NPO法人judo3.0は「発達が気になる子が輝く柔道サミット」を2月21日(日)に開催。少年柔道クラブや福祉施設の柔道クラブで発達障害のある子供の指導に取り組む指導者16名が子供の成長について報告した。また、総勢51名の柔道指導者らがこれからの柔道教育について話し合った。
■発達障害がある子供に運動を提供するために
発達障害がある子供やグレーゾーンと言われる子供は運動を必要としているが、十分な運動ができていないのが現状。本サミットは、地域、福祉、学校、医療などの領域で、発達障害にある子供などの柔道指導に取り組む有志が集結した。
■研究・福祉・医療の現場から報告
第1部では「研究・福祉・医療からみた発達障害と柔道」をテーマに3名の指導者が登壇。島根県立大学の西村健一氏准教授は、指導者は柔道を通じて子供たちの不器用さを改善できることや、子供に分かりやすい指示を出す工夫の重要性などを報告。社会福祉法人わらしべ会の辻和也氏は障害がある子供や大人の運動支援の意義などを報告。西川病院の作業療法士である河野茂照氏は、精神疾患のある患者へのソーシャルスキルトレーニング(SST)として柔道の取り組みを解説し、柔道にはメンタルを支える力があることなどを報告した。
■柔道クラブでの事例を報告
第2部では「いま少年柔道クラブの現場で何が起きているか?」をテーマに、4名の少年柔道クラブの指導者が登壇。クラブの指導者全員が研修を受けて指導法を改善したところ、子供が集中して練習するようになった事例や、子供に寄り添って話を聞いたりしたところ、よく泣いていた子供が泣かなくなった事例などが報告された。
■柔道教育を放課後デイサービスに活用
第3部では「“柔道療育“というフロンティア–放課後等デイサービスを運営して–」というテーマで、放課後等デイサービスで発達障害やグレーゾーンの子供に柔道を活用した療育を提供する3人の指導者が登壇。柔道を始めた子供たちが衝動的な行動が減ったり、コミュニケーション能力が向上した事例などが語られた。
■学校現場の柔道指導について報告
第4部では「学校における発達障害と柔道」をテーマに、小学校、中学校における柔道指導について2人の指導者が登壇。長崎県の中学校柔道部外部指導員で諫早クラブ代表の向井淳也氏は、不登校の生徒が柔道をすることで学校に行くことができるようになったケースを報告。島根県の小学校教員でユニバーサル柔道アカデミー島根で指導する飯塚守氏は、発達障害やグレーゾーンの小学生が運動する機会が少ない現状などにふれ、子供たちが柔道できる環境作りの重要性などを報告した。
■柔道クラブで新しい形を模索
第5部では「柔道クラブの新しいカタチを模索して」というテーマにて、3名の指導者が登壇。文武一道塾 咲柔館の綾川浩史氏は、日本で数少ない専業での柔道指導を始めた経緯を説明し、子供が柔道着を来て「柔道家に変身する」という楽しさを見出したりしながら成長していることなどを報告した。
■海外での事例を報告
第6部では「世界と連携する」をテーマに、スロベニアでインクルーシブな柔道に取り組んでいるViktorija P. Oblak氏が登壇。柔道の発祥地である日本からインクルーシブな柔道が発信されることの重要性について触れ、世界の指導者と連携していく必要性などを報告した。
■共感できる仲間がいることが力となる
サミットでは各報告のたびに参加者と話し合いの場が設けられた。「多くの先生方と交流することができ、共感できる仲間達がいることが大きな力となった」「柔道の可能性が広がった」「このような取り組みが広がって柔道が習いやすい競技になってほしい」などの感想があがった。