国立教育政策研究所は「OECDグローバル・ティーチング・インサイト:授業ビデオ研究」報告書のポイントを11月16日に公表した。報告書によると、日本では教室でICT活用が少なく、他国ではコミュニケーションでICTを活用する割合が高かった。
■実際の授業をビデオ撮影して分析
グローバル・ティーチング・インサイト(GTI)は、OECDが進めている国際調査の新しい試み。日本を含む8か国・地域で授業をビデオ撮影して分析することにより、学習状況や教員の指導実践についてのエビデンスを得る試みだ。参加国では数学(二次方程式)を調査対象単元として設定して授業分析、質問紙調査、テスト等を行った。
■日本は静岡市、熊谷市、戸田市の教員が参加
日本では静岡市、熊谷市、戸田市の全公立中学校と関東地域及び静岡県の国立大学附属中学校3年生、73校89教員が参加。このほか参加したのは、チリ(ビオビオ・首都州・バルパライソ)、コロンビア、イギリス (イングランド)、ドイツ、スペイン(マドリード)、メキシコ、中国(上海)。対象単元の授業を2回撮影して学習前と学習後に、教員質問紙、生徒質問紙、数学の テストを配付し、回答を得た。調査時期は2018年6月初旬~11月初旬(日本)。
■日本は教室におけるテクノロジーの利用が少ない
報告によると日本の78.7%の授業ではテクノロジーが利用されていなかった。概念的理解を目的とした活用は12.4%、コミュニケーションは5.6%が活用。他国ではコミュニケーションでICTを活用している場合が多く、中国70.6%、イギリス55.3%、ドイツ48%であった。
■他国の授業は反復練習の機会が多い
他国では反復練習の時間が多く、日本では少なかった。テクノロジーをコミュニケーションで多く活用していることから、授業時間にテクノロジーを使った反復練習はあまり行われていないようだ。二次方程式の単元の授業時間数にも違いが見られた。日本はおよそ10時間~14時間であったが、コロンビア、イギリス、メキシコ、中国ではおよそ6~7.5時間であった。
■「授業運営」「社会的・情緒的支援」「教科指導」のいずれも日本は高く
「授業運営」、「社会的・情緒的支援」と、残りの4つの領域を統合して作成した「教科指導」の計3つの領域で分析。「授業運営」(ルーティーン、モニタリング、中断や混乱への対応)、「社会的・情緒的支援」(敬意、励ましと温かさ、粘り強さ)、「教科指導」(対話、教科内容の質、生徒の認知的取り組み、生徒の理解に 対する評価と対応)について、いずれも平均スコアは日本が首位であった。
■日本の生徒は数学の内容をよく考えている
日本の53%の授業では、生徒が認知的に深く考えることを求められるような、分析的あるいは創造的な活動に取り組む様子が、「頻繁に」または「時々」観察された。また、日本の授業では、81%の生徒が授業中に数学の内容について集中して考えたと回答。日本の授業では、53%の生徒が授業中に自分の考えを発展させることができた。
■深いタイプの問いに力が置かれる傾向に
日本の64%の授業では、比較的深いタイプの問いである、まとめること、規則性・手順・公式の適用を求める問いや、分析の問いに力点が置かれる傾向があった。また、日本の71%の授業では、問題を解くために必要な答え、手続き、段階(ステップ)に関する生徒から詳細な応答があり、生徒の考えが多く引き出されていた。