「#せかい部×SDGs探究」は全国171名の高校生レポーターがSDGsについて学んだことを発表する。1月24日(日)に行われた「#せかい部×SDGs探究成果報告イベント with kemio」では、その中から選ばれた5名のベストレポーターがクリエイターのKemioさんに伝える形で報告。ベストレポーターの他にも、高校生を中心に全国から約300名がオンラインで参加した。
■170名の高校生レポーターがSDGsについて学びを発信
文部科学省の留学促進キャンペーン「トビタテ!留学JAPAN」は、社会課題についてグローバルな視点から学びたい高校生のために「#せかい部×SDGs探究」をスタートさせた。全国の高校生から約400名の応募があり、45都道府県から約170名のレポーターを選抜。レポーターは2020年10月から11月にかけて、SDGsに関連する5つのテーマについて28のプログラムを学び、レポートを発信した。
■5人のベストレポーターが学びの成果を報告
その中から特に優れたレポート活動をしたベストレポーター5名を選出。1月24日に行われたオンライン成果報告イベントでは、#せかい部運営部長の今田恭太さん(静岡理工科大学 星稜高等学校・3年)の司会のもと、クリエイターでトビタテの公式サポーターも務めるkeimoさんや参加者に伝える形で、学びの成果が報告された。
<ベストレポーター① 貧困をなくそう>
川西満葉さん 福山暁の星女子中学・高等学校5年/広島県
日本の子供の7人に1人が貧困問題を抱えている。この数字はOECDに加盟している36か国中23位、1人親世帯だとワースト2位の34位となる。貧困は働いていないことが原因と考える人も多いが、貧困は個人ではなく社会に責任がある。
現在、内閣府は「子供の未来応援国民運動」を進めている。これは子供を社会全体で応援する機運を高め、子供の貧困対策が国を挙げて推進されるようにするための官公民の連携・協働プロジェクト。そうした国の取組だけでなく、選択肢を増やすことが大事だとする。のどが乾いたら寄附型自動販売機で買う、本やCDを売る時は飢饉に寄付されるところに売るなど、普段の生活に選択肢を増やすことが貧困をなくすことにつながる。
今回のプロジェクトで古本基金のことを知った川西さんは、学校で回収活動を行った結果、121冊の本が集まり、3907円を寄付することができた。この発表を聞いて1人でも多くの人が貧困について理解を深め、選択肢を増やす生活を始めてくれたらうれしいと語る。
<ベストレポーター② ジェンダー平等の実現>
森本陽介さん 京都府立山城高等学校2年/京都府
森本さんは主にインスタグラムを使ってジェンダー平等について発信し、インスタグラムが持つ「写真で伝える」という動向形式に着目し、一目で引き付ける写真に重点をおき、投稿やストーリーを作成した。
ジェンダー平等について学ぶ中で3つの課題に着目。1つ目は「男女間の賃金格差」で女性は結婚・出産をきっかけに仕事をやめるという固定概念が企業に残っている。2つ目は「女性の政治参加」でナビゲーターの野田聖子議員から地方議員にこそ女性が必要と教わった。3つ目は「同性婚ができない」ことで、そのあり方について今後考えていく必要があると感じた。
もっとも伝えたいジェンダー平等の実現は「人間として自分らしく生きることができる社会の実現」。「男」「女」「LGBTQ」に関わりなく、自分らしく多様性に富んだ社会にしたいとする。自分たちがジェンダー平等の実現に向けてできることは、現状を知り、考え、発信することとし、ジェンダー教育を推進できる教育を実現していきたいとする。
<ベストレポーター③ 持続可能なまちづくり>
松岡明希さん 福岡県立嘉穂高等学校1年/福岡県
#せかい部×SDGs探究の「住み続けられるまちづくりを」の講義で、(一社)ロハス・ビジネス・アライアンスの大和田順子氏から「おおさき生きものクラブ」の話を聞き、農家でない家の子供たちに農業を教える取組があると知った。近年、農村から都市部への人口流出が続いているが、地域愛が生まれる地域教育をすることで、地域に興味を持ってもらえると考えた。
また、野田聖子衆議院議員からは、地域愛とは地元のことについて誇りを持って語ることと聞いた。海外に行ったときに必要なのは語学力ではなく、自分の国や地域について知っていること。そこで、嘉穂高等学校の生徒や#せかい部 ×SDGs探究部のメンバーに「自分たちの地域の良いところ」をアンケートで聞いた。その結果、地域教育は主に小学校の時に受けていることが分かった。一方、地域教育を受けたことがないと答えた人の多くが「地域の良いところが思いつかなかった」と答えている。
小学校では自分の地域について浅く広く知ることが大事なので、まちたんけんや地域の改善したいところの提案、周辺地域とのディベートなどの教育プランが考えられる。また、高等学校では活動範囲を大幅に広げ、さまざまな考えを得ることのできる地域教育が最適だとする。
<ベストレポーター④ 気候変動に対策を>
吉野夏乃葉さん 大阪市立水都国際高等学校1年/大阪府
日本のエネルギー自給率はたったの9.6%。これは主要国35か国の中では、34位でワースト2となる。そうした中、ミドリムシを使ってさまざまなものを生み出しているユーグレナに話を聞いた。ミドリムシは植物と動物の両方の特性を持った夢の微生物とされるが、バイオ燃料の原料としても期待されている。カーボンニュートラルは「排出される二酸化炭素の量」と「吸収される二酸化炭素の量」が同じになること。ミドリムシを使ったバイオ燃料による発電はカーボンニュートラルにつながるとして注目をあびている。
地球温暖化で極地の氷がとけて海面が上がると言われるが、国立極地研究所の講義では、海氷がけとけた時のペンギンの行動が説明された。海氷が無くなるとペンギンの行動範囲が急激に広がるという驚きの結果が知らされた。
ワシントン大学の太田義孝氏の講義ではクリティカル・シンキングが大切と教わった。クリティカル・シンキングとは自分の意見をしっかりと持ちながら、多様な立場から客観視すること。自分の意見をしっかりと持ち、自分の意見を多様な角度から見ることで間違いにも気づくことができる。気候変動について学んで思ったことは、気候変動は他のSDGsの問題とも深く関係していることを実感した。
<ベストレポーター⑤ 生物多様性を守ろう>
中山公太郎さん 芝高等学校1年/東京都
絶滅していく生物の数を見てみると、1975年までは絶滅する生物は1年に1種類以下だったのが、以降急激に死滅する生物の数は上昇し、1975年から2000年の間に4万種もの生物が死滅している。近代化により生活は豊かになったが、その陰で多くの生物が死滅した。
アオウミガメの産卵場所である浜辺はゴミが増え、海には多くのビニール袋が浮かぶ。浜辺の近くに家や道路ができ、その光で赤ちゃんガメが海の方向を見失い死に至る。また、海洋プラスチックを誤飲するケースもある。アオウミガメを守るため、浜辺の保全を心掛け、買い物袋を持参してプラスチックゴミを減らすことが大切。
道端に咲くカントウタンポポは日本の固有種だが、よく目にするタンポポはセイヨウタンポポという外来種。1人が持ち込んだ外来種が日本の固有種に与える影響は思ったよりも深刻な問題。固有種を守るために外来種の持ち込みを禁止しなければいけない。
美しい里山の風景を守るには、人口の流出を抑え、持続的なまち・むらづくりで農林業を守ることが大事。47都道府県の素敵な旅に出て、自然や文化に親しんで好きになれば、その思いが環境意識を変えることにつながる。近代化と自然保護、生物多様性は、すぐにでも、誰にでもできることだとする。
<kemioさん コメント>
みなさんの発表はとても分かりやすかった。自分が学生だった頃は、今回のような問題には気づくことも無ければ、勉強したこともなかった。みなさんが、これから社会に出て活躍することになるが、そうすれば世の中も良い方向に変わっていくのではないか。
自分はアメリカへの留学を経験して大きく変わったが、語学以上に1人でいろんなことを乗り越えることができるようになったのが大きいと思う。日本で平和に暮らしている時には感じなかったが、アメリカ留学を通じて自分の身を守ることの大切さを学んだ。また、日本では政治や社会問題を友達と話すことは無かったが、アメリカでは食事の最中に普通に政治の話をすることに驚いた。
アメリカでは個性を強く出して自分中心で考えるが、日本は周りの人に与える影響を第一に考える。でも、アメリカは他人のことを気にしないかわりに、他人がすることを否定せずに、思った通りにやらせてくれたから、今の自分がある。