小中一貫教育を進めるに当たっては、運営面のみならず、施設的な配慮も重要となります。文部科学省においては、平成27年7月に、小中一貫教育に適した学校施設の基本的考え方や計画・設計における留意事項を、施設一体型・施設隣接型・施設分離型といった施設形態ごとに示した「小中一貫教育に適した学校施設の在り方について」を取りまとめました。
今回国立教育政策研究所によって行われた調査研究では、計画・設計の留意事項が、全国の小中一貫教育校の整備において、「実際にどの程度採り入れられているか」「実施された整備が学校現場においてどのように評価されているか」「実際にどの程度の費用がかかっているか」これらについて調査したものです。これにより、各学校設置者が小中一貫教育校の施設を計画・設計する際の具体的な検討に資することを目的としています。
この調査の結果、全体を通して明らかになったのは、施設一体型の有効性でした。義務教育学校への以降、小中一貫教育校の設置などに合わせて新築の一体型施設を設置した学校では、面積的な余裕もあり、ランチルームやオープンスペース、教員やPTAが使用できる会議スペースなどの施設を備えています。これらの学校では満足度が高い一方、整備費用はその他の学校の約2倍の整備費用を要していました。
隣接型・分離型の学校は既存校舎を活用して整備された学校が多く、施設整備費用は抑えられています。またこうした学校でも、分離校舎間における交流授業などを行うことができるネットワーク環境を備えている、PTAなどの活動拠点となる施設等がある、といった工夫がされている学校では、施設面の総合的な満足度は高い傾向にありました。
全体的には一体型施設の満足度が高い、という結果が得られましたが、形態が物理的に不利な条件であっても、運営面での取り組みがそれをカバーしている例も少なからず見られます。小中一貫教育を実施して行くには、継続的な運営面の改善を図ることが重要であると言えそうです。