障害児の学習・生活支援を行う実践・生活を行う実践研究プロジェクト「魔法のプロジェクト2020~魔法のMedicine~」の成果をまとめたICT活用事例報告書が発行された。報告書は3月30日(火)から「魔法のプロジェクト」のWebで公開。障害児の学習・生活支援におけるICTの具体的な活用方法やその効果が紹介されている。
■ICTによって障害児の学習や生活を支援した成果を発行
東京大学先端科学技術センターとソフトバンクは、人型ロボット「Pepper」やタブレット、スマートスピーカーなど、ICTの活用によって障害児の学習や生活をどのように支援できるかについて「魔法のプロジェクト2020~魔法のMedicine~」の協力校が取り組んだ実践研究事例を発行した。
■新型コロナウイルス感染症の影響をICTで乗り越えた事例などを紹介
2020年度版の特徴は、新型コロナウイルス感染症の影響により学校での授業が実施できない期間に、教員らがICTの活用を含む様々な工夫により課題を乗り越えた実践例を収録。遠隔授業や動画の共有、宿題の工夫などICTの利活用を交えた新しい学び方が増えた。
■1人1台の端末整備により重要性が増す特別支援教育でのICT活用
また、GIGAスクール構想により、小中学校や特別支援学校には1人1台のタブレットの配備が進み、個に応じた学びが重視されており、特別支援教育でのICT活用の役割が、より重要性を増している。
<入手方法>
報告書は「魔法のプロジェクト」のWebからダウンロードできる。
<紹介事例>
報告書で紹介されている障害に合わせたICT活用事例の一部は、以下の通り。その他の事例や詳細については、Webからダウンロードできる。
休校中の家庭学習で学びを深める(島根県松江市立意東小学校)
休校中の家庭学習をきっかけとして、概念が分かっていても実感できていなかった物の長さや量を、実際に計測することで、例えば「洗濯物が乾く原理」などの学びを深めた。(テーマ:学習「自閉スペクトラム症」)
スケジュールや持ち物を管理して自立を目指す(広島市立広島みらい創生高等学校)
開始されたばかりの高校通級事例。スケジュールや持ち物の管理が苦手なことから自己肯定感が低下していた生徒が、スマートフォンやスマートウオッチを活用して自立的に管理できるようになった。課題の提出やスケジュール管理によって自己評価が向上し、目標の多くを達成できるようになった。(テーマ:生活・学習「不注意」)
遠隔授業と動画から学校生活を開始(大阪府立寝屋川支援学校)
小学部入学時が休校期間となり、大切な学校生活の開始が危ぶまれたが、オンラインで教員や学校の紹介を行い、登校再開時にはスムーズに学校生活が開始された。また、発話を持たなかった対象児童がシンボルコミュニケーションアプリを使いながら発話ができるようになった。(テーマ:生活「知的障がい」)
<「魔法のプロジェクト」とは>
特別支援学校や特別支援学級、通常学級に所属する児童生徒と教員などにICT機器を1年間無償で貸し出し、その実践事例を研究・公開することで、障害児の学習・生活支援を促進することを目的としている。2009年度から開始した「魔法のプロジェクト」では、延べ約700校が実践研究に協力。また、「魔法のプロジェクト2020~魔法のMedicine~」は、2020年2月に文部科学省の後援事業として承認された。
2021年度は過去11年のプロジェクトの成果を生かしながら、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う対応として、遠隔でのセミナーおよびスーパーバイザーによる指導・助言を強化していく。