文部科学省は、国公私立大学の大学図書館やPC・ネットワーク環境の現状を明らかにし、その改善・充実への基礎資料とするため「学術情報基盤実態調査」を実施。その2020年度の調査結果が取りまとめられた。その結果、9割の大学がクラウド化を実現していることが分かった。調査対象は国公私立大学の計801大学(国立86、公立94、私立621)で、インターネットを利用したオンライン調査システムで行われた。
<大学図書館編>
■紙媒体が減少し、電子媒体が増加する傾向に
2019年度の図書館資料費は 709 億円。前年度までの減少傾向から転じ、1億円増加している。うち紙媒体の資料に係る経費は256億円であり、前年度より17億円減少した。また、電子媒体の資料に係る経費は342億円であり、前年度より12億円増加した。
■教育研究成果をネットで公開する大学は約8割
オープンアクセスの観点から教育研究成果をインターネット上で無償公開する「機関リポジトリ」を持つ大学は、620大学(77.4%)となり、前年度より 17 大学増加している。
■9割の大学がアクティブ・ラーニングスペースを設置
アクティブ・ラーニング・スペースは557大学(69.5%)に設置されており、国立大学の 98.8%、公立大学の 50.0%、私立大学の 68.4%になる。アクティブ・ラーニング・スペースにおいて提供されている学習・研究サポートの内訳は、図書館利用・文献検索サポートが 41.9%を占め、以下、IT サポート、分野別学習相談と続く。
<PC及びネットワーク編>
■全大学が学内LANを有するが通信速度10Gbps以上は3分の1
学内ネットワーク(学内 LAN)を有する801大学のうち、通信速度10Gbps以上の回線を整備している大学は 272 大学(34.0%)となり、前年度より 18 大学増加した。また、対外接続を行っている 801大学のうち、通信速度10Gbps以上の回線を整備している大学は188大学(23.5%)となり、前年度より33大学増加した。
■私立大学の5分の1はセキュリティーポリシーが未策定
セキュリティーポリシー策定済みの大学は642大学(80.1%)となり、国立大学では全大学で策定されているが、公立大学では 5 大学(5.3%)、私立大学では 154 大学(24.8%)が未策定となっている。課題として「セキュリティに係る経費の確保」を挙げている大学は595 大学(74.3%)、「セキュリティ対策の充実」を挙げている大学は630大学(78.7%)となっている。
■95%の大学が情報リテラシー教育を実施
情報リテラシー教育を実施している大学は763大学(95.3%)。そのうち、全学生を対象に実施している大学において、「情報セキュリティ」を取り上げている大学は528大学(69.2%)、「倫理・マナー」を取り上げている大学は554 大学(72.6%)となっている。
■9割の大学がクラウド化を実現
情報システムをクラウド化している大学は732大学(91.4%)となり、前年度より25大学増加。クラウド化の効果として、612大学(83.6%)が「利便性・サービスの向上」を、596大学(81.4%)が「管理・運用等にかかるコストの軽減」を挙げている。一方、クラウドを運用していない 69 大学(8.6%)のうち、クラウド化していない理由として、39大学(56.5%)が「費用面に課題」、38大学(55.1%)が「セキュリティ面・信頼性に不安」を挙げている。