慶應義塾大学中室研究室は宮城県・宮崎県・熊本市・長野県・三重県・島根県の公立高校8校の高校1年生637名を対象に、AI型教材「Qubena(キュビナ)」の活用による学力への効果を検証した。
■Qubenaを使用することで学力テストのスコアが向上
数学の授業内でCOMPASSのAIドリル「Qubena」を使用するクラス(9クラス、637名)と、使用しないクラス(10クラス、340名)にランダムにふりわけ、ICTとAIドリルの利用が学力向上に資するかどうかを検証。その結果、Qubena使用クラスの方が未使用クラスよりも、学力テストのスコアが 約4.5%高い結果となった。
■経済状況による学力格差を縮小
この効果は特に就学支援金受給世帯の生徒で大きく、Qubena使用クラスの方が18.5%も高い結果となった。この結果から、AIドリル「Qubena」の利用は保護者の経済状況による学力格差の縮小をもたらす可能性が示唆された。
■生徒の学習観も変化
また、「Qubena」の使用により生徒の学習観の変化も見られた。介入群の生徒は「良い学習環境に身を置くことで勉強が身につく」という「環境志向」が統計的に有意に上昇していることもわかった。
<実証概要>
参加県市:宮城県・宮崎県・熊本市・長野県・三重県・島根県
対象:上記県市の公立高校8校の高校1年生637名
実証期間:2020年12月~2021年2月
実施方法:授業においてQubenaを活用し、生徒一人ひとりに応じた個別最適な学習に取り組む。さらに、各学校の状況に応じて、家庭学習で活用するなどの工夫を講じることとし、柔軟に活用する
※対象教科は数学(主な単元:三角比、データの分析等)
※効果については、2020年12月と2021年2月に学力テストを実施し、Qubenaの使用クラスと未使用クラスの学力の伸びを測定する。あわせて質問紙調査を行い、生徒一人ひとりの学習観や、授業への苦手意識・理解度等の変化等を把握する
<慶應義塾大学総合政策学部 中室牧子教授 コメント>
AIドリルは生徒の習熟度に合わせた出題がなされ、教室で黙って教員の話を聞いている時間を減らします。たった3か月で学力向上の効果が見られたばかりか、教育格差が縮小する可能性が示されたことは、公教育におけるICT利用や優れた教育ソフトウェアを活用することの意義を示すエビデンスであると考えられます。