立命館大学歴史都市防災研究所とロフトワークは、オンライン教育プログラム開発ガイド「PATHWAYS」の全文を無償公開した。教育プログラムや研修プログラムを企画・運営する人に向けて、オンライン教育プログラムの提供に必要な知見を収集したガイドとなる。
■プログラム設計の道筋をまとめたガイド
本ガイドでは、オンラインでプログラムを行う際の基本的な考え方を出発点に、「動画制作」「プログラム設計」「コミュニケーションツール」「ファシリテーション技術」などのプログラム設計の道筋をまとめている。
■オンライン化が難しいフィールドワークやワークショップにも対応
座学プログラムに比べて、オンライン化が難しいとされるフィールドワークでの、現地を実際に訪れて対象を観察したり、インタビューしたりする手法や、グループディスカションや演習などワークショップにおける課題にも対応している。
■12人のエキスパートにインタビュー
「PATHWAYS」では、様々な分野の12人のエキスパートにインタビューを重ね、オンラインプログラムを行う際に起こる課題に対して、実践的な解決方法をまとめている。以下に一部の例を紹介する。
①すべてを「Zoom内」でやろうとしない。
「講義(座学)」は原則オンデマンド(録画映像+教材資料)での事前学習とし、Slackなどのテキストディスカッションを通じて先に議論・思考を深めた上で、Zoomでつなぐ時間は「アウトプットとフィードバック」の内容に特化すると、最も密度を高めることができる。(2章 基本設計:「同期」vs「非同期」)
②映像は「生配信」にこだわりすぎない。
難易度の高い生配信に比べてメリットの多い「収録」(事前録画)を積極的に活用する。撮影も高度な機材を無理に使わず、iPhoneとジンバル(手ブレを補正するスマートフォン用スタビライザー)を組み合わせれば、十分な没入感・特別感が得られる。(3章 動画コンテンツの制作方法)
③進行役と裏方は「2人体制」で
コミュニケーション力・ファシリテーション力のある「進行役」と、ITまわりに強く、柔軟にトラブルシューティングができる「裏方」。プログラム運営を安定させるにはスキルの異なる2名体制が推奨。また、少人数のグループワークを行う場合は、サブファシリテーターの立ち回りも重要なポイントになる。(5章 体制と規模)
※他にも、Slackなどのテキストチャットでのコミュニケーションを円滑にするための、細かなチャンネルの命名・運用指針についても現場の工夫を紹介している。
■「PATHWAYS」が生まれた背景
立命館大学歴史都市防災研究所は、文化遺産の防災をテーマとした『立命館大学ユネスコ・チェア「文化遺産と危機管理」国際研修』を2006年から実施。しかし、コロナ禍で2020年度のプログラムは中止となり、研修のオンライン化を模索するなか「フィールドワーク部分をどうやってオンライン化するか」は難しいテーマだった。ロフトワークは、プログラム運営チームからの委託を受け、リサーチを実施。様々な分野のエキスパートインタビューを行い、知見をリサーチレポートとしてまとめた。
■オンラインプログラムを企画・運営する人たちと共有
オンライン教育プログラム開発ガイド「PATHWAYS」は、立命館大学歴史都市防災研究所ユネスコ・チェア「文化遺産と危機管理」国際研修コーディネートチームからの委託により、ロフトワークが実施したリサーチ活動の「報告書」。今回のリサーチで得られた知見と示唆を、オンラインプログラムを企画・運営される人たちと共有することを意図して、ほぼ全体をクリエイティブ・コモンズ・ライセンスで公開する。