(公社)全国学校図書館協議会（以下、全国SLA）が、学校図書館の日を記念して実施する、第51回「学校図書館賞」実践の部で「杉並区立済美教育センター 学校図書館支援担当」が学校図書館賞を受賞。6月21日(月)、杉並区教育委員会で授与式が行われた。
全国学校図書館協議会の設楽敬一理事長(右）と杉並区教育委員会の白石高士教育長(左)
■学校図書館の振興に著しい業績を残した個人および団体を顕彰
学校図書館賞は、1970年に全国SLA創立20周年の記念事業として、学校図書館の発展を図るために創設。本賞は全国SLAのほか、学校図書館関係各団体から寄せられた寄附金をもとに、学校図書館の振興に著しい業績を残した個人および団体に賞を贈り顕彰する。
■学校司書の存在価値を明確化し、今後の方向性を示した
杉並区立済美教育センター 学校図書館支援担当の受賞事由は「杉並区の学校司書配置の成果と杉並区立済美教育センター学校図書館サポートデスクの活動」。杉並区の学校司書配置から10年を経過するにあたり、学校司書の成果と学校司書を支えてきた済美教育センター学校図書館支援担当の果たした役割を明らかにするため報告書を作成。GIGAスクール構想の中で、学校司書という専門性を持った「人」の存在価値を、その実績から明確化し、今後の方向性を示した。
■教職員をバックアップするサポートデスク
済美教育センターの中核を担うのがサポートデスク。正職員の係長1名に、元教員2名、元学校司書2名の計5名体制で担当。主な業務は学校図書館運営支援、学校司書研修や司書教諭研修などの企画と運営、校内研修への協力などとなる。このほかにも、学校図書館の蔵書検索システムと資料配送体制の整備と運用、「学校司書ハンドブック」の発行なども行っている。学校司書研修はほぼ月1回のペースで開催。そのプログラムは読書活動や授業支援の手法からNIE（教育に新聞を）やICTの活用まで多岐にわたる。教育センターは各区立学校を総合的に支援・指導する役割を担う組織であり、サポートデスクは教員や学校司書の日々の業務を支えている。
■ICTと学校図書館の資料を両立して活用
授与式において全国SLAの設楽敬一理事長は「教育現場には1人1台端末が整備されたが、情報教育を深めるためにはICTと共に学校図書館の資料を活用することが求められる。これからもICTと学校図書館の機能を活かして子供たちの学びを深めていってほしい。今回の受賞を機に、子供たちの学びを深めるための活動を推進してください」と述べた。
＜選考報告 専修大学 野口武悟教授＞
今回、学校図書館賞には、論文の部・3件、実践の部・6件の合計9件の応募があり、その中から学校図書館賞１件、学校図書館賞奨励賞1件が決定。学校図書館賞を受賞した「杉並区立済美教育センター 学校図書館支援担当」は非常に先駆的で充実した取組という点が高く評価された。全国的にも学校図書館の支援センターの整備は進んでいるが、杉並区のように充実した体制を整えているところは少ないので取組を全国に発信していってほしい。
【受賞にあたって 杉並区立済美教育センター 学校図書館支援担当係長 奈良史香氏】
学校司書は新しい職種として1人職場の中、各校で道を切り開き、校内で連携を取りながら頑張ってきた。開かずの間だった学校図書館を変え、児童生徒の読書の量と質を高め、今や情報センターや学習センターとしても教育を担う一員となっている。今回の受賞を多くの学校司書が喜んでくれており、学校司書にとっても私たち担当部署にとっても、大きな励みとなった。
学校図書館は、大きな転換期に差し掛かっている。GIGAスクール構想が進む中、学校司書はネットの中の膨大な情報をどう使いこなすか、物事を比較して考え、正しく読み取ることを児童生徒に伝える役割を担うと考えている。一方、紙の図書の有効性を学校図書館は主張していかなければならない。紙とデジタルのそれぞれのメリットやデメリットを理解しながら、児童生徒の教育に携わっていくことが、これからの学校司書の専門性発揮の方向性であると考える。
私たちサポートデスクも、自分たちの学びを深め、今後も学校図書館と学校司書を支えていく。適切な研修や日常の柔軟な支援体制は、学校司書が区の直雇用であることが大きく貢献している。この点においても教育委員会の各課が連携して現体制を作ってきたことに感謝している。今回の受賞は私個人の力だけでは決してできなかったことであり、特に私を支えてくれた済美教育センター学校図書館サポートデスクの皆様に重ねて感謝します。
