発揮したという。
■学業との両立が条件
朋優学院⾼等学校の岸波禎⼈教諭は「進学指導と部活動の両輪で育む、⽣徒の⾃⽴と共⽣」をテーマに基調講演を行った。朋優学院⾼等学校では2018年に⾼校⽣eスポーツ選⼿権がきっかけでeスポーツ部を創部。⽀援プログラムなどを活⽤しながら⽣徒がプレイしやすい環境整備を整えるだけでなく、学業との両⽴のために勉強の負担にならないような仕組みづくりに注力した背景を述べた。
「週4回の部活動だが、⼼配する保護者もいるかもしれない。だが、⾼校⽣にとってゲームは楽しみの一つでもあり、部活なので家での活動制限はしていない。唯一の条件設定が学級学業に⽀障をきたさないこと。また成績が悪い場合には、⼀度部活動をやめさせて、成績改善に向けて努⼒する時間を与えている」と語った。
■競技性を通じてチームや対戦相手への配慮が生まれる
続いて茨城県と神奈川県の公⽴⾼校でeスポーツ部を創部した経験を持つ東海⾼等学校の千葉徹也教諭が登壇し、「救済策としてのeスポーツ」をテーマに基調講演を行った。
「まず、コロナ禍においてスマートフォンを使う時間が伸びている事象がある。中高生においても同様だが、ただゲームで遊ぶのではなく、努⼒をすれば何かが得られるというゲーム独⾃の期待感に着目した。この⽬標と評価のバランスをモチベーションに繋げることが、アクティブラーニングに繋がるのではないかと考える」と語り、“競技性”をeスポーツで持たせることで、生徒たちにチーム⼒や対戦相手への配慮、リーダーシップやサポートなど、⽣徒たちに⾃分らしい“居場所” が⽣まれたことを自身の経験から語った。
■「eスポーツ・クリエイティブ・チャレンジ」の初代王者が決定
eスポーツを使って社会問題を解決できるのかという課題に対し、全国4校を代表するグループがアイデアを発案しプレゼンテーションを行うコンテスト「eスポーツ・クリエイティブ・チャレンジ」の大会結果が発表された。記念すべき初代王者に選ばれたのは、茨城県水戸市の私立水戸啓明高等学校に所属する高校1年生チーム。「グッコメ!!〜“Good comment”でコミュニケーションをもっと楽しく!」と題した作品は、SNSで巻き起こる誹謗中傷コメントに対して、グッドコメントをした利用者に対して報酬を与えるというもの。また良いコメントをすることで、ゲーム内通貨やオンラインショップでのセール券を獲得できる仕組みを整備した。
■CLARK NEXT Tokyoの生徒2名が登壇
また、オープン参加ではあったもののCLARK NEXT Tokyoの生徒2名がステージに登壇し、先日開催された中学生向けの競技大会「第1回クラーク国際主催中学⽣eスポーツ選⼿権」の活動報告を行った。本大会は、なぜ高校生大会はあるのに中学⽣⼤会はないのかという疑問から⽣まれたと語り、イベント企画から本格的なライブ配信、キャスターを招いてカンペなどで指⽰を出しながら進⾏するなどの⼤会運営を経て、「中学⽣も楽しんでくれたように感じたので、開催してよかったと⼼から思っています。大会を終えて、役員としても楽しく仕事に取り組めました。また、たくさんの機材があって、どの働き、どの機材がどういう働きをしているかなどを教えてもらうことができたので、貴重な勉強になりました。後日配信を見返して、⾃分のものが配信で綺麗に反映されていたことに気づいた時は嬉しかったです」とコメントした。
■部活動の環境づくりが課題に
サミットの後半では、NASEF JAPANのメンバーシップ加盟校の教員を対象に初の座談会が開催された。全国各地100校以上の加盟校をもつNASEF JAPANのメンバーシップのなかから約50名近い学校関係者が参加。eスポーツについて、現場の目線から教育としての可能性を語り合った。
交流会で浮き彫りになった課題は、“部活動の環境づくり”。茨城県水戸市 私立水戸啓明高等学校の高田教諭は「おそらく機材関係が⼀番問題になると思います。部費は最初10万円だったのが、eスポーツの活動費として増額され20万になりました。高校eスポーツ応援プロジェクトでレンタルPCを3台借りていますが、それでも部員が19名ぐらいいるので、全員に渡らないっていう状態は厳しいかなと思います」と語った。
<第2回 eスポーツ国際教育サミット2021 概要>
開催日時:2021年11月14日(日)
第1部 10:00~11:30「第2回eスポーツ国際教育サミット2021」
第2部 11:35~12:00 会員限定「NASEF JAPAN会員総会および意見交換会」
開催形態:Zoom配信(入退場自由)
参加費:参加無料