日本の双六文化は独特だ。その中で「教育双六」と呼ばれるジャンルがある。国立教育政策研究所教育図書館「貴重資料デジタルコレクション」では、これら教育双六を一覧でき、ダウンロードもできる。次の画像は「教育双六」のトップページだ。
「男子教育出世双六」の「上がり」は「国会議事堂」である。その前の札は「学校入門」「大運動会」「馬術」「狩り」「卒業」「画学」「壮士運動」「学論」「演説」「酒宴」。この時代には「勉強」という言葉はないようだ。
「男子学校教育寿語録」というものもある。「教師」「珠算」「修身」「洋算」「読本」「試験免許状」「運動会」「運動」「習字」「体操」「歌唱」「けまり」「画学」「無学」と、こちらはかなりわかりやすく読みやすい。時代が近いためだ。
では女子教育はどうか。
「新版女教訓出世雙六」の「上がり」はなんと「万福らくいん居」である。
その前のコマは「子守り」「花嫁」「かみさま(おかみさんの意)」「おてんば娘」「てならい」「三味線」「花よめ」「やりて」「おさんどん」「おはり」「花売り」「やとい」と、何がどう出世や教訓につながるのか今の感覚からすると大いに不満が残る。。。。
さらに時代をさかのぼる「女子教育お稽古雙六」では「御歌会」が上がり。縫い鍼、囲碁、三曲、歌よみ、さし花などの文字が読める。
「女子学校勉励寿語録」はこれに比べると理解しやすい。「上がり」は素敵な装いをしているご婦人と子供の絵で文言なし、と謎だが、「裁縫」「試験免許状」「級第」「一年生」「作文」「洋算」「運動」「小学読本」「運動」「落第」「算術」「無学」等々、前述の「男子学校教育寿語録」に近い。
上がりは「万福らくいん居」(国立教育政策研究所教育図書館より)
■今の学校に近い「少年少女小学教科雙六」
明治40年とある「少年少女小学教科雙六」になると、かなり今の学校に近くなる。
「上がり」は「退場」(卒業の意味)。
それ以外のマスは、「休み時間「地理」「読み方」「料理」「書き方」「綴り方」「遠足」「英語」「とうばん」「手工」「談話会」「歌唱」「遊戯」「級長」「精勤」「たいそう」等々と、理解しやすい文言が並ぶ。
明治40年の学校体制の多くが今も引き継がれているということだろう。
わかりやすい反面、これまでの双六と比べてつまらない印象だ。
雙六という遊びを通して学びや人生のイメージを持ってもらおう、という教材としての意図もあったのだろう。絵+文字の文化は、日本の漫画文化、アニメ文化にもつながっているように思える。
美しい図版は見るだけでも興味深いが、世相を反映した雙六をきっかけに学びを広げることができそうだ。
今回は教育双六を取り上げたが「掛図」や「教育用絵画」もかなり興味深い。このような貴重な資料をデジタル化し、まとめられていることに感謝したい。
■文科省「情報ひろば」で9月1日から展示
9月1日から30日までの平日、文部科学省情報ひろば(東京都千代田区霞が関3-2-2)で「教科書の150年」をテーマに明治初期から現代にいたる教科書やその背景となるカリキュラム関係の資料を展示しておりこちらも興味深い。入場無料。