文部科学省は7月4日、「初等中等教育段階における生成AI利用 暫定的なガイドライン」及び通知を文科省Webに公表した。一律禁止ではなく、活用アイデアやその際の留意点、活用する能力の有無による取り扱いの違い、教員研修や校務での適切な活⽤の推進についても言及している。
「通知」には「対話型生成AIについて、学校関係者が現時点での活用の適否を判断する際の参考資料となるもの」「長期休業中の課題等についての考え方」を「暫定的なガイドライン」でまとめたとしている。
本ガイドラインには)各学校で⽣成AIを利⽤する際のチェックリスト、主な対話型⽣成AIの概要、今後の国の取組の⽅向性も資料として示した。
目次は次。
1.本ガイドラインの位置づけ
2.⽣成AIの概要
3.⽣成AIの教育利⽤の⽅向性
(1)基本的な考え⽅
(2)⽣成AI活⽤の適否に関する暫定的な考え⽅
(3)「情報活⽤能⼒」の育成強化
(4)パイロット的な取組
(5)⽣成AIの校務での活⽤
4.その他の重要な留意点
(1)個⼈情報やプライバシーに関する情報の保護の観点
(2)教育情報セキュリティの観点
(3)著作権保護の観点
学校関係者が現時点で⽣成AIの活⽤の適否を判断する際の
参考資料として、令和5年6⽉末⽇時点の知⾒をもとに暫定的に取りまとめたもの。⼀律に禁⽌や義務づけを⾏う性質のものではなく、今後、機動的に改訂を行うとしている。
・対話型⽣成AIを使いこなすには、指⽰⽂(プロンプト)への習熟が必要となるほか、回答は誤りを含むことがあり、あくまでも「参考の⼀つに過ぎない」ことを⼗分に認識し、最後は⾃分で判断するという基本姿勢が必要。AIに⾃我や⼈格はなく、あくまでも⼈間が発明した道具であることを⼗分に認識する必要がある。
・AIがどのようなデータを学習しているのか、学習データをどのように作成しているのか、どのようなアルゴリズムに基づき回答しているかが不明である等の「透明性に関する懸念」、機密情報が漏洩しないか、個⼈情報の不適正な利⽤を⾏っていないか、回答の内容にバイアスがかかっていないか等の「信頼性に関する懸念」が指摘されている。
・現時点では活⽤が有効な場⾯を検証しつつ、限定的な利⽤から始めることが適切。⽣成AIを取り巻く懸念やリスクに⼗分な対策を講じることができる⼀部の学校において、個⼈情報保護やセキュリティ、著作権等に⼗分に留意しつつ、パイロット的な取組を進め、成果・課題を⼗分に検証し、今後の更なる議論に資することが必要。
・全ての学校で、情報の真偽を確かめること(いわゆるファクトチェック)の習慣付けも含め、情報活⽤能⼒を育む教育活動を⼀層充実させ、AI時代に必要な資質・能⼒の向上を図る必要がある。
・教員研修や校務での適切な活⽤に向けた取組を推進し、教師のAIリテラシー向上や働き⽅改⾰に繋げる必要がある。
①情報モラル教育の⼀環として、教師が⽣成AIが⽣成する誤りを含む回答を教材として使⽤し、その性質や限界等を⽣徒に気付かせること。
②⽣成AIをめぐる社会的論議について⽣徒⾃⾝が主体的に考え、議論する過程で、その素材として活⽤させること
③グループの考えをまとめたり、アイデアを出す活動の途中段階で、⽣徒同⼠で⼀定の議論やまとめをした上で、⾜りない視点を⾒つけ議論を深める⽬的で活⽤させること
④英会話の相⼿として活⽤したり、より⾃然な英語表現への改善や⼀⼈⼀⼈の興味関⼼に応じた単語リストや例⽂リストの作成に活⽤させること、外国⼈児童⽣徒等の⽇本語学習のために活⽤させること
⑤⽣成AIの活⽤⽅法を学ぶ⽬的で、⾃ら作った⽂章を⽣成AIに修正させたものを「たたき台」として、⾃分なりに何度も推敲して、より良い⽂章として修正した過程・結果をワープロソフトの校閲機能を使って提出させること
⑥発展的な学習として、⽣成AIを⽤いた⾼度なプログラミングを⾏わせること
⑦⽣成AIを活⽤した問題発⾒・課題解決能⼒を積極的に評価する観点からパフォーマンステストを⾏うこと
利用規約:ChatGPT…13歳以上、18歳未満は保護者同意
Bing Chat…成年、未成年は保護者同意Bard
①AIの利⽤を想定していないコンクールの作品やレポートなどについて、⽣成AIによる⽣成物をそのまま⾃⼰の成果物として応募・提出することは評価基準や応募規約によっては不適切⼜は不正な⾏為に当たること、活動を通じた学びが得られず、⾃分のためにならないこと等について⼗分に指導する
②その上で、単にレポートなどの課題を出すのではなく、例えば、⾃分⾃⾝の経験を踏まえた記述になっているか、レポートの前提となる学習活動を踏まえた記述となっているか、事実関係に誤りがないか等、レポートなどを評価する際の視点を予め設定することも考えられる。
※AIを用いた際には、生成AIツールの名称、入力した指示文(プロンプト)や応答、日付などを明記させることが考えられる。
①課題研究等の過程で、⾃らが作成したレポートの素案に⾜りない観点などを補充するために⽣成AIを活⽤させることも考
えられる。その際、情報の真偽を確かめること(いわゆるファクトチェック)を求めるとともに、最終的な成果物については、AIとのやりとりの過程を参考資料として添付させることや、引⽤・参考⽂献などを明⽰させることも⼀案である。
②⾃らの作った⽂章を基に⽣成AIに修正させたものを「たたき台」として、何度も⾃分で推敲し、より良い⾃分らしい⽂章とし
て整えた過程・結果をワープロソフトの校閲機能を使って提出させることも考えられる
児童⽣徒の指導にかかわる業務の⽀援として次のことが考えられる
教材のたたき台
練習問題やテスト問題のたたき台
⽣成AIを模擬授業相⼿とした授業準備
校務での活⽤例・学校⾏事・部活動への⽀援
校外学習等の⾏程作成のたたき台
運動会の競技種⽬案のたたき台
部活動等の⼤会・遠征にかかる経費の概算
定型的な⽂書のたたき台
⽣成AIはあくまで「たたき台」としての利⽤であり、最後は教職員⾃らがチェックし、推敲・完成させることが必要である