ワールド・ファミリー バイリンガル サイエンス研究所(以下IBS)は、英語の授業で子供たちの「わからない」を軽減するための工夫を伝えるオンライン勉強会(無料)を、小学校5、6年生担任教諭および英語科専科教員を対象に、9月26日(日)に開催した。
■「小学生アンケート結果をベースにした英語授業の進め方」をテーマに開催
IBSは、2021年3月に社会貢献活動の一環として初めて開催した「4月からの英語授業 こうやってみよう!」が好評だったことを受け、今回は第2回目として「小学生アンケート結果をベースにした英語授業の進め方」をテーマに開催した。全国から約 50人の教員が参加し、初の試みとなるグループ・ディスカッションも行われた。
■子供は楽しんで英語の授業を受けている
第1部では、玉川大学大学院 教育学研究科の佐藤久美子名誉教授が「生徒のレベルを考慮した言語活動:スピーキングをベースにしたリスニング指導」をテーマに講義を行った。佐藤教授は、小学生に対するアンケートで「英語の授業は好きか?」という質問に対し、「好き」と回答した割合が約7割であったことを受け、子供たちは英語の授業を楽しんでいることがわかると解説した。
■高すぎるリスニング教材の難易度
一方、3割の子供は「嫌い」と回答しており、その理由として「英語を聞いても何を言っているかわからない」などの意見が目立ち、リスニング教材の難易度が高い可能性があると分析する。佐藤教授によると「子供の聞く力が育つ仕組みからして、日常生活に関わる推測しやすい内容(インプット)を聞かせる工夫が必要」だとする。
■子供がすでに知っている知識と結び付けて理解につなげる
「英語を聞く前にイラストを見ながら『ここはどこかな?』などとやりとりをする」、「一旦音声を止めて『何が起きたの?』などと質問する」、「聞き終わったあとに『お話の内容は好きだった?』などと会話する」などの活動を通じて、子供たちがすでに知っている知識と結びつけて内容を推測しやすいようにサポートすることが大切だとする。
■小学生が英語を苦手とする理由をAIテキストマイニングで分析
第2部では「英語表現をどう導入する? 〜言語が使用される場面を意識して〜」と題し、岐阜大学 教育学部の瀧沢広人准教授が、小学生のアンケート結果から、英語の授業を嫌いな理由をAIテキストマイニングで分析した。
■小学3年生と6年生で高い「英語がわからない」という回答
アンケートによると、小学3年生と小学6年生の回答で「英語がわからない」というキーワードが最も多くなっている。小学3年生の場合、知らない言語に初めて触れたことによる感想であり、小学6年生になると、違う理由で「わからない」が出てくるのではと瀧沢准教授は推測する。
■基本表現の導入で子供の気づきを促す
これからの小学校英語教育では、「わからない」と感じている子供たちにどのように教えればいいかということが課題であると考察。子供が「わからない」と感じているということは、気づきが不十分とし、今回の講演では、基本表現の導入方法がテーマとなった。
■子供たちの「わからない」を軽減させるアイデアを共有
まずは、教員が実際に体験したことなどを写真やイラストを見せながら、学んでほしい表現を繰り返し使って紹介。子供たちに質問を投げかけながら、気づいているかどうか、意味を理解しているかどうかを確認。このように、教員の体験を伝える、子供たちの体験を伝えるなどの、やりとりを行う言語活動を通して、自然と学習内容に気づき理解させることで、「わからない」を軽減する具体的なアイデアが共有された。
■グループ・ディスカッションで授業のアイデアを出し合う
第3部の「グループ・ディスカッション&発表」では、参加者が4~5人ずつのグループに分かれ、佐藤教授による課題(リスニング内容の導入アイデア)、瀧沢准教授による課題(基本表現の導入アイデア)を選び、授業のアイデアを出し合う時間が設けられた。
■参加者が講師に自由に質問
ディスカッション後は、いくつかのチームがアイデア内容を発表。佐藤教授、瀧沢准教授がアイデアの良かった点や関連するアイデアなどをコメント。参加者が自由に質問できる時間も設けられ、アットホームな雰囲気で勉強会が終了した。
小学校教員向け勉強会「小学生アンケート結果をベースにした英語授業の進め方」を開催