高知県教育委員会が学習eポータルの開発に着手している。本ポータルを通して文部科学省が開発しているCBTシステム「MEXCBT(メクビット)」や様々なデジタル教材にシングルサインオンでログインできるようにするとともにスタディログを蓄積・分析してダッシュボード機能を通じて児童生徒や教員にフィードバックできるようにする。将来的には校務系データの一部や学習者用デジタル教科書との連動も検討していく考えだ。ビッグデータとして教育政策にも活用する。
2021年4月より教員向け教材バンクとして運用を開始している学習支援プラットフォーム「高知家まなびばこ」に搭載する機能として学習eポータルの開発を進めている。
9月頃を目途に一部の学校で、学習eポータル機能の実証を開始する。当初はMEXCBTやデジタルドリル活用、県作成の単元テストを整備。児童生徒用ダッシュボードや学級・学年・学校用ダッシュボードを搭載する。
高知県教育委員会が主体となり、委託先と共に開発。県内市町村教育委員会の参加も予定している。
教育政策課チーフ 情報政策担当
武市正人氏
GIGAスクール環境で個別最適な学びを実現するためにはもうひと手間必要であると考えていた。民間企業の学習アプリ等の導入により意欲向上効果も見られたが個人・学級単位の導入で様々な教材ごとに分析する仕組みでは、教科連携や組織としての分析が難しい。
MEXCBTを活用するためにも学習eポータルは必須である。
そこで第一段階として「高知家まなびばこ」によりデジタル教材・ドリル等をすべてクラウド上で活用できるようにし、自ら学べるように学年別教科別に収録。大阪市の取組を参考に、毎日の気持ちを入力できる仕組み「きもちメーター」も装備した。既にIDは配付済で活用が始まっている。
この「高知家まなびばこ」に学習eポータル機能を搭載し、教育データ利活用を実現する。
児童生徒の学びの様子を可視化して学習履歴を閲覧したり子供の気持ちを確認したりすることを通じて、授業・指導改善につなげる。
児童生徒がデジタル教材に取り組むたびにデータが更新され、指導内容が定着しているか否かがすぐにわかるようになる。また、「どこでつまずいたのか」を、過去データを遡って明らかにできるようにして有効な手立てを考えることができるようにする。
本人の利益になるようなデータ提供であること、学級単位でも個人単位でも行動の変容につなげられるものとすることが重要と考えて開発している。
ダッシュボードは学習指導要領をベースに作成し、全市町村で共有して教育政策に活かす。
■Googleのデータクラウドを活用
高知県では教育基盤としてGoogle Workspace for Education Plusを導入している。本エディションでは一般的な機能に加えて無制限のレポート機能、高度なセキュリティ機能、Google Meetの参加者500人、ライブストリーミング10万人、録画のドライブ保存、共有ストレージ100TB(+ライセンスあたり20GB)、類似性照合機能による盗用の検出機能、迅速なサポート(購入ライセンス数200以上)等が提供される。
グーグル・クラウド・ジャパン合同会社 技術部長(アナリティクス / 機械学習、データベース)の寳野雄太氏は「Googleのデータクラウドは学習状況の把握や統計データの分析、AIによるガイド機能を搭載しており、どんなアクションによりどう変化したのかを一体的に振り返ることができる。
人間関係の構築がタスクパフォーマンスにどう最適化できるのかを提案している」と話した。
■MEXCBTとは
児童生徒が学習端末を用いてオンラインで問題演習等ができるCBTシステム。文部科学省が提供・開発。データの蓄積により過去の集団との学力比較が可能になり制度の高い測定が可能になる。また、個人の能力の詳細な伸びも推論できる。
MEXCBTの学習eポータル標準規格に準拠した学習eポータルでMEXCBTを活用できる。
現在MEXCBTに搭載されている問題は全国学力・学習状況調査や高等学校卒業程度認定試験、地方自治体等の学力調査等(岩手県、山口県、千葉県、さいたま市、幸手市)、PISA(国際学力調査)の公開問題、実用英語技能検定、実用数学技法検定ほか。今後、情報モラル教育推進コンテンツも拡充予定。オリジナルのCBT問題も作成・公開できる。現在、約6900校、約250万人の児童生徒が登録。
▼NII教育機関DXシンポアーカイブ&資料「高知県学習支援プラットフォーム「高知家まなびばこ」で実現する教育データ利活用」